8月2日、アップル直営店の「Apple Store Ginza」で行なわれたトークイベント「第13回 月刊インタラ塾」。テーマは「サマーウォーズに見る、ネットとアニメのコミュニティ論」だ。
ゲストは、8月1日に公開されたアニメ映画「サマーウォーズ」を監督した細田守氏、ネット社会評論書「アーキテクチャの生態系」著者の濱野智史氏、そして「ハバネロ・暴魔大戦」のデザインを手がけた、クリエイティブディレクター兼アートディレクターの鈴木克彦氏だ。
「サマーウォーズ」は、主人公・小磯健二が、インターネットの中で起こる世界的な危機に対して、奮闘する物語。田舎の大家族のリアルなつながりと、世界中の人とのインターネットを介したヴァーチャルなつながりが描かれる。
公開翌日ということもあり、立ち見が出るほど盛況なイベントだったが、ただのイベントではない。リアルタイムのストリーミング中継を行ない、Twitterの書き込みを会場のスクリーンに映し出すことで、ゲストと視聴者を繋げるというものだった。
トークショーは映画の冒頭で描かれる、デジタル仮想都市「OZ」の導入シーンの放映から開始。「映像とデザインについて」「つながりについて」「人物造形について」「コミュニティと物語について」という四つのテーマに沿って進められた。
(C)2009 SUMMER WARS FILM PARTNERS
ネットのイメージは「黒」ではなく「白」
―― そもそも細田さんは、OZのイメージは何かを参考にされたのですか? 白いインターフェースのイメージはどこから?
細田 僕の作品には以前から、このOZのような白い球体空間を出しているんですね。「時をかける少女」のタイムリープ空間や、「SUPERFLAT MONOGRAM」※1のルイ・ヴィトン空間のイメージですね。
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そもそもは「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム」で初めて、インターネット=白い球体空間ですよっていうイメージを出したんです。
それが共通して白いのには理由があって、それまでの映画やアニメで描かれるネットやハイテクのイメージって黒なんですよ。黒い中に緑やオレンジな線が走る……。
濱野 「マトリックス」はまさにそうですよね。
細田 自分が子供に向けてインターネットって世界を出すとき、そういうおどろおどろしい、カッコイイけど危険な雰囲気とは、全く逆のものにしたかった。そのときデジモンをみている子供達には、危ないサイトに行ってほしくなかったんですね(笑)。
だから、黒に対して白とか、かわいいものを使った子供のためのインターネット空間をイメージして、それがこの白い球体空間に至るんです。
※1 SUPERFLAT MONOGRAM: 2003年、ルイ・ヴィトンの店頭プロモーション用に制作された短編アニメーション作品。アーティスト・村上隆氏の依頼により制作された
―― ブラックサイトに対する、白い世界ともいえますよね。
細田 「サマーウォーズ」のOZは、設定として、世界中で10億人がアカウントを取得している、そういう世界なんです。10億人というと、小さい子から老人までがアカウントを取得しているのですが、きっと「マトリックス」のようなサイバーなイメージでは、10億人も会員が集まらないと思うんですよ。子供達や女性が入ってきやすいような世界じゃないといけない。
―― 大学時代から細田さんを知ってらっしゃる鈴木克彦さんに細田映画のデザインの素晴らしさをお聞きしたいのですが。デザイナーの視点からどうですか?
鈴木 今日は、細田の応援演説にきたので(笑)。細田の映画の特徴はなにかというと、デザイン。情報がてんこ盛りな映画なのに、画面に映し出される映像の情報整理の仕方がうまい。デザイナーの目から見てもすごいなと思う。
それと、緻密な描写と、デフォルメの両立ができていること。ものすごくリアルなんだけど、幻想的な、誰の記憶の中にもあるような景色(の描写)が上手い。だから「細田守の描いた夏」というのはみんなの心に残るんだと思う。バーチャルを作るときには、逆にリアルさを追求するんですよ。