元祖ガジェット楽器のiPhone/iPadアプリ化で話題を呼んだ「iKaossilator」(iTunes)に、早くもバージョンアップ版が登場した。
Web経由でループが共有できるようになり、元祖KAOSSILATORとは違う方向へ進化し始めているようだ。今回はそのミニレビューと、KAOSSILATORを企画したKORGの坂巻匡彦さん、iKaossilatorを開発した井上和士さんのインタビューをお届けしよう。
KAOSSILATORは「楽器が弾けない人でも最新のシンセサウンドと演奏が楽しめる」ことを目指し、鍵盤を廃してタッチパッドに絞った画期的な楽器だった。キーとスケールを設定すれば、タッチパッドを触るだけで音楽的な演奏ができ、片手で持てるサイズと電池駆動でモバイル性も高く、かつ定価2万円強という低価格で登場し、大ヒットとなった。
このKAOSSILATORのインターフェイスを思わせるような他社製iPhoneアプリも見られたが、ついにiKaossilatorで真打ち登場というわけである。
リリース当初のiKaossilatorはiPhoneのみの対応だったが、Version 2.0.0からユニバーサルアプリとなり、iPadの画面サイズにも対応する。Version 1.0.0を購入済のユーザーなら、無償でアップグレードできるし、まだ未購入なら2011年12月31日まで、発売記念価格の850円(本来は1700円)で売られている。持っておいて損はしないアプリなので、今のうちの購入をお勧めしたいところだ。
iKaossilatorの進化 その1――
リアルタイムな操作性
iKaossilatorでは、キーやスケールを設定すれば、画面に触るだけで音程を外さずメロディーが弾ける。単音/コード/リズムパターンなど150種類の内蔵音源を持ち、ただ鳴らすだけでも楽しい。そうした演奏性はオリジナルと違いはないが、iOSアプリ版の真髄はシーケンサーを駆使したループプレイにある。
オリジナルKAOSSILATORは、1つのトラックにループをどんどん重ねていくイメージだったが、iKaossilatorは5トラックのループシーケンサーを持ち、それぞれに内蔵の音色を割り当て、ループを作れる。そしてできあがったループは保存可能で、メニューから呼び出せるようになった。これがオリジナルと大きく異なる点だ。それぞれ異なるループから好きなトラックを組み合わせる「Mix Play」も可能になった。
Version2.0.0からは、全トラックのループの長さやテンポをタッチパネル上でリアルタイムに一括操作できる「Flex Play」という、強力なルーパー機能も付いた。トラック毎に設定されたミュート/ソロスイッチとあわせ、リアルタイム演奏のインパクトも強化されている。
iKaossilatorの進化 その2――
ネットワークへの対応
Version2.0.0で劇的に進化したのは、演奏したデータのリアルタイム録音に対応し、保存したループも含めて、それぞれ「Audio Export」が可能になったことだ。WAV形式でiPhone/iPad内に保存して、iTunes経由でPCへ転送するのはもちろん、そのままオーディオ共有サイトの“SoundCloud”にアップロードできる。
気軽に作ったループにコメントを添えてアップし、Twitterやfacebookにリンクするというプロセスは、iPhoneで写真を共有する「Instagram」の感覚に近い。このことでiKaossilatorは、オリジナルとはまったく意味の違うソーシャル的な楽器になったと思う。
なお、アップロードしたループは他のユーザーとも共有でき、他人がアップロードしたループも自分のものと同じように扱える。ローカルに保存された自分のループと、Web上にある世界中のループを、分け隔てなく組み合わせて演奏できる感覚は新鮮だ。そして「AudioCopy」の対応で、Audio Exportで書きだしたWAVファイルを、他のiOSアプリで使えるのは、iKaossilatorの応用範囲を広げるはず※。
※ ただし現在のバージョンでは、AudioCopy規格の互換性問題で、GarageBandなど一部のアプリにペーストができないが、これはKORG側でも確認済みで、近日中に対策を施したマイナーアップデートを予定しているという。
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