広く使われたClarkdale世代のCore i5/i3
Lynnfieldに引き続き、2010年1月にインテルは「Clarkdale」コアの製品を、「Core i5」「Core i3」および「Pentium Dual Core」の3ブランドで一斉に投入した。
Clarkdaleは32nmプロセスで製造された「Westmere」アーキテクチャーベースのCPUコアに、45nmで製造されたGMCH(GPUとメモリーコントローラー機能)を組み合わせて、1チップに封入するMCM構造を採っている。結果として、CPUコアはメモリーコントローラーからかなり遠い場所に配置されることになり、Nehalemアーキテクチャーの持つ「広いメモリーバンド幅」という特性を、ややスポイルすることになった。内蔵されたGPUコアも、従来のインテルのものと大差ない性能レベルに留まる。
それでも32nmプロセスの威力は大きく、動作周波数は3GHzを超えて軽々と回るということもあって、価格の安さと相まって広く使われた。製品としては、2010年1月にまず「Core i5-670、661、660、650」と「Core i3-540、530」、「Pentium G6950」が投入される。
その後、2010年3~4月には「Core i5-680、655K」と「Core i3-560、550」がリリースされ、2011年1月には「Pentium G6960」が追加で投入された。
ちなみに、ロードマップ図には「Pentium G6951」なる製品があるが、これはちょっと変り種である。投入されたのは2010年9月で、スペック的にはPentium G6950と変わらないのだが、OEM専用という扱いである。そしてこのG6951、CPUとは別に「Processor Performance Upgrade Card」なるものを購入し、これに記載されたPIMコードを専用ユーティリティに入力してPCを再起動すると、CPUが「Pentium G6952」相当にアップグレードされるという仕掛けがあった。
このG6952とは、動作周波数は2.80GHzでG6951/G6950と変わらないが、3次キャッシュが4MBに増えて、しかもハイパースレッディングが使えるというものだ。強いて言うならば、Core i3-520に相当するようなスペックの製品だ。ようするに、CPU内部のファームウェアを書き換えることで制約を外す、という仕組みである。
インテルのウェブサイトにはこれによる性能改善の度合いが示されている。だが、これが好評という話は聞かないし、後継製品に関する話も特に聞かない。Upgrade Cardのお値段は50ドル前後だったそうだが、「50ドルでこれだけ改善される」と見るか、「これだけしか改善されない」と見るかは微妙なところだ。
Pentium Dual Coreがターゲットとしているマーケットはエントリー層だから、単にCPUだけを改善しても駄目だ。ほかにもメモリーやらグラフィックスやらHDDやらと、かなりのパーツを入れ替えないとトータルとしての体感性能はあまり変わらないと思われる。とはいえインテルもまだ様子見なようで、Pentium G6951は最初のテストといったあたりであろう。
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