今から約15年前の1998年にサンフランシスコのモスコーニセンターで開催された「JavaOne1998」では“Javaチップ”を組み込んだJava Ring(指輪)が配布された。そしてJava Ringに書き込んだ“パーソナル情報”や“好みのコーヒー情報”を専用の読み取り機で読み込み、希望のコーヒーをコーヒーメーカーが自動的に用意してくれるといったデモが行なわれて話題になった。
国内では同年の「Java Developper's Conference 98 Tokyo」でも、Java Ringは来場者の多くに配布され、筆者も机の引き出しに長く入れていたがいつの間にかなくしてしまった。
昨今は、「Google Glass」の話題で何度目かのブームになっているウェアラブルコンピューティングだがその歴史は古く、懲りないICTワールドは、業界関係者の入れ替わりと同じ数だけこれらのブームと衰退を短いサイクルで繰り返している。
歴史の浅い産業であるICT(情報通信技術)産業の弱点は、ほかの歴史ある産業と異なり、長老(歴史の語り部)がおらず、登場してくるすべてのモノは過去にはなかったまったく新しいモノだ、と思い込んでしまうおかしなサイクルがマスメディアを含め業界全体にあることだ。
実際には、まったく新しいと言われている技術や製品も、そのほとんどは、他の産業の技術や製品、社会システム、その歴史の上に存在していたモノやその些細な応用製品がほとんどだ。
今回、筆者が衝動買いした「GalaRing」もそれは同様だ。約15年前に登場したJava Ringを知っている人には、GalaRingの内容を聞いた瞬間に、JAVA Ringの“二番煎じ”にしか見えないだろう。
しかし、まったく知らない人には、超画期的な新製品に見えるに違いない。自分も含め、“知らない”ということは実は極めて恐ろしいことなのだ。
もはや百番煎じ!?
指輪型NFCタグ「GalaRing」
指輪というビジュアル外観的側面から見ればまだ二番煎じ止まりだが、指輪という外見にとらわれず、単にパーソナルなIDタグやパーソナライゼーションクライアントデバイスの一種として見れば、“百番煎じ”でもう後がないかもしれない。
これは昨今話題のGoogle Glassも同様だ。過去に類似した企画商品は世界中のメーカーから飽きるほど登場してきている。
GalaRingも15年前のJava Ringと同様、“パーソナルID”(個人認証)と“パーソナルインフォメーション”(個人属性)を指輪の中のNFCタグに記録しておける、昨今流行の“ウェアラブルなクライアント製品”だ。
GalaRingには、前述した2つの機能を実現するために、2個の独立したNFCタグを搭載している。2個のNFCタグは、指輪の周囲を2分してそれぞれが離れて配置され、カーフ革でカバー、保護されている。
“認証タグ”の入っている部分にはカーフ革に「鍵」らしきアイコンが刻印され、“属性タグ”の入っている部分には「メモ」の様なアイコンが刻印されている。2つの機能を実行するタグが指輪の周囲に存在すると気になるのは指輪装着の向きだ。
ここでは自分のスマホのロック解除などに利用することの多い認証タグを、手のひら側にくるように指輪を装着するのが一般的かもしれない。
「戦略的衝動買い」とは?
そもそも「衝動買い」という行動に「戦略」があるとは思えないが、多くの場合、人は衝動買いの理由を後付けで探す必要性に迫られることも多い。
それは時に同居人に対する論理的な言い訳探しだったり、自分自身に対する説得工作であることもある。このコラムでは、筆者が思わず買ってしまったピンからキリまでの商品を読者の方々にご紹介し、読者の早まった行動を抑制したり、時には火に油を注ぐ結果になれば幸いである(連載目次はこちら)。
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