NTTデータが、虎の子である決済インフラ「CAFIS」の料金引き下げに踏み切る。CAFISはトランザクション件数に応じて課金する貴重なストック型ビジネス。本来、死守したい収益源のはずだが、単価の見直しを決断した。同社の真意はどこにあるのか。
「2019年度にキャッシュレス決済の少額化が顕著になったこともあり、(料金体系を巡る)いびつさの解消に以前から動き出していた」。NTTデータの栗原正憲カード&ペイメント事業部事業部長は、こう説明する。CAFISの料金を巡っては公正取引委員会が2020年4月に、「利用料金が固定的である」などと指摘する報告書を公表していた。
NTTデータは2020年10月から、二つのサービスで料金を改定する。一つが、主に金融機関向けに提供する「CAFIS即時口座振替取引」。銀行口座間の資金移動を即時で実行できる。代表的な用途が、銀行口座からキャッシュレス決済サービスへの入金(チャージ)だ。キャッシュレス決済事業者は、個人ユーザーの口座から自社口座に資金を移動させることで、チャージ処理を実現している。
金融機関はCAFISを利用してキャッシュレス決済事業者にチャージ機能を提供し、手数料を請求している。定価は1トランザクション当たり数百円だが、実際は多くの銀行が料金を10~20円といった水準に下げているとされる。一方でCAFISに係る費用は、1件当たり最大3.15円。NTTデータは今回、これを1円に引き下げる方針だ。
キャッシュレス決済事業者は金融機関だけでなく、NTTデータにも直接、月額費用を支払っている。チャージを実現するため、資金移動に必要な情報をCAFIS向けの電文に変換する「即時決済ゲートウェイサービス」を利用するからだ。こちらは値下げの対象に含まれない。
もう一つの価格改定は、CAFISの本丸とも言えるクレジットカード取引に係る手数料だ。主にカード会社向けに請求している。1000円以下の取引について、1件当たり最大3.15円だったものを、決済金額の0.3%に変更する。1000円を超える取引は従来どおりの料金体系を維持する。
NTTデータによると、クレジットカードの決済単価は平均で6000~9000円程度。3.15円という料金は決済金額の0.03~0.05%となり、これまでは問題になる水準ではなかったという。
ところが少額決済に絞ると景色が変わる。300円の支払いを例に採ると、3.15円は決済金額の1%を超える。カード会社の加盟店手数料を決済金額の3%強と仮定すると、CAFISの手数料だけで3分の1を占める計算になる。栗原事業部長が「いびつ」と表現したのは、この部分だ。