教育ツールの電子化と
日本が直面している課題
OECD諸国の中で、授業でのパソコン利用が最下位の国はどこかご存じだろうか? 日本である。この不名誉を返上するためにも、今回の発表を機に一気に国内で議論が活性化することを期待する。日本では、2009年12月に総務省から発表された成長戦略「原口ビジョン」に「電子教科書を全ての小中学校全生徒に配備(2015年)」と明記されたため、電子教科書がにわかに脚光を浴びるようになった。続いて2010年4月に発表された「原口ビジョンII」では、具体的な目標年度は削除されたものの、名目GDPを2020年度までに3兆円押し上げるプランの中に位置づけられており、また同年6月の新成長戦略においても「児童生徒1人1台の情報端末による教育の本格展開の検討・推進」と「教科書の電子書籍化等について制度改正を含め検討・推進」が明示されている。
しかしながら、いまのところ生徒向けの電子教科書が実現するめどは立っていない。現在は、電子黒板で使う指導者用の電子教科書の開発が優先されている状況だ。実は、日本の教科書予算400億円のうち、約半分が教科書の紙代および印刷代に当てられている。それを流用すれば、タブレット端末の費用を捻出できるとも言われている。それでも、2兆円を超すと言われる購入維持費用を軽減するためには、端末価格を下げることや機器の陳腐化対策が課題となる。
日本の教科書の編集作業は、編集委員会の立ち上げから考えると4年程度を要する。子どもたちの手に届くまでの間、文字や図の配置まで含めて、教科書検定制度に基づいて徹底的に内容が吟味されるためだ。電子化のメリットは、動的な側面が強いことにある。最新の情報に簡単に書き換え可能であり、教員自身が使いやすいように、コンテンツを組み合わせて再編集することも可能だ。
このように教科書や補助教材が柔構造化・細分化・オープン化されていく中で、教科書検定制度との整合性を保つ必要がある。そうした観点から、紙との役割分担の着地点を探る議論が求められる。
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