彼氏がカッパだと気付いたのは、手のひらを見た時。指と指の間に水かきがあって、「そういうタイプの人なのかな」と思ったんだけど、よく考えればこの時に気付くべきだった。
彼は出会った時からずっと帽子をしてて、もしかしたらハゲてるのかな(私はハゲでも気にしないタイプです)と思ってたんだけど、お店とかに入っても全く取らないので、ちょっと気にしすぎなのではと思ってた。
それで初めて彼氏の部屋に行った時、神妙な顔でこう言われた。「実は、頭のことなんだけど」って。
私は「いいよ、言わなくて。どんなあなたでも好きだよ」って言ったら、彼、泣いちゃって。
「何もかもわかってるんだね…」とだけ彼は言って、帽子は取らなかった。
その日は二人で手巻き寿司を作ったんだけど、なぜかきゅうりが多い。「きゅうり好きなの?」と聞いたら、「そりゃあもちろん」との返事。この時も私は気付けなかった。
その夜。彼は電気を消して、ゴソゴソとし始めた。どうやら帽子をとったらしい。流石に寝る時は取るんだなと思って、頭をヨシヨシしてあげようとした。そしたら彼が「何するんだよ!」って怒って。私も急に怒られたから「何よ!頭触るくらいいいじゃない!」って声を荒げて、そのまま部屋を出ちゃった。今思えば、お皿は命と直結してるから触っちゃダメだったんだなって分かる。
その後彼からLINEで「もう別れよう」とメッセージが来た。別れのメッセージにショックを受けつつも、私が悪かったと反省して「ちゃんと話をさせて」とLINEを送った。
数日後、公園の池のほとりで彼と再会。彼は帽子を外して、初めてそのお皿を見せてくれた。私は「お皿も含めて全部好き」と言ったら、彼は「これからはきゅうりを切らさないでくれるなら許す」と言ってくれた。それ以来、我が家の冷蔵庫にはきゅうりが常備されている。