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 日経クロステックが2022年10月に実施したプログラミング言語の利用実態調査によると、メインで利用するプログラミング言語で最も回答が多かったのが「Java(ジャバ)」、2位は「Python(パイソン)」だった。ところが、このランキングでトップ10にも入っていないプログラミング言語が、毎年50万人近く受ける試験に採用される。そんな“謎”のプログラミング言語が「DNCL」だ。

 DNCLなんて聞いたことがないというITエンジニアもいるだろう。筆者も高校生の息子に昨年聞いたばかりだ。DNCLを採用した試験とは何か、なぜ、どんな問題に採用されたのか。謎のDNCLに迫った。

試験のためのプログラミング言語

 DNCLとは「共通テスト手順記述標準言語」と呼ばれるプログラミング言語で、大学入試センターが実施する「大学入学共通テスト」(2020年までは「大学入試センター試験」)で使用している言語だ。DNCLは「Daigaku Nyushi Center Language」の略ではないかといわれることが多いが、正式には決まっていない。主な用途は試験で、プログラムの開発には通常使わない。

 DNCLの歴史は意外に古く、試験で使われたのは2002年のセンター試験から。主に情報科や工業科、商業科などに通う高校生が受ける情報系の科目「情報関係基礎」の問題文として出題されるプログラミング言語で採用された。

 情報関係基礎では当初、「BASIC(ベーシック)」「COBOL(コボル)」「Pascal(パスカル)」の3つのプログラミング言語を採用していた。しかし、受験生が取り組んでいたプログラミング言語によって有利・不利になるとして、大学入試センターが用意したのがDNCLである。DNCLの仕様は同センターが公開している。

DNCLの仕様は大学入試センターのWebサイトで入手可能。2022年に公開された11ページのPDFファイルが最新
DNCLの仕様は大学入試センターのWebサイトで入手可能。2022年に公開された11ページのPDFファイルが最新
(出所:大学入試センター)
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