⚠WARNING⚠
ウェアウルフパックに登場する特殊シム、
グレッグが登場しています。
勝手な設定を付けているので、
デフォシム弄りが苦手な方や彼のファンは
ご自衛お願い申し上げます。

「やーい、男女!男女!」
「女子に混じって人形遊びやお絵描きばっかりして恥ずかしくないの〜?男らしくな〜い」

ノーマン「ううぅ……」


ボクは昔っから男らしくないってからかわれてきて……泣いて帰ってきたらお父さんやお母さんから「男なんだから泣くな、もっと男らしくなれ」と叱られてきた。

でも男らしさって何だろう……。
他の子のように“オレ”とか“だぜ”とか言えばいいのか、泥だらけになって遊び回ればいいのか……。
どれもしっくり来ないし……ボクがボクじゃなくなっちゃうみたいだ……。


皆がボクのことをからかうし、やることなすこと全部バカにするし、友達なんていない……でもそんなボクでも唯一自信があることがあったんだ。
それが絵を描くこと。

ティーンになる前、学校の先生から褒められて、高校に進学したらクラブに入ったらと薦められて美術クラブに入って沢山勉強したんだ。



絵を描くのは単純に好きだったし楽しかった。


しかも完成した絵を見たら、皆がスゴイって褒めてくれる!
今まで誰もボクのことなんて見てくれなかったのに、皆が近づいてきてくれて見てくれて……だから自信がついた。
絵画スキルだけが誇れる能力だった。
ずっとバカにされてきたけど、ようやく認めてもらえた気がした。


でも、いつの間にかボクの絵はあまり評価されなくなってきて……他のシムの絵ばかり褒められて……。


どうしよう、ボクにはこれしかないのに……絵でしか評価されないのに……。


男らしくもない、友達も彼女もいない、絵しか取り柄がないのに……これすらダメ…………どうしてボクは良いところないんだろう…………これじゃあ誰にも見てもらえなくなっちゃう……。

 

木曜日 ブライトチェスター大学寮



ヤテン「………………」
キバ(黙々と学期レポートを作成してんな……特に話題もないし、黙っとくか……暇だけど……)


キバ(……ノーマンのスキル、やっぱりアイツらから奪い返すしかないか……でも最近ヤテンの様子もおかしいし、2対1は流石に危ねえし……やっぱり……スキルは、諦めるしか……)



ノーマン「……今回のコンクール……本当に、最後だったんだ。最後の賭けだったんだ。ボクは絵を描くのが大好きさ、でも今までずっとずっと誰にも評価されなくて……気にしないように、と思ってても周りの人が評価されているのを見たら、悲しいし悔しいし、見向きもされなくて報われないのが……虚しくて…………だから、今回のコンクールで……一次審査すらも通らないんだったら……絵の道は諦めようって思ってたんだ」



キバ(……最後のチャンスかぁ……はぁ……俺様だって何とかしたいけど……でもなぁ……)


ヤテン「…………シャアアァ……」
キバ『おおおいヤテン!!何唸ってんだ、ルームメイト見てんぞ!!』


ヤテン(はっ……また無意識のうちに……!視線が痛い……)
キバ『はぁ……気をつけろよ、常に気を張り詰めてろ!』
ヤテン(うむ……)

キバ(ヤテンの様子……いよいよヤバいなぁ……)





今日もいつものように講義へ向かい……。


いつものように講義を終えて帰宅。


そして学期レポートの編集へ……。



楓「あら、貴方ラウンジでよく見かけるシムね。こんにちは」
ヤテン「あぁ、こんにちは……寮生ではないな。遊びに来たのかね」

楓「ええ、遊びにおいでと招かれたの。そういえば貴方ノーマンくんと仲良かったわね。彼を見てない?借りていた教科書を返そうと思ったのだけど連絡もつかないし、講義にも出てないの」
ヤテン「え…………ええと、すまない。ノーマンのことは見かけていないのだ……」

楓「そう……じゃあ、会ったら私が探していたと伝えてくれる?」
ヤテン「了解した」


ヤテン(……連絡がつかないだけでなく、講義にも出ていない……?)


ヤテン(ノーマンの番号は……これだ)

《おかけになった電話は、電源が入っていないか電波の届かない場所にいる為かかりません》

ヤテン(……電話に出ない……ソーシャルバニーのDMにも既読がつかない……)


キバ『……ノーマンに何かあったのか……?』
ヤテン「……胸騒ぎがするな……」

ピリリ ピリリ


キバ『おっ、電話鳴ってるぞ!ノーマンか!?』
ヤテン「見てみよう!」


ヤテン「…………これは…………」




お前がいつまでも来ないからピンク頭は預かった。
流石に命が懸かってるとなりゃあ、お前も動くよなぁ?
我が身可愛さにダチを見すてたりしないよなぁ?
今夜19時、ムーンウッドミルの町外れに来い……1人でな。
ハンターや仲間のヴァンパイアに知らせたら
ピンク頭の命は無いと思え!
コルヌ&デンス



ヤテン「こ、これは……誘拐!?
キバ『スキルじゃ動かなかったから、ノーマンを人質にしたってことか!!クソ、ハンターが護衛してたんじゃなかったのかよ!!アイツら何やってんだ!!』

ヤテン「……私が優柔不断だったばかりに……ノーマンの身に危険が……」
キバ『お、お前のせいじゃねえだろ!俺様が……止めたから……』


ヤテン「……奴ら、何故それほどまでにお前に固執しているのだ?キングが探しているとは言っていたが……」
キバ『そんなもんこっちが聞きたいわ!だがヤバいな……今度はスキルじゃなくて命……流石に命は取り返しがつかない……』

ヤテン「キバ…………危険は承知のうえだ……私が死ねばお前も死ぬとはわかっている……だが……ノーマンを見捨てることは……どうしても出来ない……」
キバ『…………そんなの俺様だって同じだ……お前のダチを、見捨てられるかよ……俺様がお前の立場でも助けに行きたいって言ったわ……』

キバ(ノーマンとヤテンを天秤にかけて、どちらかを捨てることなんて俺様は出来ねぇ……助けに行かなかったらヤテンの体は無事でも心に深い傷は負うし、ノーマンは確実に死ぬ。助けに行けば……両方助けられる可能性がある。ヤテンの力と、理性にかけるしかないな……)


キバ『……こうなったのも、元はと言えば俺様のせいだ。助けに行くぞ、ヤテン。腹ぁ括れよ』
ヤテン「ああ……!」

 


ムーンウッドミル



ヤテン「確か、奴らは森の奥に来いと言っていたな……この橋を渡れば良いのだろうか」
キバ『多分そうだな……しかし、ムーンウッドミルか……』
ヤテン「どうした、キバ」


キバ『……ムーンウッドミルの森ってさ……出るって噂なんだわ』
ヤテン「出る……?なんだキバ、ヴァンパイアだというのにゴーストが怖いのかね」

キバ『ちげーよ!シム喰いウェアウルフだよ!!』
ヤテン「シム喰いウェアウルフ……!?」


ヤテン「い、今の私の身体はヴァンパイアなのだから……だ、大丈夫……なのだろう?」
キバ『いや、ウルフにとってシムだろうがヴァンパイアだろうが肉には変わりねえだろ。無駄な戦闘は避けたいし、注意して進めよ?』

ヤテン「了解した……」
キバ『てか、やっぱり俺様に変われよ。お前じゃ危なっかしいわ』

ヤテン「それもそうだな……よし、では……すまないが頼む……」
キバ『まっ、俺様がちゃちゃっと終わらせてやんよ!!』


キング「……………………」


キング「キバ……お前は邪魔だ……眠れ」


キバ『あ…………れ……………………』
ヤテン「……キバ?何故変わらない?」

キバ『……………………………』
ヤテン「キバ、どうかしたのか?返事をしろ」


キング「悪いがキバには眠ってもらった」
ヤテン「む……?」


ヤテン(目が赤い……ヴァンパイアか!)


キング「お初にお目にかかる、新月の子よ。私はファング・クリムゾン、以後お見知りおきを」
ヤテン「……新月の子?」

キング「おや?新月の子の伝承は存じていないのかね?」
ヤテン(……そういえばノクスが以前に話していたな……新月の日に生まれたヴァンパイアは極稀に強い力を持つと……だがキバはあれはおとぎ話だと……)


ヤテン「……友人から聞いたことはあるが……私とは無関係だ。私はヴァンパイアではない」
キング「ふっ……本当にキバから何も教えてもらっていないのだな。自分のことだというのに気の毒に」


ヤテン「キバ……?そうだ、キバ!眠ってもらったと言ったな、何故キバを眠らせた!友好的に見えたが、もしやキングの配下……」
キング「キングの配下?私が……その噂のキングと言ったらどうする?」

ヤテン「…………え?」
キング「当たり前のようにお前の中にキバがいるとわかっていた時点で、只者でないと気づきたまえ」
ヤテン「あ……!」


ヤテン(キングが現れるなど聞いていないぞ……!私には戦いの心得などないし、キバは眠っている……ここは一旦逃げるしか……いや、しかしノーマンを助けに行かねば……!)


キング「そう怯えるな新月の子よ、私はお前を殺しに来た訳ではない……ただ……お前の力を確かめたいだけだ」
ヤテン「力を確かめる……?な、何故私なのだ。そもそもお前が探していたのはキバでは……!」

キング「キバ?キバなどどうでもいい……私が本当に探していたのは……キバではなく、キバが憑いているお前だ」
ヤテン「は……」


キング「……さて、お喋りは終わりだ。お前も先を急ぐ身だろう?手早く終わらせようではないか!!」
ヤテン「うっ……」

ヤテン(逃げられそうにない……や、やるしかない……!キバではなく私が……!!)


ヤテン(キバの戦いを間近で見てきたのだ……見様見真似でなんとか……こう……飛んで…………うっ、本当に浮いてしまった。この浮遊感に慣れない……!)
キング「………………………」


キング(キバが眠っているのに目の色が変わった……大分……熟してきているな)


キング(しかしまだだ、まだ足りない!)



ヤテン(うぅ、無理だ!やはり見様見真似ではどうにも……)



ヤテン「ぐぇ……」
キング「……これがお前の力の全てじゃない筈だ」

ヤテン「いや……全力で、抵抗、したのだが……」
キング「違うな。お前はキバのせいで全力を出せないのだ」
ヤテン「はぁ……?」


キング「お前は中にいるキバの魂に遠慮してしまっている。強すぎる力はキバが耐えられるものではない、本来なら力に潰されて消え失せているところだが……お前は無意識のうちにキバを殺さないよう力を抑えている。だから全力を出せないのだ。しかし奴の言う通りだったか…………面倒だがあのプランで行くか……」
ヤテン「……お前が、言っていることが、まったく理解出来ぬ……私は ごく普通の……平凡なシムだというのに……何だというのだ一体……」


キング「気になるならキバに聞けば良い……どうせ答えてはくれないだろうがな」
ヤテン「…………」


キング「さて、では私の用は終わった。これにて失礼させてもらうとしよう……妻がうるさいのでな」
ヤテン「……私や、キバを、殺しに来たわけではないのか……」

キング「言っただろう、殺しに来た訳ではないと。そもそも穏健派だの過激派だの私はどうだっていい……ヴァンパイアの世界征服にこだわっているのは妻だからな」
ヤテン「妻……」


キング「では、さらばだ」
ヤテン「あ……」


ヤテン「…………行ってしまったか……」
キバ『……ふが?あれ、俺様寝てたのか?』

ヤテン「キバ……」
キバ『あっ、ヤテン!俺様寝ちまってたよな!?何があったんだ!?』
ヤテン「………………………」


ヤテン「……わからん。私も眠っていて、今起きたばかりだからな」
キバ『そうか……奴らが仕掛けた罠かもしんねーな。気を付けていかねえと……よし、変わるぞ!』
ヤテン「うむ……」


ヤテン(今はノーマンのことが最優先だ……それにさっきのはキングの戯言かもしれん……考えないようにするのだ!!)

 

キバ「だいぶ奥まで来たけど、まだ続くのか?」
ヤテン『む……キバ、止まれ。そこに看板があるぞ』
キバ「ほう!」


キバ「えーっと、なになに?シム喰いウェアウルフ注意……」
ヤテン『さ……さっき話していた奴か!ま、まずいのではないか?』
キバ「だ、大丈夫だろ。ただの注意書きだし……こんなタイミング良く現れるわけが」


グルルルル……」
キバ「うっ……」
ヤテン『嫌な予感しかしないのだが』


ガオオオーーン!!
キバ「でたあああああぁぁぁ!!


グルルルル!!
キバ「クソッ、戦闘は避けようと言った矢先にコレかよ!!やるっきゃねえ!!」



キバ「オラ、やめろ!!噛みつくんじゃねえ!!ヤテンの肉なんて脂がなくて骨と皮しかないから美味くねえぞ!!」
ヤテン『おい』



「キューン……」
キバ「はぁはぁ……これに懲りたら、二度とシムを食おうとか考えるんじゃねえぞ!」


「クーン、クーン!!」
キバ「まったく、このキバ様を食おうだなんてとんでもねえぜ」


コルヌ「ふーん……あのウルフを楽々退けるとか流石だな」
キバ「あっ……」


キバ「てめぇ、ここで会ったが百年目!ノーマンは返してもらうぞ!!」
コルヌ「随分イキるじゃんかキバ樣よ……ウルフに勝ったのは新月の子のお陰だろ!!

キバ「げっ……!」
ヤテン(……また、新月の子……?)