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日本の不眠症解消へコラボ、オンライン診療が潜在的な睡眠負債を解決する

エーザイ株式会社 統合戦略本部 大桃和人氏×株式会社MICIN 草間亮一氏

連載
JOIC オープンイノベーション名鑑

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 この記事は、民間事業者の「オープンイノベーション」の取り組みを推進する、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)との連動企画です。

 コロナ禍で、仕事や買い物、飲食などさまざまな生活を行う場所が自宅へと移っていった。いまやオンラインでの在宅ワークは一般的なものになった。しかしながら、医療サービスにおいては、遠隔地からオンラインでつないで従来同様のサービスを提供する仕組みがなかなか根付いていない。今回の新型コロナの感染拡大を受けて、オンライン発熱外来の設置や、初診からでもオンライン診療を認めるといった規則の改正など国も動き出してはいるものの、多くの診療領域でまだまだハードルが高いのが現実と言えるだろう。そうしたなか、特に不眠症の分野にフォーカスして、オンライン診療の普及を進めているのが、エーザイとMICINである。その目的と具体的なアプローチについて両社に話を聞いた。(以下、本文敬称略)

スタートアップのプラットフォームを利用した大手による新たな市場開拓型
実施内容の要約 アプローチが難しかった顕在化していない不眠症患者に対する、服薬までを含めたシームレスなオンライン診療体験提供(エーザイ、MICIN)
関わり方や提供物 不眠症薬やサイトプラットフォーム(エーザイ)
オンラインで完結する受診導線の提供による受診ハードルの低下(MICIN)
求める成果・ゴール 既存とは異なる形での医療サービスを受ける場所の選択肢を増やす(エーザイ、MICIN)
将来 予防・日常生活と医療の狭間をなくす(エーザイ)
オンライン診療が当たり前の世の中に(MICIN)

株式会社MICIN 草間亮一氏
2012年にマッキンゼー東京支社に入社。2015年より米国ニュージャージー支社勤務。主に製薬や医療機器など、ヘルスケア分野を担当。日米欧にて、全社戦略の立案、デジタルツールを用いたbeyond the pillの取組など、幅広いプロジェクトを経験。同分野への課題意識から、2015年末にMICINを共同で創業。京都大学大学院工学研究科卒。

エーザイ株式会社 統合戦略本部 大桃和人氏
ヘルスケアプロフェッショナルエンゲージメントトランスフォーメーション(HX)部 部長 2008年にエーザイに入社、MRとして医薬品の適正使用に係る情報提供・収集を担当。その後、新規事業や流通部門を経験し、2018年からDTIE事業部にて、認知症エコシステム構築と次世代認知症治療薬の上市準備を担う。2020年10月より現職。

自宅で受けられる医療の選択肢をもっと広げたい

──まずは、エーザイにおけるオープンイノベーションの取り組みの経緯や目的などについて聞かせてください。

大桃 当社は1941年の設立以来80年以上の歴史を有するヘルスケアカンパニーであり、これまでは医薬品に軸足を置いてビジネスを展開してきました。企業理念を大事にしており、医療の主役は患者とその家族、生活者であると明確に認識し、そのベネフィット向上を通じてしてビジネスを遂行しています。そうした人々が日々抱えるさまざまな憂慮を解決するには、医薬品だけではなく幅広くヘルスケアのソリューションを提供しなければという考えのもと、新たなビジネスにも乗り出したのです。

 さらに2021年4月にスタートした中期経営計画「EWAY Future & Beyond」では、顧客の憂慮を知り、取り除くための戦略を立案し、解決するというヘルスケアプロセスを磨き、一人ひとりの人生に寄り添っていくことも掲げています。その実現には、さまざまなスタートアップ企業とコラボしながら、人々の健康寿命の延伸と生活の質の向上に貢献していくことが欠かせません。そのためオープンイノベーションにさらに注力することとなったのです。

──そうしたなかでMICINとの協業はどのようにスタートしたのでしょうか。

大桃 草間氏と出会ったのは2020年初頭のことでした。我々は、将来的に「医療の提供場所が医療機関から自宅に広がる」と考えており、いずれは小売や映画、飲食などと同じように自宅で医療サービスを受けるという選択肢が当たり前になると見ています。しかし現在は、医療においては自宅という選択肢があまりに少ない状況にあります。高齢化に伴い自宅での医療サービスのニーズは拡大していくでしょうし、また就労層も日々忙しくなかなか医療機関にかかれないという人が増えています。

 だからといって症状が悪化してから医療機関にかかるのでは、健康を損なうリスクが増えるのはもちろんのこと、医療費もより多くかかってしまいますよね。結果として、社会保障費が増大するという悪循環に陥ってしまうのです。そうならないよう、なるべく健康を阻害する要因を早期発見できるようなソリューションを模索していたなか、その1つをMICINさんとのコラボレーションによって実現できると考えました。

草間 当社は2015年11月に当時4人で創業したスタートアップで、「すべての人が、納得して生きて、最期を迎えられる世界を」というビジョンのもと事業を展開してきました。おかげさまで最近では従業員120人超を抱えるまでに成長しておりますが、その我々の事業の根幹となるのがテクノロジーだと考えています。

 そうした数々のテクノロジーの中でもよく取り上げていただくのがオンライン診療のテクノロジーです。ただし、テクノロジーは有していても、当社が単独でできることは限られていますので、エーザイさんをはじめとした事業実績の豊富なさまざまな企業とのコラボレーションによって世の中の仕組から変えていこうと取り組んでいます。

オンライン診療サービスとのシナジーが強い保健事業にも進出

──MICINの事業内容について簡単に紹介してください。

草間 事業内容は大きく4つの領域からなります。まず1つがオンライン診療サービス「curon(クロン)」であり、エーザイさんとコラボレーションを進めているサービスはこちらになります。

 curonは2016年4月に提供を始めたオンライン診療サービスであり、患者さんはスマートフォン、パソコン、タブレットから、医療機関側はパソコンまたはタブレット端末を使用し、予約から問診、診察、決済、処方せんや医薬品の配送手続きまでをオンラインで完結させることができます。

 5000以上の医療機関(2021年1月時点)に導入されており、全都道府県で活用されています。また、当社が提供する薬局向けオンライン服薬指導サービス「curon(クロン)お薬サポート」とも連携しており、患者さんは同じ「クロン」アプリ上で、薬剤師によるオンライン服薬指導、決済、薬の配送サービスを受けられるようになっています。

オンライン診療サービス「curon(クロン)」

 この他にも、臨床開発デジタルソリューション事業やデジタルセラピューティクス事業を展開しており、2021年8月にはオンライン診療サービスとのシナジーも見込める保険事業も開始しました。

 オンライン診療サービスは、患者さんが何らかの医療機関にかかるためのハードルを下げるべく、適切に医療機関へのアクセスを提供するのがポイントです。しかし当社単独ですべてを行うことはなかなか厳しいですから、疾患の専門性が高い各領域の製薬会社とのタッグはとりわけ重要だと考えています。

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