あなたにとっての「本当の幸せ」はどこにある?人間関係まで影響する「自分軸」のたしかめ方
たくさん悩んで、人と話して、きれいな言葉で励まされても、ちっとも心がラクにならないあなたへ。3万人を指導してきた話題の整体指導士・いちい葉子さんが、自分でできる全く新しい「心の整え方」について解説。著書『しんどくなったら、心より先に体を整えよう』(アスコム)から、一部の内容を抜粋してご紹介します。
自分軸ができ、変化にしなやかに対応できるようになる。そんなふうに自分の心が変わっていくことは、周りの人との関係性にも影響を及ぼしていくでしょう。たとえば、自己主張がはっきりとできるようになったり、コミュニケーションの取り方が変わったり、他人を尊重できるようになったり。つまり、体のセルフケアをしていくことは、巡り巡って、他者との関わり方にまで変化をもたらしていくのです。そんな「人との関わり方」や「人間関係」をテーマにお話ししていきたいと思います。
佰食屋(ひゃくしょくや)という飲食店をご存知でしょうか?「1日に100食しか販売しない」と決めて運営されている飲食店で、それに伴ういろいろな働き方改革が注目を集めたお店です。100食限定ということは、売り上げにも上限が出てしまうということ。つまり、一般の飲食店で目標とされる売り上げ増や店舗拡大といったことは目指していないんです。そのかわり、早く売り切れたら、早く帰れるようにすることで、従業員のがんばりに応えるスタイルをとっているといいます。実際、佰食屋では遅くとも15時には最後のお客さんが帰り、17時頃には従業員が帰宅を始めるのが当たり前の光景だそう。その背景には、経営者の中村朱美(なかむら あけみ)さんの「仕事だけが人生じゃない」「自分にとって働きたい会社の条件は、毎日、家族みんなで揃って晩ごはんを食べられること」という信念があります。
この佰食屋の取り組みを知ったことは、私にとって大きなターニングポイントとなりました。当時、私はちょうど整体の仕事が軌道に乗り始めた時期でした。生徒のみなさんに求めてもらえることがうれしい。みなさんの期待に応えたい。まくら体操や、そのコミュニティが広がっていくのが楽しい。売り上げが大きくなり、事業成功の道を登り詰めていく快感もありました。その一方で、私はまた自分を見失っていたのです。寝る間もないほど働き詰めの毎日。心身共に疲労困憊の状態で、「どこまでこの生活をつづけるんだろう?」「私はなんのためにこの仕事をしてるんだっけ?」という迷いや不安が生まれていました。もともとは、自分がやりたくて始めた整体の仕事だったはずなのに、いつの間にか、生徒さんからの評価や事業の規模、売り上げといった外部のモノサシ(他人軸)で自分を測るクセがついてしまっていたのです。
そんなときに、自分たちにとっての「本当の幸せ」に目を向けている佰食屋の存在を知って、感銘を受けました。常識や周囲の声に惑わされず、自分軸をたしかに持っている方たちだ、と。今の社会では、「お金を稼いでいること」や「賢いこと」「一流企業の肩書きがあること」「容姿が美しいこと」などが「価値がある」ことだとされていますよね。それを手にした人はみんなから賞賛されるし、多くの人が自分もそんな「成功」を摑みたいと思っているはずです。けれど、それってぜんぶ「他人軸」なんです。お金を追い求めるのも、美しさを追求するのも、だれかからの評価を欲しがっているということ。
それで、本当に「自分の」心が満たされるんでしょうか?しかも、どれだけお金持ちになっても、世界にはもっと上のお金持ちがいます。どれだけ美しくなっても、もっとキレイな人はごまんといるはず。ということは、どこまでいってもレースの「終わり」はありません。一度レースに参加したら、ムリをしてでもずっと、競争しつづけることになるわけです。同時にこれは、常に「負けたらどうしよう」「これを失ったらどうしよう」といった不安がつきまとうことも意味します。そのうち、かつての私のように「なんのためにこんなにがんばってるんだっけ?」という迷いや、底なしの疲れにぶち当たることもあるでしょう。他人軸で生きることは、言いかえれば「自分にとっての幸せ」を見失っている状態です。だからずっと不安で、ずっとがんばりつづけなくちゃいけない。ずっと「しんどい」状態がつづく、と言ってもかまいません。逆に言えば、本当の意味で「しんどさ」から解放されて、心からの幸せをつかむには、「自分軸」を持ち、それに従って生きることが必要不可欠なんです。
体はとても正直です。他人の目や世間の声など一切気にせず、「今の自分に必要なこと」を訴えかけてきてくれます。だからこそ、体に向き合い、体を見つめることが「自分にとって」という軸をつくっていくことにつながるのです。そうして浮かび上がるのは、佰食屋のように「家族揃って晩ごはんを食べたい」という願いかもしれませんし、私のように「数字に表れない幸せがある」という気づきかもしれません。ぜひみなさんも、体の声に耳を傾けて、すこしずつ「自分軸」をたしかめていってほしいと思います。
この本の著者/いちい 葉子(いちい ようこ)さん
整体指導士。からだデザイン研究所主宰。1968年生まれ、神戸出身。大手化粧品会社で働いた後、母親のがんや自身の不調をきっかけに整体と出会い、心身の回復を経験。その後、整体理論を学び「まくら体操セラピー」を開発し、代々木上原に教室を開設。そのメソッドは口コミで広がり、国内外から多くの受講者が訪れる人気教室に成長。10年以上新規レッスンの予約が2か月待ちという状況が続いており、テレビ番組でも紹介されるなど話題に。朗らかな人柄と寄り添う姿勢が多くの人に勇気を与えている。
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ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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