myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第4回

歌唱機能追加で賑わう「さとうささら」タグもピックアップ

参院選公示日にニコニコ動画の政治タグを解説してみた

筆者紹介：myrmecoleon

　明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフでニコニコ学会β幹事。趣味で同人誌やニコニコ動画関連の研究をしてる人。記事に使ったデータ元の『ニコニコ統計データハンドブック2013』など同人誌をコミケで頒布。ブロマガでは連載記事の補足も。
　Twitterアカウントは@myrmecoleon。関わった近著に『進化するアカデミア 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』（イースト・プレス刊）。右の画像は筆者を擬人化？して描いてもらったキャラ「ありらいおん子」。男の娘。

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「政治」タグはコメントの数と率に注目

　「政治」はニコニコ動画初期から存在するカテゴリタグのひとつ。国内外の政治に関わる動画につけるタグで、これまでに約11万4000本以上の動画が投稿されています。内容としては国会中継や政治家の関連動画、デモや街宣活動の映像、ユーザーが政治に対する意見を述べた動画などがよく投稿されています。

　政治タグが付いている動画の特徴としては、コメント数・コメント率の高さが挙げられます。いずれも全体の約2倍で、コメント率の中央値はカテゴリタグ中最大です。再生数の中央値は660。1万再生以上が5.4％、上位2.45％の投稿者の動画に全体の再生数の半数が集中と、人気の偏りが少ないタグです。

^{※コメント率・マイリスト率はそれぞれコメント数・マイリスト登録数を再生数で割った値。拙著同人誌『ニコニコ動画統計データハンドブック2013』より抜粋。2012年12月上旬調査時点の値。}

　これまでの投稿者の総数は約1万1000名。平均年齢は約29歳。女性が1割、海外からの投稿者も1割弱存在します。投稿者数の増加はその月の出来事でかなり変動しますが、現在は月に2500前後の動画と150名弱ずつ投稿者が増えています。

グラフ1：動画投稿数は左軸、新規投稿者数は右軸。2013年6月は25日までの数字。最も投稿者の増加した2010年11月は尖閣諸島中国漁船衝突映像流出事件、次に増加した2011年は東日本大震災によるもの。その他についても総選挙など、政治的な出来事をきっかけとする傾向が強い

　政治タグの特徴としては、チャンネル動画の多さと、一部のユーザーによる投稿が非常に多い点が挙げられます。

　ニコニコ動画にはユーザーの投稿した動画の他に、チャンネルを取得して投稿された公式動画があります。現在は自民党をはじめ多くの政治団体や政治関連のチャンネルがあり、政治タグをつけて動画を投稿しています。政治タグでは動画全体の約14％がこうしたチャンネル動画と特に多く、また最近になるにつれて政治タグ中のチャンネル動画の比率は増加しています。

グラフ2：棒グラフが動画数（左軸）、折れ線が比率（右軸）。2010年6・7月の増加は2010年参院総選挙にあわせて作られた「e国政」のサイト用の動画が大量に投稿されたため

　また政治タグでは1000以上も動画を投稿しているユーザーが3名もいる等、一部のユーザーが大量に動画投稿してる傾向が強いです。政治タグのユーザー動画の半数は投稿数上位から2.8％、340IDのユーザーによって投稿されています。この偏りはカテゴリタグの中で最大です。

　こうしたタグの特徴が影響して、グラフ1のように動画投稿数と新規投稿者数の増加は乖離する傾向があります。

　政治タグでもMADなどはないわけではないですが、ニコニコ動画の他のタグと異なり「作品」としての動画はまれで、独特の傾向があります。むしろ政治に関わる各人のメッセージを動画（転載やデモ等の記録、あるいは自分自身の言葉）に託して多くの人に知らせようとする動画が多いようです。コメント率が高いのも、投稿者のメッセージへの賛同あるいは批判を示す視聴者が多いためでしょうか。

　政治タグはこのように、他の娯楽や観賞物としての方向性とは別の、ニコニコ動画の広がりを示しているタグと言えるでしょう。

ASCII倶楽部

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