前回のつづきです。
●InDesignの文字スタイルのルール
※話がややこしくなるので、ここでは段落スタイルは無いものとします。
InDesignの文字スタイルは初期設定で「なし」が適用されます。手動で属性変更したものはそれがベース文字となります。
スタイル設定にはかなり多くの属性が設定できますが、設定部分以外の属性(空白部分)は無視され、ベース文字の属性がママイキになります。
これはかなり使い勝手が良く、例えば多種多様なフォントやサイズの文字に対してカラーを設定するような時、カラー設定をしたスタイルを1つ作るだけで済んでしまいます。
また、「基準スタイル」という概念があり、基準のスタイルを元に一部の属性だけを変更したバリエーションの作成も可能です。
図にするとこんな感じでしょうか。
●Illustratorの文字スタイルのルール
※こちらも話がややこしくなるので、段落スタイルは無いものとします。
一方、Illustratorには「スタイルなし」という概念はありません。
ドキュメント内の文字は全て文字スタイルが適用されます(初期設定では標準文字スタイル)。
そして、文字スタイルは1対1で標準文字スタイルを基準とします。InDesignのようにスタイルにスタイルを重ねるような基準スタイルはありません。基準をなしにすることもできません(ここ、ポイントです)。
スタイル項目の空白は無視ではなく、標準文字スタイルの設定を参照します。
一見するとInDesignと似ていますが、Illustratorでは標準文字スタイルの設定が入っているという意味になります(見えていないだけで、QuarkXPress 4のベーススタイルと同じだと思って良いでしょう)。
こちらも図にするとこんな感じでしょうか。
●段落スタイルを含めたスタイル属性の優先順位
先ほどは段落スタイルを除外しましたが、実際は段落スタイルも絡んできます。
InDesignとIllustratorはスタイル属性が重複した場合の優先順位が違います。
以下、検証してみました。
初期設定が適用されているテキストに、小塚明朝30Q青文字を手動で設定し、パネルをクリック(属性変更/オーバーライドは消去しない)で適用してみる。
Illustratorは標準文字スタイル 小塚ゴシックR 16.93Q K100
InDesignは基本段落スタイル 小塚明朝R 13Q K100
適用した段落スタイルは小塚ゴシックM 20Q C100Y100
文字スタイルは小塚ゴシックH 50Q M100
InDesignの結果
InDesignの優先順位は
1 文字スタイル
(1.5 あれば基準文字スタイル)
2 任意属性変更
3 段落スタイル
となり、手動で変更したものも文字スタイルに上書きされます(文字スタイルが一番強い)。設定の空白部分は「無視」となり、下のランクに設定がなければベース文字のママとなる。
※図の順番が間違っていたので修正しました。2011.6.3
Illustratorの結果
Illustratorの優先順位は
1 任意属性変更
2 文字スタイル
3 段落スタイル
4 標準文字スタイル
となり、手動で属性を変更した部分はスタイルで上書きできません(手動が一番強い)。
設定の空白部分は下のランクを参照します。
このルールにより、パネルクリックで適用された文字スタイルは手動設定イキとし、属性変更扱いとなります(InDesignとは明らかに違っているここもポイントです)。
ここまでくれば、下図のような段落スタイルがなく手動でフォントを変更していた場合、属性変更を消去したらどうなるかわかりますね。
↑この状態から属性変更を消去すれば当然…
前回記事で検証したケースは、見出しと本文に段落スタイルで書体級数などのベースを設定し、差分を文字スタイルで設定して属性変更を消去して使用するというのが正しい使い方かもしれません。
逆に言えば、Illustratorでは手動で設定した文字に対してスタイルを適用するのは好ましくない作業方法といえます。
Illustratorにおけるスタイルの項目は、属性変更を消去したときのストッパーの役割も担っているようです。
●標準文字スタイルを変更するのは危険
標準文字スタイルの設定は使わないので標準文字スタイルの設定を変更した方が使い勝手が良いと考えるかもしれません。
しかし、標準文字スタイルはドキュメントの設定になるうえ、名称の変更ができません。このため別ドキュメントにコピペなどで持って行った場合、参照している設定が変わります。特に入出稿データ間で設定が違うとトラブルの原因になる可能性があります。
ただし、これはQuarkXPressやInDesignのように、ペースト後直ちに変更されるわけではなく、一旦属性変更扱いになるので属性変更を消去しなければ化けることはないようです。しかし、これは思いもよらないトラブルを起こす可能性を秘めているわけです。知らずに使うと危険なので注意しましょう。
ふ~、ちかれた。。。
と、いつものごとく、検証から結論を導いていますので間違いなどありましたらご指摘下さい。