Gateboxは未来のあるデバイスでいいなと思っている。「初音ミクと暮らしたい」まではいつもの日本の技術オタク御用達という感じだったけど、LINEに買収されたところでいっきに現実世界に受け入れやすいデバイスへの道が拓けてきたんじゃないかな。初音ミクや逢妻ヒカリに拒否感を示す人はたぶん多いだろうけど、コニーやブラウンを投影すれば日本人の大多数には拒否感なくとらえられるだろう(LINEとしては最近宣伝してるAIプラットフォーム Clova とやらを載せることを考えていても全く不思議ではない)。
が、あれをただの音声認識対応ホームロボット(あるいは音声コマンド端末)にしちゃうことは非常にもったいない気がしている。
あとちょっとのデバイス追加で全く違う世界が見える。VR用コミュニケーション端末としての世界だ。端的に言うと、360度カメラを付けて全周動画をライブストリーミング可能にする + それをVRゴーグルをかぶった誰かに届けることで通信端末にする。ただの360度カメラと異なるのは、アバターを映し出す機能があることだ。これでVR空間経由で接続した人のリアクションをリアルタイムに映し出すことができる。デバイス周囲の人に(VRゴーグルなしに)直接見える現実世界のアバターだ。新世代のテレイグジスタンスとも言える。
いまや道具として360度カメラはだいぶ普及してきたし、それをライブストリーミングとしてVRゴーグルに映し出すことも技術的にはほぼ障害はない。これをリモート会議などに応用しようというのはおそらく星の数ほどの人が考えるだろうが、いくつか問題点がある。
360度カメラ+VRゴーグル経由での「その空間」への人間のダイブはユーザにその空間に参加している感覚をもたらすが、その一方で、カメラ周囲の人に「誰がそのカメラにダイブしてきているのか」を認識させてくれない。カメラ周囲の人もVR/ARゴーグルをかぶることでカメラ自体にアバターを重ねる手もあるが、そうすると今度はカメラ経由の人の視界はゴーグルをかぶっている人で埋まることになる(VR/ARゴーグルの上にその装着者の顔あるいはアバターを重ねる手もあるが、これは現状あまりうまくいかないと思う)。
しかしGateboxのアバター表示ディスプレイがあれば、少なくともダイブしてきている人の簡易アバターを表示することはできる。ブラウンでも逢妻ヒカリでも他の何でもいいけど表示させることにより、ダイブ中の人が「どの方向を向いているか」を明確に示すことができる。これができるだけでその場の人と会話をしている感覚は大きく改善するだろう。
加えてダイブと併用するコントローラか何かで簡単なリアクションコマンドを送ることにより、アバターに頷かせたり、質問時の挙手をさせたり、疑問を持ったときに首をかしげさせたりできればいい。この程度のジェスチャーあるいはリアクションでも大きく会話に影響することはMMORPGなどをやっている人なら実感できるはずだと思う。
簡単に言うと、MMORPGにおける他ユーザのアバターを現実世界に召喚し、現実世界の映像と音声をその人に見せる、ということだ。その上、多対1のボイスチャットもできる。
これは様々な応用が期待できる。ごく簡単に思い付くだけでも以下のようなものがある。
なによりこれは、実際の技術的にはほぼ実現可能なところに来ているというのがよい。360度カメラもその映像をVRゴーグルで受け取ることも実現しているし、今となってはそう高価でもない。アバターを映し出すディスプレイ(およびその小型化)はGateboxの独自技術だ。自宅外での運用については通信量が気になるところだが、LINE MOBILE に専用のプランでも用意すればよい。
先にも書いたが、おそらくこれはテレイグジスタンスという名前で研究されている分野の応用だと思う。ただし遠隔ユーザの身体性がなく、そのかわりにディスプレイ投影のアバターを用いるところが少し異なる。(わかる人には、SAOマザーズ・ロザリオの紺野ユウキがアスナの肩に乗ったときのアレ、というと近いかもしれない。ただし肩に乗ることはできず、そのかわりにアバター投影が得られる。)
思い付く範囲の問題点というと、それでもひとセットの値段がまだそこそこする((Gateboxの360度カメラ付きバージョンで8〜12万くらい? もっと? とVRゴーグル、およびアプリケーションと通信費))、というところか。しかし、たとえば入院患者向けみたいな用途についてはリース会社を挟むとかすれば、だいぶ扱いやすい価格になるだろうと思う。
技術的な問題点については、たとえば現Gateboxの上に360度カメラを載せるとして、VR経由でダイブしている人の視座はそのカメラ位置になるだろうけど周囲の人はカメラ下にあるアバターを見るだろうから、視線が合わない、ということかな。これはカメラ映像の補正で、ダイブしている側の(仮想的な)視座をアバターに合わせてやる、とかできそうな気がする((素人なので本当にできるかどうかは知らん))。
Gatebox、すばらしい技術とアイデアだと思うんだけど、Clovaとかで素晴らしいAIを載せる方向で頑張るより、こっちのほうが未来があると思うんだよなあ。