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2025年の日本市場戦略、日本語精度の高いオープンAIモデルを軸にパートナーシップも推進

アリババクラウド、日本の拡大戦略でLLM「Qwen2.5」や画像生成AI「Wan2.1」投入

2025年03月07日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

 アリババクラウド・ジャパンサービスは、2025年3月5日、2025年の日本市場における事業戦略を説明した。アリババ独自のLLM(大規模言語モデル)である「Qwen(通義千問)」、動画生成モデル「Wan(通義万相)」の各最新版を日本市場に投入することを発表している。

 2024年10月からカントリーマネージャーを務める与謝野正宇氏は、「日本企業のビジネスニーズに応じたQwenモデルの導入、AI開発ツールの提供、日本のパートナーとの連携によるローカライズAIソリューションの提供を進める」と述べ、高い日本語性能を持つオープンAIモデルを前面に打ち出して国内ビジネスを拡大していく方針を示した。

アリババが開発するLLM「Qwen2.5」の概要。幅広いモデルサイズ、モデルタイプをラインアップする

アリババクラウド・ジャパンサービス カントリーマネージャーの与謝野正宇(まさひろ)氏、同社 AI/Big Data ソリューションアーキテクトの藤川裕一氏

日本語性能の高いLLM、動画生成モデルを日本市場に投入

 今回、日本市場への投入が発表されたのは、LLM(大規模言語モデル)の最新版「Qwen2.5シリーズ」と、動画生成モデルの最新版「Wan2.1シリーズ」だ。

 Qwen2.5シリーズのオープンソース版は、5億パラメータから720億パラメータまで7種類のモデルサイズをラインアップし、デバイスからオンプレミス、クラウドまで、利用環境に応じて選択できる。オープンソース版とクローズドモデル版(MoEアーキテクチャ)を用意していることも特徴だ。日本語を含む29以上の言語に対応し、最大100万トークンの入力をサポートする。

 さらに、機能特化型モデルやマルチモーダルモデルもラインアップしている。具体的には、プログラムコードの理解や生成に特化した「Qwen-Coder」、数学問題の解決に特化した「Qwen-Math」、テキストと画像を認識する「Qwen-VL」、音声認識を強化した「Qwen-Audio」だ。

 アリババクラウド・ジャパンサービス AI/Big Data ソリューションアーキテクトの藤川裕一氏は、「Qwen2.5は、8000トークン以上の長いテキスト生成が可能で、構造化データも理解できる。他の著名なオープンソースモデルと比較しても、競争力のある精度を実現している」と述べる。特に日本語性能(総合的な精度)は、オープンソースLLMの中でも「非常に高い」という。

Qwen2.5の日本語性能の高さをアピールした

 一方、商用版のクローズドモデル(MoE版)では、最上位のQwen-Maxのほか、Qwen-Plus、Qwen-Turboの3種類を用意している。Qwen2.5-Maxは、ベンチマーク比較でDeepSeek-V3、GPT-4o、Claude-3.5-Sonnetなどを上回る精度を達成しており、日本語については「特に論理的な回答に優れる特徴がある」という。

クローズドモデル(商用版)Qwenの概要

 テキストや静止画像から動画を生成するWan2.1シリーズでは、140億パラメータと13億パラメータで合計4つのモデルをオープンソース化している。複雑な動きの正確な処理が可能であり、物理法則も順守したリアルな映像生成に優れていると説明した。

動画生成モデル「Wan2.1」の概要

国内でも採用事例、パートナーシップの拡大に努める

 Qwenの活用事例のひとつとして紹介されたのが資生堂だ。同社は中国市場において、Qwenを活用したRAGベースのAIを用いて「AIスキンケアアシスタント」を構築した。スキンケア知識とブランド情報を統合し、カスタマイズされた対話体験を実現しているという。

資生堂のQwen採用事例

 与謝野氏は、日系企業が中国市場への参入にアリババクラウドやQwenを活用し、その成功を“逆輸入”する形で日本向けサービスを展開するケースも想定していると語る。その際、大規模AIモデルを数クリックでデプロイできる「PAI-EAS(Platform for AI-Elastic Algorithm Service)」サービスを用いて、東京リージョンを指定してデプロイすることが可能だ。

 また、東京大学発のAIスタートアップLightblueや、札幌のAIスタートアップであるAxcxeptでは、公開モデルの中で高い日本語性能を持つQwenに着目し、ファインチューニングでさらに精度を向上させた日本語LLMを構築して、サービスなどに活用しているという。

 与謝野氏は、Qwen2.5シリーズについて、今後3年で国内1000社での利用を目指すという目標を示した。

 なお、日本における新たなパートナーシッププログラムも発表した。AI検索エンジン「Felo」を開発するAIスタートアップのSparticleとの提携も明らかにしている。

 与謝野氏は、国内のパートナーシップについて、コンサルティング会社、ソフトウェア開発会社、システムインテグレーターとの連携を図っていく方針を説明した。

 「アリババクラウドは技術の会社だが、それだけではビジネスは拡大しない。日本市場において、顧客との間を埋めてもらうための役割を果たすのがパートナーだ。パートナーとの連携が重要な鍵になると考えており、日本の大手コンサルティング企業とパートナーシップに関する話し合いを進めている」(与謝野氏)

アリババクラウドの日本市場戦略

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