マッシュアップの開発環境が広がれば,アプリケーション開発の敷居は劇的に下がる。結果として,ユーザーと開発者の壁はほとんどなくなり,ユーザーが欲しいと考えるアプリケーションやサービスがすぐに手に入るようになるだろう。
象徴的なのが,ユーザーとアプリケーション開発者が参加するコミュニティ・サービス「SlideME」だ。ここでは,開発者に対してサーバーにアプリケーションをアップロードできる仕組みを提供する一方,ユーザーに対してはAndroid端末で直接アプリケーションを検索,ダウンロード/インストール,評価できるアプリケーション「SlideME Application Manager」(SAM)を提供する。開発者が公開したアプリケーションに対し,ユーザーが評価やコメントを与え,それを基に開発者は改良を加える。
日本でもAndroidについて情報を発信しているブロガー同士やボランティアによる勉強会を通して,Androidを核としたコミュニティの輪が着実に広がりつつある(図1)。面白いのは,別々のコミュニティを形成してきたWebアプリケーション開発者,コンテンツ開発者,組み込み技術者が一緒になって議論を始めたことだ。
開発者の交流が“新発想”を生む
こうした複数のコミュニティの交流が思わぬ効果を生んでいる。「元々携帯電話に関心があって参加したメンバーが,携帯電話以外での利用を考えるようになった」(安生氏)というのだ。
Androidに目を付けたWebアプリケーション開発者は,当初,携帯電話以外の機器は自分たちの範ちゅう外だと考えていた。インターネットへの接続性が乏しい上,ソフトウエアの開発には個々のハードウエアの特性を深く理解した“職人技”が必要だったからだ。
一方,組み込み技術者がAndroidに関心を持ったのは,自分たちの仕事を楽にしてくれそうだったからだ。自動販売機やルーターなどの組み込み機器向けのソフトウエアを作るときには,「OS,ユーザー・インタフェース,ネットワーク,日本語環境のミドルウエアを,開発のたびにすべて自ら用意するのが一般的」(水野氏)だった。Androidはこれを肩代わりしてくれる(図2)。
Androidを媒介とし両者が出会うことで,化学反応が起こった。「今,Androidに関心のある人が集まると,どのデバイスに組み込めば面白いかという話になる」(安生氏)。最近話題に上がったのがカラオケのリモコンだという。インターネットに接続されAndroidが載っていれば,歌詞の検索やイントロ部分の試聴,ネットワーク経由でのデュエット,SNSとの連携など多くのサービスが考えられそうだ。
このほか,「家庭にある体重計や体温計,万歩計,キッチン・スケーラーなど画面のついているものならAndroidを載せられる」(木南氏),「企業内にあるIP電話機,コピー機,ルーターなどにAndroidを搭載して連携させるサービスに可能性を感じる」(豆蔵ES事業部の窪田康大コンサルタント)と次々とアイデアが飛び出す。
日本ではAndroidがまず花開くのは,携帯電話以外の組み込み機器かもしれない。