公開会社法をめぐるネット論議
民主党の検討している「公開会社法」についての藤末健三議員のブログが大きな反響を呼び、堀江貴文氏などが強く批判している。ただ誤解もあるようなので、わかりやすく問題を整理しよう。
まず混同してはいけないのは、これは金融庁などが以前から検討を進めている公開会社法とは別物だということだ。こっちは規模の大きい上場企業に、情報開示や株主総会などにおいて、個人企業より厳しい企業統治を求めようというものだ。民主党の検討している案は同じ名前がついているが、元は連合の政策要求から出たもので、最大のポイントは従業員の代表を取締役あるいは監査役に入れることを義務づけようというものだ。いま問題になっているのは後者である。
連合の要求の背景にあるのは、欧州型の「ステークホルダー資本主義」を実現しようという発想だ。欧州には、取締役に従業員の代表を入れるよう義務づけている国が珍しくない。英米型の「株主至上主義」よりも、このように多くの人々の意見を反映させて労働者にも利潤を分配しようというのは、一般論としては間違っていない。しかし日本が「株主至上主義」だという藤末氏の現状認識は間違っている。
彼がリンクを張っている日銀の資料でも、日本企業の配当性向(配当額/税引後当期純利益)は20%前後とアメリカより低い。成長期の企業の配当は少ないので、配当性向が高ければいいというものではないが企業価値も低い。2008年の金融危機以降の主要国の平均株価を比較しても、日経平均株価の落ち込みがもっとも大きく、立ち直りがもっとも遅い。史上最高値の1/4のままで株主は大きな損失を抱え、証券会社も日本株は勧めなくなった。
この状況で、民主党案のように従業員の経営参加を義務づけたら、何が起こるだろうか。藤末氏のいうように「労働分配率を上げる効果」が狙いだとすれば当然、配当性向は下がる。ただでさえ低い配当が下がれば、株主は日本株を売り、株価は下がるだろう。企業の資金調達や起業は困難になって成長率は下がり、雇用も失われる。デフレの最大の原因は投資の不足だが、公開会社法はこれをさらに悪化させるだろう。
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