日本国内でfreetelブランドのSIMフリースマホや格安モバイルサービスを手がけるプラスワン・マーケティングが、MWC 2015に出展し、「SAMURAI PROJECT」と名付る海外向けスマートフォン販売計画や国内でのWindows Phone端末リリースなどを発表した。
なぜこの段階でWindows Phoneの発売を発表したのか、また海外に打って出るのはなぜなのか、話を聞いてきた。
設立当初から海外展開を視野に入れていた。
プラスワン・マーケティングは2012年に設立された、まだ非常に若い会社だ。プラスワン・マーケティングCEOの増田薫氏は、日本の財産は”人”にあると考えているという。日本は。品質に優れる製品を実直に作ることで世界中から高い評価を得てきた。しかし、近年では製造部門を海外に移転する企業が増えたことに、増田氏は非常に残念に思っていたのだという。
ただ、世界における日本の製品への信頼度の高さ、日本の物作りの素晴らしさに対する理解度は、まだまだ強いものがある。そこで、日本で設計し製造した製品を世界に向けて発信し世界一を取る、そういう理念を持ってプラスワン・マーケティングを設立したそうだ。つまり、設立当初から海外展開をはっきりと視野に入れていたわけだ。
プラスワン・マーケティングは、2014年5月頃までは増田氏の自宅を事務所に、社員4人で活動していたそうだ。そのため、海外に発信したくても難しかった。しかし、現在では社員が60人以上に増え、体力も整ってきたことで、今回満を持してMWCに参加したとのことだ。
代表は元デルでスマホを担当
“日本品質”を知るスタッフが品質管理に携わる
増田氏は、プラスワン・マーケティング設立前はデルで携帯電話事業の責任者を務めていたという経歴を持つ。その関係から、携帯電話やスマートフォンに関わる各種チップセットやパーツメーカーとは常に近い距離を保っていたそうだ。また、ソニーをはじめ日本の大手メーカーで製造部門の品質管理を担当したり、定年退職したスタッフなどを雇い入れているという。そのため、初期から品質に優れる製品を提供できたと増田氏は胸を張る。
freetelブランドのスマートフォンは、現時点ではまだ日本国内で製造しているわけではない。将来的には、日本での製造も視野に入れているそうだが、たとえ海外で製造しているにしても、日本の大手メーカーで品質管理を担当していた人材による指導やチェックのもとに製造しているため、”Made in Japan”クオリティーを十分に実現できていると増田氏は語る。
法人からの強い要望がありWindows Phoneに参入
freetelは、これまではAndroidベースのスマートフォンを発売してきた。ただ、「もともとOSを限定するつもりはなかった」と増田氏は語る。それは、一般ユーザーと法人ユーザーとでは、ニーズがまったく異なるからだという。
一般ユーザー向けの製品は、豊富なアプリの存在などが重要で、そのためAndroidが基本となる。それに対し、法人からは以前からWindows Phoneに対する要望が非常に強かったそうだ。増田氏が過去に在籍していたデルはよく知られているように法人市場に強く、実際に日本国内の顧客からはWindows Phoneを出して欲しいという要望が非常に多かったそうだ。
その声を受け、実はデルでも国内でWindows Phone端末の発売を予定していたのだという。さらに海外では「Dell Venue Pro」というWindows Phoneが発売されていたのだ。しかし、日本では発売前に携帯電話事業から撤退したことで、日の目を見ることはなかった。そういった背景もあって、増田氏はプラスワン・マーケティング設立当初からWindows Phoneの導入を構想として持っていたそうだ。
実は、プラスワン・マーケティングには、日本マイクロソフトでWindows Phoneやタブレットの総責任者を務めていた人物が在籍している。海外営業グループ アライアンスグループ取締役の野村晴彦氏だ。
マイクロソフト在籍中の野村氏は、デル時代の増田氏とともに、日本でのWindows Phone発売に向けて力を注いでいた人物とのこと。実際にDell Venue Proは、50台ほど技適を通し、日本の法人顧客に配ったこともあったそうだ。日本マイクロソフト社長の樋口泰行氏(3月7日付けで代表執行役会長に就任)も、当時から、どうにか日本でWindows Phoneを立ち上げられないか非常に苦労していたという。
しかし、その後日本でのWindows Phone事業はほとんど立ち上がっていない。そこで野村氏は、プラスワン・マーケティングに合流し、増田氏とともにfreetelのWindows Phone事業の立ち上げに携わることにしたそうだ。
増田氏や野村氏がWindows Phoneにこだわる理由は、法人からの要望が強いという面もあるが、Windowsとの親和性や法人業務での利便性が、他の端末とは比べものにならないほど優れているからだという。
すでにマイクロソフトは、iOSやAndroid向けのOfficeを投入しているが、Windows Phoneでの利便性に比べるとそれらは大きく劣ると野村氏は語る。また、Windowsとの親和性に優れ、社内システムとの連携やセキュリティ確保も容易という側面も、大きな強みになると指摘。そういった考えのもと、プラスワン・マーケティング設立前からの構想や努力が実り、実現に至ったとのことだ。
今回、MWCの開催に合わせたかのように、各社から日本でWindows Phoneを投入するという発表が重なった。この点について野村氏は、「たまたま時期が重なっただけ」とし、逆に数社から発表があったことで、Windows Phoneが話題となって非常に助かっていると語る。
ただ、そういった中で聞こえてきていたのが、日本マイクロソフトのWindows Phoneに対する姿勢への声だ。誰に聞いても、「もっとしっかりやってほしい」という返答だったのだ。しかし、増田氏や野村氏は「日本マイクロソフトとの関係は非常に良好で、非常に良くしてもらっています」と、正反対のコメントをしている。
freetelでWindows Phoneを投入するにあたって、他社が米Microsoft本社と直接交渉を行なっているのに対し、プラスワン・マーケティングは日本マイクロソフトを通してライセンス契約を結んだという。この背景には、デル時代の増田氏とマイクロソフト時代の野村氏の頃から密接な関係があったからだろう。この点は、freetelのWindows Phone事業において、今後大きな強みになるかもしれない。
(次ページでは、「Windows Phoneでも3価格帯の製品を揃えたい」)
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