HTCが3月25日、待望のフラッグシップスマートフォン「HTC One M8」を発表した。早期にAndroidスマートフォンメーカーとして市場を牽引したHTCだが、モバイル業界の激しい生存競争で、ここ数年は苦しい戦いを余儀なくされている。M8はソニー、そしてSamsungのフラッグシップと正面衝突するが、果たしてカムバックなるのか。
前機種を踏襲した無難なフラッグシップ「HTC One M8」
発表されたHTC One M8は、デザイン、機能ともに予想された枠を大きく出てはいないが、HTCファンの期待に沿う端末といえる。2013年に投入した前機種の「HTC One M7」を継承したデザインで、画面は5型と、M7の4.7型から少し大きくなった。必然的に端末のサイズは若干大きく、重くなり、145.35×70.6×9.35mm/160グラム。画面解像度は1920×1080ピクセルと同じで、プロセッサーはQualcommの2.3GHz動作のクアッドコア(Snapdragon 801)を搭載した。バッテリー容量も2600mAhと大きくなり、省電力機能によりバッテリー持続時間は40%改善するとのこと。
差別化として力を入れているカメラと音楽も強化した。「UltraPixel」として売り込むカメラはセンサー2つを利用した「Dual Camera」、F2.0のレンズによる弱光撮影、撮影後のフォーカス調整などの特徴を持ち、音楽では「HTC BoomSound」としてデュアルスピーカーを搭載した。Androidは現時点で最新の4.4(KitKat)。独自ホームUIの「HTC Sense」はバージョン6.0となった。これらをアルミニウムユニボディーで包み、高級感のある仕上がりになっている。色は金、銀、グレイで展開、黒がなくなっておりトレンドを踏襲している。
部品不足に悩まされたM7
M8では一部市場で即発売
このように、HTC One M8は従来モデルの流れをくみつつ機能を固めていったもので、ユーザーを驚かせるような要素は少なく、”無難な“という言葉が浮かぶ。これは、ソニーの最新XperiaであるXperia Z2でも同じ。おそらく、他の多くのメーカーにとってもフラグシップモデルはこういう形で出していくしかないように見える。だが、ミッドレンジやローエンドで勝負していないHTC(とソニーも)にとって、M8はやはり社運をかけた製品となる。
初期Android端末の代表的なメーカーであるHTCは、Samsungの猛攻に押されてここ数年低迷している。M7はレビューが上々だったにも関わらず、部品不足問題に悩まされて一部市場で発売を延期、これが足を引っぱり期待通りのヒットには至らなかった。読みが外れたHTCは2013年第3四半期、四半期ベースでは2002年の上場以来初となる損失を計上してしまった。
第4四半期はBeats Electronicsの株式売却やコスト削減対策によりなんとか赤字を免れた形だが、今四半期(2014年第1四半期)は再び損失になるとの予測を出している。株価は50%も下がり、幹部の流出が続いた。2011年の第1四半期に9.3%あったスマートフォン市場における同社のシェアは、2013年第1四半期には2.5%と大きく縮小した。
財政事情が苦しくなる中でHTCは2013年に製造を変更、低価格機種については製造を他社に委託することでリスクを減らして製品の多様化をはかっている。
新しく発表したM8は台湾、米国、英国などですでにはつばいされている。今回、発売までのタイムラグを縮小したのは大きく評価できそうだ。部品不足問題の回避策となるだけでなく、競合との競争でも効果が期待できる。Samsungの「GALAXY S5」の発売が4月11日、ソニーの「Xperia Z2」は(台湾など発売が始まっている市場もあるが)米国では4月第2週の予定となっており、大型製品のローンチに先駆けることができるからだ。
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