ATIテクノロジーズジャパン(株)は14日、都内で販売代理店や報道関係者を集めて新製品発表会を開催し、第2世代の『RADEON』グラフィックスプロセッサーユニット(GPU)を搭載した、パソコン用グラフィックスアクセラレーターカード『RADEON 8500』『ALL-IN-WONDER RADEON 8500』『RADEON 7500』、ワークステーション用グラフィックスアクセラレーターカード『FIRE GL 8800』、およびノートパソコン用GPU『MOBILITY RADEON 7500』を発表した。
RADEON 8500、ALL-IN-WONDER RADEON 8500、RADEON 7500の価格はすべてオープン。予想店頭価格は、RADEON 8500が3万円後半~4万円程度、ALL-IN-WONDER RADEON 8500が5万円程度、RADEON 7500が2万円前半としている。日本での発売時期はRADEON 8500/7500が10月中、ALL-IN-WONDER RADEON 8500はそれより遅くなるという。
ATIテクノロジーズジャパン(株)の黛登社長 |
これらは、本社であるカナダのATIテクノロジーズ社が8月に米国で発表していたもの。日本ではこの製品発表会で、ATIテクノロジーズ創設者で現会長兼CEOのK・Y・ホー(Kwok Yuen Ho)氏が発表する予定であったが、米国でのテロ事件の影響で来日できなくなった。発表会では、ATIテクノロジーズジャパン代表取締役社長の黛登氏が代わりに挨拶を行なった。
説明会と同じ14日に発売されたゲームキューブには、正面右下にATIのロゴが入っている |
発表会の挨拶の中で黛社長はホーCEOからのメッセージを代読した。そのメッセージでは、ATIは製品のターゲット市場をパソコンからコンシューマーアプライアンス市場に広げつつあり、多くのパートナー企業と組んで、セットトップボックスや携帯電話、PDAにATIのグラフィックス/ビデオテクノロジーを応用していくという、戦略が語られた。また同じ14日に発売となった任天堂のゲームキューブに触れ「ATIはゲームキューブのグラフィックスの設計を担当したことを誇りに思う」と、コンシューマーアプライアンス製品への取り組みの1つとして紹介した。
RADEON 8500
RADEON 8500は、RADEON 8500 GPUを採用した、同社のパソコン向けグラフィックスアクセラレーターカードの最上位機種。RADEON 8500 GPUは、0.15μmプロセス技術で製造され、6000万トランジスターと、従来のRADEON GPUの2倍の規模。1秒間に10億ピクセルの処理が可能で、ピーク時のメモリーバンド幅は毎秒12GBに達するとしている。
『RADEON 8500』 |
ATIのグラフィックスアクセラレーターチップの変遷 |
RADEON 8500には、レンダリング性能を25%向上するというメモリー帯域幅節減技術“HYPER II”、ピーク時に毎秒6250万トライアングルの処理能力を持つ“CHARISMA ENGINE”、4つのレンダリングパイプラインで毎秒2Gテクセルの処理能力を持つ3Dレンダリングエンジン“PIXEL TAPESTRY”などを搭載している。また、よりリアルなテクスチャーやライティング効果を得られるという“SMART SHADER”技術も搭載する。SMART SHADERは、Windows XPに搭載されるDirectX 8.1の機能である“Vertex Shader 1.0/1.1”“Pixel Shader 1.2/1.2/1.3/1.4”をサポートしている。
RADEON 8500によるデモ“レイチェル”写真に近い顔がなめらかに動いてしゃべる |
HYPERZ II技術による、メモリー帯域幅低減効果 |
RADEON 8500でのGPUコアクロックは250MHz、メモリーは275MHzのDDR DRAMを64MB搭載する。D-Sub15ピンによる外部ディスプレー出力のほか、DVI-Iインターフェース、S-VIDEO出力も装備する。
ATIは、ベンチマークテストによる、米NVIDIA社のGPU『GeForce3』との比較を示し、RADEON 8500がGeForce3を大きく上回る結果となったとした。
RADEON 8500とGeForce3搭載カードとのベンチマークテスト結果 |
RADEON 7500
RADEON 7500は、コアクロック270MHzで、230MHzのDDR DRAMをサポートする高速版RADEON GPUを搭載した、メインストリーム向けグラフィックスアクセラレーターカード。ビデオメモリーは64MB。コアクロックの向上とメモリー帯域幅が最大毎秒8.8GBになったことで、従来のRADEONと比べてパフォーマンスが60%向上したという。
『RADEON 7500』 |
毎秒4000万トライアングルの処理能力を持つCHARISMA ENGINE、1ピクセルあたり同時に3つのテクスチャーを処理できるPIXEL TAPESTRY、ビデオ画像の動き補償、逆離散コサイン変換(iDCT)、適応型インターレース解除機能などの“VIDEO IMMERSION”を搭載している。
RADEON 7500とGeForce2 Pro搭載カードとのベンチマークテスト結果 |
米NVIDIAの『GeForce2 Pro』搭載グラフィックスカードとのベンチマークテストによる比較が示され、GeForce2 Proより安く、より高い性能が得られるとアピールした。
MOBILITY RADEON 7500
MOBILITY RADEON 7500は、ノートパソコン用GPUで、電力管理機能“POWERPLAY”の搭載と、128bitのDDR DRAMをサポートしたことが大きな特徴。
MOBILITY RADEON 7500の節電技術 |
POWERPLAYは、ノートパソコンがAC電源動作かバッテリー動作かを検知して、AC電源動作時はコア電圧1.5V/コアクロック270MHz、バッテリー動作時はコア電圧1.2V/コアクロック66MHzで動作するという技術。クロックと電圧はアプリケーションの必要に応じて動的に変更することもできる。また、LCDのリフレッシュレートを下げて消費電力を抑える機能も持つ。
DVDビデオ再生において、GeForce2 GoよりもCPUの負荷が小さいという |
このほか毎秒4000万トライアングルの処理能力を持つCHARISMA ENGINE、1ピクセルあたり同時に3つのテクスチャーを処理できるPIXEL TAPESTRY、ビデオ画像の動き補償、逆離散コサイン変換(iDCT)、適応型インターレース解除機能などの“VIDEO IMMERSION”を搭載している。
MOBILITY RADEON 7500とGeForce2 Goとのベンチマークテスト結果 |
MOBILITY RADEON 7500は現在サンプル出荷中で、11~12月に本格量産を開始する予定。すでに国内メーカー3社から受注したという。
ALL-IN-WONDER RADEON 8500
ALL-IN-WONDER RADEON 8500はRADEON 8500と同じ、RADEON 8500 GPUを搭載したマルチメディアグラフィックスカード。TVチューナーを内蔵し、ビデオ入出力、IEEE1394ポート×2を備えている。メモリーは64MB(DDR DRAM)を搭載する。
FIRE GL 8800
ATIは4月に、米ソニックブルー社からワークステーション向けグラフィックスアクセラレーターカード部門を買収し、“FIRE GL”ブランドを手に入れた。FIRE GL 8800は、ATIの技術を投入した初のFIRE GLブランド製品。
『FIRE GL 8800』 |
FIRE GL 8800のGPU『RADEON 8800』は、RADEON 8500 GPUと同等の性能を持ち、さらに128MBまでのDDR DRAM、2チャンネルのDVI-I出力、OpenGLに特化したアクセラレーション機能を搭載している。
ATIではFIRE GL 8800を従来の『FIRE GL2』の後継と位置づけており、ミドルレンジのワークステーションに向けた、米NVIDIAの『Quadro2』への対抗製品であるとしている。上位機種である『FIRE GL4』の後継には、“R300”と呼ばれる開発中のコアを搭載した製品を予定しているという。
9月末に出荷予定だが、OEM向けのみの販売で、一般販売は行なわない。価格は明らかにしていない。
グラフィックスアクセラレーター分野では、GeForceの発表以降、ノートパソコン用からワークステーション用まで幅広くラインアップを揃えるなど、米NVIDIAの動きばかり目立っていた感もあったが、ここに来てATIが本格的に反抗を開始するようだ。パソコン向けに高性能の製品を出すのは当然として、ワークステーション向けにも新製品を出し、ゲームキューブにもATIのロゴが入る(米NVIDIAは『Xbox』にチップを供給している)など、全面対決といった様相となっている。もう1つ気になるのは、ホーCEOのメッセージにある、携帯電話やPDA向けも手がけるという言葉だ。こうした分野の製品がいつ頃登場するのか不明だが、携帯電話にもPDAにも、強力なグラフィックス能力が要求されつつある現状を考えると、ATIの参入は案外近いのかもしれない。