iPhoneとクラウドを繋ぐアプリを作るフリービットは
インフラからデジタル家電まで、幅広く事業を展開する
スマートフォン向けアプリケーション開発で実績のあるベンダーに話を聞き、その市場の特性とトレンドを探る本連載。第2回の今回はiPhoneとクラウドを繋ぐ「ServersMan」の開発元として知られるフリービットである。
同社はインターネットサービスプロバイダ向けのインフラ提供および技術サービスを軸に、子会社のエグゼモードを通じてデジタル家電の設計/販売に乗り出すなど事業を多角化している。ServersManでは、iPhoneのみならず、Winodws MobileにAndroidと複数のプラットフォームをサポートすることから、今後の展開が注目を集めている。
――iPhoneアプリ「ServersMan」(iTunes Storeで見る)が話題になっています。開発にあたってのコンセプトを教えてください。
三沢 まず、ServersManはマルチプラットフォームで展開する、というのが一番のポイントです。開発にあたってiPhoneを最初のターゲットに選びましたし、ServersManのコンセプトを実現するには格好のデバイスだったことは事実ですが、あくまでiPhoneはサポートするデバイスの1つです。
ServersManのコンセプトをわかりやすくいうと、「雲の中ではなくユーザーのポケットの中に存在するクラウドストレージ」、「自分だけの持ち歩けるデータセンター」であるといえます。iPhoneをはじめとするスマートフォンやPCが、5分もあればサーバーとして動作させられます。IPv6にも対応しています。
最初のターゲットとしてiPhoneを選んだ理由は、やはりApp Storeの存在でしょうか。以前はアプリのダウンロードに一手間かかっていたWindows Mobileと比べると、普及を図るという意味では非常に魅力的だと考えました。プラットフォームとして見ても、ユーザーインターフェイスに統一感がありますし、開発に従来のMac/UNIXの資産を生かせるメリットがあります。
――ServersManのサーバーは他社のサービスなどと比べて工夫などがありますか?
三沢 他社が運営するデータセンターとは、そもそもの発想が違います。Googleを例にすると、多数のサーバーを設置する必要上データセンターが大規模にならざるをえませんが、ServersManの場合、その仕組み上トラフィックのルーティングのみ行なうため、小規模なもので足ります。
ただし、ServersManは全世界のユーザーに利用されますから、効率的なトラフィックを実現するために、ゲートウェイはアメリカと中国、イギリス、そして日本の4ヵ所に設置しています。
iPhone版ServersManも、Webサーバーという機能自体がクローズアップされてしまう傾向がありますが、なによりポイントは「外部からiPhoneにアクセスしてもらえる」ことにあります。それにはHTTPによる通信が妥当で、そのためにはWebサーバーが必要、という考え方です。
――開発に際しマーケティングの観点から注意したことは?
三沢 スマートフォン市場は急激に伸長しつつあり、今後3年間に(世界で)6億台以上増えるだろうとの予測のもと、製品およびサービスの開発にあたっています。
当面はiPhoneとWindows MobileとAndroidの3本で進めていきます。個人的な見解ですが、今後はAndroid版が一番多い数になるかも、と現時点では考えています。
――iPhone以外のプラットフォームの状況はどうでしょうか。
三沢 12月にWindows Mobile版の最新バージョン(2.2β)を公開しました。Windows Mobile版はWindows Marketplace for Mobileのオープンと同時に公開された全126本のうちの1本として、順調にダウンロードは増えています。Windows Mobile版は、中国向けのリリースも準備中です。Android版は同じく12月に2.0βを公開しています。
11月にはプラネックスコミュニケーションズと共同開発したハードウェア「ServersMan@CAS」を発売しました。CASは「Cloud Attached Server」の略で、NAS(Network Attached Storage)にServersManを搭載することで、新しい形のデバイスに進化させたものです。
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