今回は,ときどき見かける
「化石が出土した」
という表現をとりあげたいと思います。
この表現は,新聞,雑誌だけではなく,古生物学を専門とする方以外が書かれた一般書にも使用されています。
たしかに,「出」と「土」という感じからは,まさに化石のためにある用語のように思えます。
しかし,これはまちがいです。
「出土」は「考古学」の用語になります。
※「古生物学」と「考古学」のちがいについては2012年1月13日のブログをご覧ください。
いつものざっくり認識を披露,といきたいところですが,実はこの言葉が考古学用語であるということは,辞書を調べるだけで簡単にわかります。
こんな感じ↓
出土:古代の遺物などが土の中から出てくること(広辞苑)
遺物,遺跡が土の中から出てくること(デジタル大辞林)
つまり「出土」とは,ヒトが関与した何らかの人工物が出てくることをさします。
……と,いうことは,とくにヒトが出現する以前の化石に関して,この用語を用いるのは明らかに不適切となります。
では,化石に関してはどのような表現を使うのでしょうか?
化石は「産出する」という用語を使います。
上の「出土」と同じように,辞書で調べてみると次のように書かれています。
産出:産物が出ること(広辞苑)
※産物:その土地に産するもの(広辞苑)
物質がとれること(デジタル大辞林)
「産出」の場合,具体例としてあげられるものは石油です。「石油産出国」という言葉はよく使いますね。
化石は産出するものなので,その場所は「産地」といいます。
「世界有数の化石産地」とか「恐竜化石の産地」といった具合に使われます。
さて,これで「恐竜化石が出土する地層」なんて表現は減りますかね( ̄▽+ ̄*)
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こちらでは産地情報はわかる範囲ですが,各標本につけています(;^_^A
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