【問題】
 あなたは,ある企業のシステム管理者として勤務している。ネットワークは,Active Directoryで管理され,Windows Server 2008を実行するサーバーを利用している。この企業のオフィスは,本社と支社,そしていくつかの小さな拠点に置かれている。

 ファイル・サーバーは本社と支社に分散して置かれているが,ユーザーから,自分と異なる場所にあるファイル・サーバー上のリソースにアクセスしたり,保存したりするときの待ち時間が長くて業務に支障が出てしまうという意見が寄せられている。

 それを受けて,ファイル・サーバーの配置計画を新たに立てることになった。この計画では,ファイル・サーバーの可用性向上を図ると同時に,ユーザーからのアクセスを高速化するには,どのようにするのが最も適切か。

A. ファイル・サーバーを統合して,ユーザーが単一のパスでアクセスできるようにする。
B. ドメインDFS(分散ファイルシステム)を導入し,ユーザーが単一のパスでアクセスできると同時にファイル・サーバー間の複製がおこなわれるようにする。
C. ファイル・サーバーに対してボリューム・シャドウコピーを有効にし,ユーザーがデータの復旧を簡単にできるようにする。
D. グループ・ポリシーのログオン・スクリプトを利用し,共有フォルダに対して自動的にドライブがマップされるようにする。

正解:B

【解説】
 ファイル・サーバーの配置と保守は,システム管理者にとって重要な作業の1つである。企業業務の内容によっては,ビジネスの動向を決めることもあるであろう。しかし,このシナリオのようにネットワークが物理的に分かれている場合,拠点間のネットワーク接続や帯域,エンジニア配置の有無によって,アクセス時間や可用性に問題が出ることも多い。

 Windows Serverには,DFS(分散ファイル・システム)の機能がある。DFSでは,物理的に複数のファイル・サーバーに置かれている共有フォルダを,ひとつの階層構造にまとめることができる。これによって,ユーザーは共有フォルダが置かれているファイル・サーバーをいちいち覚えなくても,DFSの論理パスが置かれているサーバーのみ記憶できればアクセスできる。

 また,ファイル・サーバーの置換が発生した場合も,ショートカットを変更する必要がないので便利である。この場合のパスは,「\\<DFSの論理パスが置かれているサーバー名>\DFSルート名」のように記述する。例えば,「\\FileServer01\Share」のようになる。

 Windows Server 2003以降のバージョンには,「ドメインDFS」という機能がある。DFSの論理パスは,サーバーではなく,ドメインのFQDN(完全修飾識別名)を使って指定する。この場合のパスは,「\\<ドメインのFQDN>\DFSルート名」のように記述する。例えば,「Globalknolwedge.local」というドメインであれば,「\\Globalknowledge.local\Share」のようになる。

 ドメインDFSでは,DFS名前空間をActive Directoryに保存するので,ドメイン・コントローラの複製によって論理パスの可用性が確保できるだけでなく,格納されているデータの複製機能も提供する。複数の複製を用意しておけば,データの可用性が確保できるほか,ユーザーは近いところにある物理サーバー上の共有フォルダにアクセスできるようになる。従って,正解はBである。

 さらに,Windows Server 2003 R2以降のDFS機能は,複製が差分のみで実施されるほか,障害時に接続先のサーバーがフェール・オーバーされた後,フェール・バックされる機能などが追加されて,強化が図られている。Windows Server 2008では,[サーバーマネージャ]で「ファイルサービス」の「役割サービス」からDFS機能をインストールし(図1),[DFS管理]管理ツールを使用する(図2)。

図1●DFSサービスを追加する
図1●DFSサービスを追加する
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図2●DFS管理ツール
図2●DFS管理ツール
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 DFSは,OSの機能を利用してアクセスの最適化と可用性を提供する。ぜひ使ってみてほしい。

 ファイル・サーバーを統合すると,ユーザーが単一のパスでアクセスできるようになり,パスの指定はしやすくなるが,可用性とアクセスの最適化が図れるわけではない。従ってAは誤りである。

 ファイル・サーバーに対してボリューム・シャドウコピーを有効にすると,ユーザー自身がデータの復旧を簡単にできるようになるが,可用性とアクセスの最適化が図れるわけではない。従ってCは誤りである。

 グループ・ポリシーのログオン・スクリプトを利用し,共有フォルダに対して自動的にドライブがマップされるようにすると,ユーザーが共有フォルダにアクセスしやすくはなるが,可用性とアクセスの最適化が図れるわけではない。従ってDは誤りである。