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「お金は払うより、もらうほうが楽しい」!? 価値を生み出せる自分を誇りに思う京都マインド

 「お金は払うより、もらうほうが楽しい」!? 価値を生み出せる自分を誇りに思う京都マインド
写真/野口さとこ
Saya
Saya
2024-12-31

女性の人生の中で心身が大きく変化する”更年期”…何でも、日本女性がもっとも落ち込みやすいのは49歳だという統計もあるとか。でも、わたしは、50歳前後の複雑なはずの時期、自分の年齢をまったく気にせず、元気に過ごしてしまいました。むしろ京都に移住する前の40代半ばのほうがつらかった気がします。うまく切り抜けられたのは、京都に住んだおかげだったのかもしれない…と50代に入って数年経った今、すごく思うのです。この連載では、そんなわたしが40代、京都で見つけた「幸せの秘密」を探っていきたいと思います。

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突然ですが、みなさんにとって、仕事ってどんなものですか。

わたしは東京郊外で生まれ、ずっと好きな雑誌編集や書籍の出版にまつわる仕事をしてきました。星占いの書き手になっても、それは変わらず。でも、東京ではある程度のキャリアがあれば、仕事はあって当たり前のところがあったので、「仕事はおもしろいけれども、たくさんありすぎても大変なもの」と思い込んでいた節がありました。でも、京都では、「忙しい」とか「大変だ」とか東京のノリでぼやくと、「いいなあ」と言われることが多いのです。「そう言えば、仕事の文句を言うのは、東京では共通言語だったけれど、京都では文句を言う人にあまり出会わないなあ。仕事がたくさんあるのは、もしかして、京都ではよきことなのかな」と気づいたのは、移住後、随分経ってからでした。

そんなある日、十数年前、東京でよく仕事をしていた方にお会いする機会がありました。還暦くらいの年齢の方なので、数年前に早期リタイアされているとのこと。時たま趣味のような仕事をしたり、海外旅行に出たり、現役時代の貯金に加えて投資も行い、悠々自適のご様子でした。でも、その方に、「まだ働いているの?」と言われたときに、猛烈な違和感が襲ってきたのですね。バブル世代とはそもそも収入や年金額なども違い、わたしたちロストジェネレーションの早期リタイアはリスクでしかない。現在、53歳のわたしとしては、できるだけ長く細く、現役で、好きな仕事を楽しみながら続けていこうというように心に決めていたのです。また、そうしたバックグラウンドやジェネレーションのギャップはともかくとして、「好きな仕事をしていたはずの彼女でさえ、仕事はそこまで嫌なもので、早期リタイアがよいという価値観なのか」という驚きもありました。わたしにとって、文章を書いたりセッションしたりという仕事はすでに息を吸うくらい、自然なことになっていて、年を取ったからやめるというものでもなかったからです。

野口さとこ

そのときの衝撃を、京都・御所南のアロマセラピーのサロン、「シノア」さんでしたところ、「全然、共感できませんねえ。わたしもバブル世代ですけど、お金ってね、遣うより、もらうほうが楽しいものなんですよ」という明快な答えが返ってきました。わたしが心から信頼するゴッドハンド、出野倫子さんは京都生まれ。大学職員として長く働いたあと、51歳で「シノア」をオープンさせ、2025年で10年になるそう。

「わたしは、学ぶことと働くことこそ、人間の根源的な喜びやって思っているんです。お金に働いてもらって、その間、自分が消費していても虚しいなって思う。働いているから出会う人がいて、知らんかった世界とか見させてもらい、手にとらんかった本とかも手に取らせてもろて、学ぶことばっかりです。それは、消費する側でいると、当たりはいいですよ。みんなお買い物していれば、ちやほやしてくれる。でも、10万のバッグを買うより、生み出した何かに10万払ってくださるほうがワクワクします。すばらしいものやから、この値段をつけてくださっているわけやから。生み出した価値をお客さまが認めてくださって、大切なお金を払ってくださる。これ以上の喜びはないです。消費する喜びって、浅くて一過性で、次に欲しいものが必ず出てくる。より深くて楽しいのは、働いて、学んで、新しい考えに出合うこと。働くことにはワクワクが詰まっているって思てます」

出野さんのお話を聞いて、このマインドこそが「京都クオリティ」の源なのだと深く納得するわたしがいました。京都では「遊んでいるより、働いているほうがいい」という方にそれまでもよく出会っていましたが、「価値を生み出せる自分」への誇りがあったのだなと。前述の強烈な違和感は、この10年で、わたしが京都になじんできた証なのかもしれません。

野口さとこ

「ホームレスのための『ビッグイシュー』という雑誌を定期購読していたとき、ガンジーの言葉がクリスマスカードで届いたんです。そこには、〝見たいと思う世界の変化にあなた自身がなりなさい〟とありました。それができるのは、仕事を通じて。仕事は生活のなかの当たり前のもの。特別なことではないですが、仕事を通じて、世の中を1ミリでもよくできたら。いろいろなお客さまをお迎えしていると、順風満帆に見えても、誰もがそれぞれのつらさやゆがみを抱えて生きておられるように感じます。身体という厄介なものを維持して暮らしていくだけでも、なかなかに大変です。いつも掌で、その方のお身体に語りかけるつもりで施術しています」

これもまた深く共感するところです。わたしも、実は、「自分のため」だけに書いているわけではない。日々、せっせとパソコンに向かっているのは、自分の拙い文章でも、社会を支えるひとりひとりの方の心に届くかもしれないという思いがあるからなのです。2025年の星まわりは激しいものですが、みなさん、どうかよいお年をお迎えくださいね。そして、働く喜びも、自分自身も大切にしながら、素敵な一年にいたしましょう。

シノア https://shinoa-aroma.net/

文/Saya

東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『わたしの風に乗る目覚めのレッスン〜風の時代のレジリエンス』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram     @sayastrology

写真/野口さとこ

北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
Instagram  @satoko.nog

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アストロロジー・ライター。東京出身、京都在住。早稲田大学卒業後、ライフスタイルの編集者を経て、アストロロジー・ライターに。「エル・デジタル」、「LEEweb」の星占いも好評。現在は、京都で夫と二人で暮らし、星を読み、畑を耕す傍ら、茶道のお稽古と着物遊びにいそしむ日々。新刊、『占星術ブックガイド〜星の道の歩き方、アストロロジャーとの対話集〜』(5500円/説話社)が好評発売中。



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