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2024-10-24

日本従業員はやる気が低い」という言説の誤り

ここ数年、「日本従業員はやる気が低い」という話をよく聞く。今日もまさに、以下のような記事が出ていた。

日本は働き手の「やる気」で世界最低...石破首相、「無気力ジャパン」をどうしますか?

こういう時に大体引き合いに出されるのは、アメリカのギャラップ社の調査である。「日本従業員では仕事への熱意などを示す従業員エンゲージメント率が非常に低い」というものだ(今回の記事では6%)。

これは非常に問題のある引用で、調査結果から日本従業員はやる気が低い」という結論など到底引き出せないと思っているのだが、定期的にこの調査をもとに「日本従業員はやる気が低い」と指摘する記事が出てくるため、解説をしたい。

先に結論を言うと

の3点である

ギャラップはどのようにエンゲージメント調査しているのか

そもそも、ギャラップ社はエンゲージメントなるものをどのようにして調べているのか。調査では、エンゲージメントを測定する12質問項目が用いられている。

従業員がその質問に回答し、回答が一定基準を上回ると、その従業員は「エンゲージメント状態にある」と判断する。

ではその質問項目とはどのようなものか。最近日本語版も公開されるようになったので以下に引用する。できればどんな質問項目が含まれていそうか予め想像してから読んでほしい。

●引用元記事はこちらを参照


どうだろうか。「やる気が低い」と主張しているからには「仕事では楽をしたい」「残業はしたくない」といった項目が並んでいると思ったのではないだろうか。

見ての通り、調査にはそんな項目はまったく含まれていない。むしろ、周囲からしっかりと役割を与えられ、意見尊重され、評価されているかと言った項目がほとんどである。この項目に日本従業員肯定的に回答しないからといって「日本従業員はやる気が低い」という結論を導くことは妥当だろうか。もちろん不適切である

しろこうした項目に肯定的に回答しないということは、従業員が「役割を与えられ、意見尊重され、評価されていると感じていない」ということであり、エンゲージメントの低さは、従業員のやる気の問題なのではなく、それを引き出す会社側の問題である解釈する方が妥当であるように思われる(もちろん、従業員側のやる気が低すぎて、会社の用意した環境に乗ってこないのだ、という反論もありえはするが、少なくとも質問で直接訪ねているのは「従業員がやる気があるか」ではなく、「従業員職場をどう受け止めているかである)。

若干うがった見方かもしれないが、日本生産性の低さの原因を、経営者から労働者側に責任転嫁するための都合の良い言説として、しばしば悪用されているのではないかとさえ思える。

補足

誤解の無いよう補足しておくが、ここでの主張は「ギャラップ調査では日本従業員がやる気が低いことの当否を論じることはできない」というものであり、実際にやる気があるのかないのかはまた別の話である

最近も以下のような報道で「日本人は想定より働かない」と言われてしまった通り、体感として従業員が働かないという場面も、時にはあるのだろう。

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しかしながら、ギャラップ調査根拠に、労働者ばかりを責める言説は不適切であるという認識は、もっと広まってほしいと思う。

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