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 普段使いの街乗り電気自動車(EV)としては、性能も質感もパッケージングも悪くない――。報道陣向けの試乗会において、中国・比亜迪(BYD)の5ドアハッチバックタイプの小型EV「DOLPHIN(ドルフィン)」(日本では2023年9月20日発売予定)に試乗したときの率直な感想だ(図1)。

図1 試乗したDOLPHIN(ドルフィン)
図1 試乗したDOLPHIN(ドルフィン)
5ドアハッチバックの小型EVである。(写真:日経クロステック)
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 実際、内装の質感は、大衆車という点を加味すれば納得のいくレベル(図2)。外装も、旧オギハラ館林工場のTATEBAYASHI MOULDING(TMC、群馬県館林市)が持つプレス金型技術を生かしているためか、しっかりと造り上げている印象である(図3)。さらに、性能面やパッケージングも練り込まれた感がある。

図2 DOLPHINの前席周辺の内装
図2 DOLPHINの前席周辺の内装
日本仕様では右ハンドルとなっている。(写真:日経クロステック)
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図3 DOLPHINのサイドビュー
図3 DOLPHINのサイドビュー
日本のプレス金型技術を生かした外装としている。(写真:日経クロステック)
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 確かに、モーター性能は最高出力70kW、最大トルク180N・mと、どちらかといえば控えめである(図4)。しかし、全長4290×全幅1770×全高1550mm、車両質量1520kgとコンパクトで軽量な車体である点を考えると、取り立てて不満を感じさせない水準といえる。

図4 フロントフード下のモータールーム
図4 フロントフード下のモータールーム
前輪側に電動アクスルを配している。(写真:日経クロステック)
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 電池も44.9kWhと小型の街乗りEVとしてはゆとりのある容量を確保している。満充電時の航続距離(以下、航続距離)はWLTCモードで400km(BYD調べ)に達する。

 一方、パッケージング面では、車室の広さが最大の魅力となっている。ホイールベースを2700mmと、このサイズのクルマとしては長く設定したことが功を奏している。とりわけ後席のひざ周りの空間は、平均的な身長の日本人男性にはゆとりすら感じさせるレベルだろう(図5)。

図5 ゆったりとしたひざ周り
図5 ゆったりとしたひざ周り
運転者が座った状態でも、後席乗員のひざと前席背もたれの間にゆとりが感じられた。(写真:日経クロステック)
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 シフトノブも特徴的だ。ローラー状の操作部を回転させる方式を採用して小さくまとめ、車室の拡大にひと役買っているとみられる(図6)。さらに、床面についても、EVの利点をしっかりと生かしてフラットに仕上げており、使い勝手の向上につながっていると考えられる。

図6 ローラー状の操作部を回転させる方式のシフトノブ
図6 ローラー状の操作部を回転させる方式のシフトノブ
センターディスプレーの手前に、運転モードの切り替えスイッチ、ハザードランプのスイッチ、回生の強さの切り替えスイッチなどと一緒に並べて配置している。右端がシートノブの部分。回転させるとDレンジやRレンジに切り替えられる。右側面を押すとPレンジにできる。(写真:日経クロステック)
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 装備も大衆車としては充実している。今回の試乗車では、さまざまな安全・運転支援システムや前席のシートヒーター、横にも縦にも向きを切り替えられる12.8インチのタッチ式センターディスプレー、前席の電動シートアジャスターも備えていた。これで戦略的な値付けになれば、日本メーカーにとって脅威の存在となるかもしれない。