より正確に波形を再現する音声フォーマット、それがDSD
DSDはSACD(SuperAudio CD)にも使われている録音方式。CDでおなじみのPCM方式に比べると、しくみはシンプルだ。PCM方式がマルチビットで階段状に波形を記録するのに対し、DSD方式は時間軸方向に「音があるかないか」だけを1ビットで記録する。
DSDは2822.4kHz (1秒間に282万2千400回。CDの64倍!)という高速サンプリングで、波形を点の粗密として記録する。PCM方式のように、波形を階段状にカットするデシメーションフィルタがないので、サンプリングした情報を削らずに残せるのがメリットだ。
たとえばサンプリングレート44.1kHzのPCM方式で、可聴限界近い成分を記録した場合、記録できる波形はわずか数ドットで表現せざるを得ない。本来あった情報はデシメーションフィルタで捨てられ、原音とは程遠い波形になってしまう。
その情報を捨てずに録っておけるのがDSDという方式だ。CDに比べてダイナミックレンジが広く、再生限界も高いというのがDSDの特徴だが、波形の再現性が高く、可聴帯域内での解像感に優れている。
軽い気持ちで録った音でも、驚くほどリアルに聴こえるというのもDSDの優れたところだ。本来はもっと気軽に使いたいフォーマットなのだが、DSDには、すでに「ケチ」のようなものがついてしまっている。それはSACDが失敗したことだ。