ニューヨークでは初のMACWORLD Expoが開幕した(*)。と、いっても展示会場が開くのはアップルコンピュータ社ワールドワイドプロダクトマーケティング担当副社長フィル・シラー氏による基調講演が終わった後からだ。基調講演が始まるのは日本時間8日午後10時から、そして展示場開場は午後11時からだ。
*:実際には一昨年、“MACWORLD NEW YORK”を開催する予定があったが中止となった。
■ワークショップ
今日は、本番前のイベントとして企業などでMacを使うマネージャーやプロのクリエイターたちを対象とした実践的なワークショップのみを行なった。
ワークショップの内容は、“Webマスター向けPhotoshop術”から“Dynamic
HTMLを使ったWebページデザイン”、“インターネット販売の実践方法”など多岐に渡っていたが、12あるセッションの中で唯一行列をつくっていたのが、“Windows
NT for Mac Managers(Macを使う管理者のためのWindows NT入門”というものだった。
部屋は人で埋まり立ち見もでていた(ワークショップによっては用意された席の1割も埋まっていないものもあった)。ちなみに参加者の約8割は出版関係、残り1割は教育関係であった。スティーブ・ジョブスは今から1年前のMACWORLD
Expo/BOSTONで、アップルが強いのはこの2つの分野であり、今後はこの市場に注力していくと語ったが、この言葉に嘘はなかったようだ。
会場となるJavits Centerは、数十時間後の展示場を控えて着々と準備が進んでいた。まず驚かされたのは会場の入り口の上に掲げられたiMacの巨大な垂れ幕だ(これがとにかく大きい)。
またバス乗り場から展示会場にのぼるエスカレーターの上には「You
are now entering a beige free zone(ここからはベージュ色のない空間)」という大きな垂れ幕がかかっていた。
開催数時間前となった今、会場の案内板、配られていたプログラム、各社の公式発表によって今回のExpoの全貌がおぼろげながらも見えてきた。
■iMac関連
『iMac』<米アップルコンピュータ社>
iMac用ディスクドライブ『Imation SuperDisk USB Drive』<米イメーション社>
(製品リリース:http://biz.yahoo.com/bw/980707/imation_1.html)
iMacは斬新な先進テクノロジーを取り入れる一方で、時代遅れの過去のテクノロジーの切り捨ても多々行なっている。なかでもとくに大きな関心が集まるのがフロッピーディスクドライブの撤廃だ。ただし、どうしてもiMacでフロッピーを使いたいという人向けにイメーション社がSuperDriveを提供する。これは120MBのディスク容量を持つSuperDisk用のドライブだが、通常のフロッピーの読み書きも可能だ。同社はこの製品を8月中旬から189ドルで販売する(以前の発表でiMacと同時リリースと言っていたことから、iMacの発表時期が8月中旬であることがうかがえる)。
iMac対応プリンター『DeskJet 670/690』<米ヒューレット・パッカード社>
(製品リリース:http://biz.yahoo.com/bw/980706/hewlett_pa_4.html)
iMac対応プリンター『MD-1300』<米エプソン社>
iMacには従来のシリアルポートがない。現在、既にUSB対応のジョイスティックやキーボード、スキャナーといった入力機器は多数出回っているが、USBに対応したプリンターはWindows機用のものが数モデル発表されているだけで、ほとんどなく、USBでプリンターの利用ができるかを心配する声が多かった。
ヒューレット・パッカードのDeskJet 670/690は、Windows機の接続に使うパラレルポートに特別なアダプター(69ドル)をとりつけることでiMacのUSBポートに接続して使うことができる。一方、エプソンのMD-1300は日本でも定評のあるMicro Dry方式を採用したプリンターで最初からUSBポートを内蔵している模様だ。価格も実勢価格299ドルとかなり低く抑えてある。
■その他見所
『Charts Pro』<カナダAdrenaline Software社>
『Myth II』<米Bungie Software社>
日本でも人気の3D戦略ゲーム、Mythだが、このEXPOではついにその続編が登場する模様だ。
『CorelDraw 8』<カナダCorel社>
プロ用イラスト描画ソフトとしてWindowsの世界では有名だったCorelDrawがついにPowerMacに移植される。同社Webページにも既に「Coming Soon」と書かれている。
『REALbasic』<米REAL Software社>
Visual Basicと互換性のある開発環境。ドラッグ&ドロップなどの簡単な操作で高度なアプリケーションをつくることができる。
『Blasts Online』<米Disney Online社>
子供向けのオンラインサービス。
■会場内には会社別の展示に加えて、以下の8つの特別セクションが設けられる
Content@Home
iMacを中心とした家庭向けのソフトの展示になると思われる。
Gaming Environment
全米Macゲームのチャンピオンシップ大会をとり行なう。
Digital Media Studio featuring QuickTime
QuickTimeを使ったデジタルビデオ編集向けの製品などを紹介すると思われる。
Education District
教育関連の展示を集めるものと思われる。
Extensions Workshop for Creative Content
Webブラウザー用のプラグインやそのためのコンテンツ作成ソフトの展示が中心となると思われる。Business Solutions Pavilion
Mac関連のビジネスソフトの展示を集めたものと思われる。Developer Central
Mac用の開発用ソフト関連の展示を集めたものになるはずだ。
MACWORLD Expo Digital Art Gallery
Macを使ったデジタルアート作品のギャラリーになるはずだ。
(取材・文 林 信行)
●今日のおまけ
アップルのロゴ入りグッズを発売するショップが登場。ただし、一部のファンの間で人気のあるiMac Tシャツの販売は行なわないそうだ。 |
明日の基調講演の中継に使うのか、それとも中継で参加するスティーブ・ジョブス暫定CEOとの交信用か、会場の前にはパラボラアンテナをのせた車が止まっていた。 |
グランドセントラルステーション地下や会場の近くの駐車場に貼られたiMacの広告、「Chic. Not Geek.」(Chicはシック--おしゃれ--、Geekはおたくの意味。おたくっぽいデザインではなくてシックなiMacのデザインを指しているのだろう) |
昨日はまだ地べたにおいてあったマイルス・デイビスの垂れ幕が今日はちゃんと高々と吊されていた。 |
同じくグランドセントラルステーションにあったSONY VAIOノートPC-505EXの広告。白ベースのアップル社の広告とは対照的な真っ黒な巨大広告。写真では見えにくいが、右側にはおそらく実寸の新ゴジラの足がうつっており、「Size Does Matter(大きさは重要)」と書かれている----そういえばEXPO会場では別の会社が同じコピーで広告を出していた。 |
ワークショップの登録手続きではNewtonが大活躍していた。登録後、バッジを持っていくとNewtonに接続された磁気リーダーで参加者の情報が自動的に登録される。 |
林信行氏Profile
MacPowerおよびMacPeople誌アドバイザー。両誌では主にアップル社の動向や新技術関連の記事、さらに人とコンピューター関係やインターフェースデザインに関する記事を手がける。
[詳細記事は、弊社Macintosh情報誌『MacPower 8月号』(7月18日発売)をご覧ください]