前回のKNOTSさんに続いて、初のメジャーアルバム「filmstock」(Amazon.co.jp)を発表したボーカロイドP(ボーカロイドを使った作曲家のこと)、bakerさんのインタビューをお届けする。
bakerさんはボーカロイド「初音ミク」が発売されて間もない2007年、「celluloid」「サウンド」とシーンを代表する曲をニコニコ動画で立て続けに発表。ケータイムービーを使った、荒い画像ながらもセンスある動画も彼の手によるものだった。最近ではクラブイベント「VOC@LOID NIGHT」を主催し、DJ活動を精力的に行なうマルチタレントでもある。
今回のアルバムは、ボーカルに初音ミクやメグッポイドなどのボーカロイド、そしてギターやベースを使ったバンドサウンドという、いわゆるbakerさんらしい曲が中心。リテイクされた代表曲と、書き下ろしの新作で構成されている。
アルバムのジャケットデザインと、同梱されるDVDの原画は、同じボーカロイドPである古川本舗こと古川Pさんの手によるものだ。
そのデザインで画期的なのは、メジャーリリースのボーカロイド系のアルバムとしては初めて「ジャケットのどこにもボーカロイドのキャラクターが登場しない」ということ。普段からボーカロイドについて「興味があるのは音声合成技術」と主張してきたbakerさんだが、これは純粋に音楽とデザインで勝負したいという意志の表れだろう。
ダメなのに褒められると死にたくなる
―― では今度はbakerさんです。よろしくお願いします。最近はクラブでやることが多いみたいですが、DJは以前から?
baker ちゃんとしたDJをやったのは今年の5月が最初です。フロアのお客さんとか、次に誰が出るとか、それでも綺麗につながなきゃならないとか、いろんなことを考えなければならないので大変ですけど、楽しいですね。
―― クラブとネットの温度差はありますか?
baker ネットだと盛り上がっても冷めても分からないんですよ。でも人がいるところでやると、ダメなときはダメだとハッキリ分かる。
―― ニコ動でも弾幕やコメントが流れたりするじゃないですか。それとは違うんですか?
baker 同じ「この曲ダメだな」というコメントも、通りすがりの人と、同じ作り手が言うのでは、全然意味が違うじゃないですか。でも誰が書いているのか分からない。それをどう自分の中に受け入れていくかというと、できないんですよ。どうしたらいいんだろうというか。
―― それは多くの聴き手にさらされているという意味でもありますよね。
baker それについては複雑なところですね。僕は自分が「ダメだ」と思って出したものが褒められると死にたくなるんですよ。
―― えーっ、そこまでですか! でもプロとして仕事していく上で、そこは割り切らなければならないところですよね。
baker そこは分けているんですね。前にゲームのBGMとか、声優さんの曲の編曲とか、そういうことをやったことはあるんですが、それは個人の活動とは切り離して考えているんで。クライアントが「うん」と言えばそこまで。そこは割り切ってやっています。
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