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 NTT東日本とNTT西日本(NTT東西)は2024年1月31日、固定電話サービス用のネットワークをIP網に全て移行したと発表した。「03(東京23区)」などの「0AB~J番号」と呼ばれる電話番号を使う固定電話サービスにおいて、IP技術を応用して提供する仕組みに切り替えた。

 従来の固定電話サービスのネットワークは公衆交換電話網(PSTN)と呼ばれ、電話交換機が発信側と着信側の間に1本の回線を割り当てることで通話を実現していた。今回の切り替えによって、NTT東西が「変換装置」と呼ぶ機器で音声をIPパケットに変換し、IP網で中継して通話する仕組みとなった。100年以上続いてきた日本の固定電話の仕組みが一変したことになる。

電話の音声を中継する仕組みを回線交換からIPに切り替えた
電話の音声を中継する仕組みを回線交換からIPに切り替えた
出所:NTT東日本の資料などを基に日経クロステック作成
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1000万強の回線をIP網に移行

 「20時の切り替えに向けてよろしくお願いします」

 2024年1月30日午後7時15分、NTT東日本本社に設置された「PSTNマイグレーション切替本部」で、NTT東日本の島雄策取締役執行役員ネットワーク事業推進本部長設備企画部長がこう宣言した。同社が固定電話サービス向けに運用する関東甲信越地方や北海道の固定電話網の切り替え作業にゴーサインを出した。

各地の技術者に移行作業の実施を宣言するNTT東日本の島雄策取締役執行役員ネットワーク事業推進本部長設備企画部長(右から2番目)
各地の技術者に移行作業の実施を宣言するNTT東日本の島雄策取締役執行役員ネットワーク事業推進本部長設備企画部長(右から2番目)
撮影:日経クロステック
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 切り替え作業は同年1月30日午後8時~31日未明にかけて、NTT東西の合計で数百人規模の態勢で実施した。1日で切り替え対象となる回線の数は1000万以上に相当する。これほど規模が大きい移行作業は、NTT東西も初めての経験である。

 NTT東日本ではまず、北海道や新潟県、長野県などのサービス向けに運用する約100台の交換機の切り替え作業を30日午後8時に実施した。その後も段階的に切り替えを進め、最終的に300台余りを無事に移行させた。

 NTT東日本の島氏は、円滑に移行するために様々な準備を進めてきたと明かす。例えば、他の通信事業者の網と接続する試験は検証環境ではなく、実際のサービスと同じ商用環境で実施した。本番と同じ環境での作業を経験しておいたことにより、切り替え作業の品質が向上したとしている。

 一部の地域は1月中旬までに先行して移行作業を済ませていた。具体的には、NTT東日本の東北地域、NTT西日本の中四国地域である。これらの地域で作業して大きな問題なく移行できたことも、今回の移行作業を円滑に進める後押しになったと見られる。