米国はいまだにバーコード天国
“現時点で”必要なかったNFC
Appleにとって、日本は1つのリファレンスモデル。App Storeなどのビジネスモデルを見ていると、日本のiモードをよく研究しているな、と感じさせられます。iPhone 5も、日本は米国に遅れることなく9月21日発売し、日本のケータイ・スマホ市場を席巻しています。その一方、マップアプリの不備や、NFCに対応しなかったなど、期待が寄せられていた進化が反映されなかったことも指摘されています。
ただ、実際にカリフォルニア州で生活していたとしても、生活の中でまだNFCがあっても使えないな、と思わされます。
日本にいるときは、筆者もおサイフケータイで電車に乗り、ポイントカード代わりにタッチをして、財布の中のプラスティック成分を激減させることに成功していました。しかし米国では、膨大に存在する店舗へのNFC読み取り機の導入はまだまだほど遠く、その代わり、バーコード天国になっているのが現状です。
スーパーマーケットの「Safeway」や、雑貨まで揃える大型ドラッグストア「CVS」などは、バーコードの会員カードを発行しますが、メインのカードに加え、小型のカードも用意してくれます。小型のものはキーホルダーに取り付けて持ち歩けるようになっています。
カードがかさばったり、鍵でカードがぼろぼろになったりしますが、「あ、カード忘れた!」という経験は限りなく減ります。
CVSの場合、買い物をしていると、ときどき異常に長いレシートをもらうことがあります。このレシートにはクーポンがついています。「次回のお買い物総額から25%オフ」(これはけっこう大きい)、「20ドル以上お買い上げで4ドルオフ」という割引率の高いクーポンから、特定の商品を1回買うともう1つ同じものをオマケ、といったものもあります。
会員証もレシートクーポンも、バーコードリーダーさえあれば読み取れ、規模の大きな小売店であればバーコード読み取り機付きのレジがどこにでも導入されていることを考えれば、iPhone 5がNFCに対応することと、「Passbook」のようなバーコードを主体とした機能が入ること、どちらがコストを少なく導入できるかは一目瞭然です。
iPhone体験の主たる市場は依然として米国です。その米国で何が必要か、何がシンプルか。そういうことを考えた上で、私たちの予想以上にゆっくりと、Appleは事を進めているように思います。
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