「仲間を作れ」「業務以外でも使え」などアイデア満載
3K現場をkintoneで変革するガテン系総務の社内展開作戦
2017年06月26日 07時00分更新
「3K」と言われる土木建設業界。ITの浸透が進まない、努力と根性の世界というイメージがある。しかしその中にあって、kintoneを使って業務効率化に邁進している企業が九州北部に13拠点を展開するダイワだ。「業務の足場はkintoneで固める ガテン系総務部の挑戦」と題したセッションで、どのようなアプリを作り、どのように社内に広めてきたのか、同社の高田 直哉さんが語ってくれた。
建設現場には欠かせない足場と、施工を担当する美形男とともに提供するダイワ
kintone hive Fukuoka事例セッションのトップバッターとして、プレッシャーを背負いながらステージに上がった、ダイワの高田さん。ダイワが取り扱っているのは、建設現場には欠かせないビケ足場。建設中の建物を取り囲む網の目のようなあの足場を、施工付きでレンタルしている。職人345名、保有トラックは200台。実体のないクラウドの話題を普段から扱っている身としては、にわかには規模の想像もつかない。
「足場の会社にいながら私自身は足場のことはまったくやっておらず、採用や資産管理、社内イベントの運営、美形男(ビケメン)の運営に携わっています」(高田さん)
ビケ足場に続いて、突如登場した「美形男(ビケメン)」なるキーワード。ダイワでは「ビケ足場を組み立てるイケメン」のことを美形男と呼び、美形男のサイトまで用意されている。そこでは甘いマスクの美形男や、業務を通じて鍛えられた肉体美が紹介されている。ビケ足場の現場で鍛え上げられた美しいボディをダイワ社内では「ビケマッチョ」と呼ぶらしい。世の中には、聞いて見ないとわからない世界がまだまだ広がっている。
このような取り組みが最初に紹介されたのは、「面白いことやってるでしょ」というアピールではない。いや、いくぶんはそういうアピールも含まれていたと思うが、主題はそこではない。業界全体で進む人材不足に、ダイワも直面しているのだ。建設業就業者はピーク時に比べて約3割も減少し、その一方で55歳以上が占める割合は10%以上も上昇している。これまでと同じ規模で事業を維持するために必要なのが新規の採用であり、美形男PR活動もその一環だ。
並行して、3Kと言われる作業現場の改善活動も行なわれている。足場組み立てや資材積み下ろしに機械を導入することで安全性の向上と省力化を進め、少ない人材でも足場を提供できるよう努力している。
「kintoneを使って、こうした作業自体を省力化することはできません。でも現場の人たちを助ける力は、kintoneにもあると信じています。3K現場を、kintoneで解決、改善していきます」(高田さん)
現場調査業務をkintoneで省力化、1日あたりの拘束時間をのべ170時間削減へ
総務でまずは使い始めていたkintoneを、バックオフィスだけではなく現場の省力化にも活用していったダイワ。最初に紹介されたのは、ワーママのためのkintone活用だ。ダイワでは育児中のママたちが多くの働いており、足場を組む前の現場調査に携わっている。従来は出社してから、その日回るべき現場のリストを確認し、現地調査に訪れ、オフィスに戻って写真の印刷や図面の清書を行なっていた。
「回るべき現場をkintoneで管理するようにしました。調査結果もkintoneに入力すればよく、写真を印刷する時間は不要になりました」(高田さん)
調査すべき場所をスマートフォンやタブレット、PCでチェックできるようになったので、朝の出社が不要になった。それどころか、担当者は子供の送り迎えなどとの兼ね合いを考えながら、自宅で前夜のうちに翌日のルートを検討することもできるようになった。
「予定確認のために事務所に立ち寄る必要がなくなり、写真も印刷せずkintoneに登録すれば完了。従来は作業終了の電話報告をしていましたが、これもプロセス管理で解決し、1チームあたり約30分の拘束時間削減を実現しました。全チームに展開されれば、全社で約170時間分の省力化につながるみこみです」(高田さん)
kintone導入時を振り返り、現場の抵抗とそれを乗り越えた経緯を語る
作業現場の省力化にまで力を発揮し始めたkintoneだが、当初は高田さんが所属する総務部から利用が始まった。使い始めた当時は、わからない、余分なことを覚えたくない、手元にデータがないと不安などと言った声があちこちから上がったという。これはIT導入に関わったことがある読者なら誰しも経験したことがあるのではないだろうか。現場の担当者には、すでに慣れた業務スタイルがある。それを変えてもらうのは容易なことではないのだ。だからといって、導入に反対する人たちと対立する訳にも、無視する訳にもいかない。ではどうするか。高田さんのとった手法は、「保守的な人を巻き込んで、一緒に業務改善に取り組んでもらう」ことだった。kintoneがどのようなものかわかり、その効果も実感してもらえる。
「入金管理業務に、毎日何時間もかけていたという担当者を巻き込んで、一緒に入金管理アプリを作りました。そうしたら、業務負担が10分の1くらいになったんです。とても喜んでもらえました」(高田さん)
地道にkintone好きな仲間を増やしていくとともに高田さんが取り組んだのが、業務以外でのkintone利用だ。これには2つのメリットがあるという。1つは、業務以外でもkintoneに馴染んでもらうことで、抵抗感を減らしてもらえること。もう1つは、新機能を試しに使ってみる練習の場として活用できること。例として慰労会申請書とサガン鳥栖観戦チケットの応募アプリが挙げられた。
「慰労会申請書では、テーブル機能を使ってみました。またスポンサーになっているサガン鳥栖の観戦チケット応募アプリではルックアップ機能の動きを試してみました。業務に影響が出ないところで初めて使う機能を試すことができ、皆さんには自発的に使いたくなるアプリでkintoneに馴染んでもらえました」(高田さん)
ダイワでは1年に2回、1人あたり5千円の慰労会費用が支給される。その申請を領収書の添付も含めてすべてkintoneアプリにしたのだ。当初はリマインドメールを送信していたが、いまでは期の切り替わり時期に次々に申請書が送られてくるくらい、現場に溶け込んでいるという。サガン鳥栖のチケット応募アプリも同様だ。
「普段、業務ではなかなかkintoneを使ってくれない人も、こういうアプリは積極的に使ってくれます。そういうところから馴染んでもらえればいいのかなと思っています」(高田さん)
ユーザー企業からの「hiveで配布!」が来た
総務部は、社内でで褒められることがあまりない部署だと高田さんは言う。しかし高田さんの取り組みを見てもわかる通り、kintoneなどのツールを活用し、業務効率化や省力化のエンジンとなる部署でもある。高田さんは、総務部による業務効率化の取り組みを広げたいといい、これからも積極的にコミュニティに参加していきたいと語った。
「そして……One more thing… hiveで配布! ダイワもやります!」(高田さん)
「hiveで配布!」とは、kintoneパートナーなどがkintone hiveに登壇した際に、参加者に対してサービスを無償提供する風習。プラグインが無償配布されたり、サービスの無償トライアルが提供されたりしてきた。ダイワはkintoneパートナーではなくユーザー企業なので、まさかのhiveで配布!だ。参加者にプレゼントされたのは、LINE用の美形男スタンプ。筆者もしっかり、いただいてしまった。建築関係で働く友人は少なくないので、これからの会話に活用していこうと思っている。
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