ペットボトルを枕にすると近未来の寝心地がする。無機質な部屋ですらない境目のない空間に君だけが見える。君はどこにもいけない。とても都合がいいが、どこか居心地が悪い。自分にも逃げ場がない。またとない機会なのに見つめ合っておしゃべりという気持ちにはなれない。せめて椅子くらいほしいなと思うと、えらく気取って座りにくい、人間工学に基づいているといいたげで、ただし芸術や消費者心理には基づいていない奇妙な椅子が現れた。
背もたれを前にすれば座りやすい気がして試してみたが、何か気恥ずかしいので組んだ手で顔を少し隠しながら、君の向かって左の肩の上を見つめた。何か話したような気がしたが恥ずかしいのでどんどん下を向いた。ついには一回転、でんぐりがえしをしたところで目が覚めた。
部屋に君はいなかった。洒落臭い椅子もなく、ゲーミングチェアのなりそこないと散らかった机だけがあった。有象無象を滑り落とし、PCを立ち上げ、なるべく安っぽいSFを探した。