【2019年版】日本政策金融公庫の融資制度21選と利用条件・金利まとめ
銀行など民間金融機関からの事業資金の融資は、個人事業主や起業したばかりの法人にとっては審査が厳しく、融資が通りづらいといわれています。
そんな時に利用を検討したいのが、日本政策金融公庫の融資制度です。小規模事業者の金融支援を役目としているため、比較的融資を受けやすくなっています。また、資金の使用使途によって様々な制度が設けられているのもひとつの特徴です。
目次
日本政策金融公庫とは
日本政策金融公庫は国が100%出資する金融機関です。
一般の金融機関を補完する役割を担い、中小企業者や農林水産業者の資金調達を支援することで国民生活の向上に寄与することを目的とし、「国民生活事業」「中小企業事業」「農林水産事業」の3つの事業から成り立っています。
「国民生活事業」は、個人企業や小規模企業向けの小口資金の融資や起業資金融資などを行なっています。融資額の平均は約700万円で、短期の運転資金も取り扱っています。
「中小企業事業」は、中小企業向けの長期事業資金の融資を行なっています。融資額の平均は約1億円で、短期の運転資金は取り扱っていません。
「農林水産事業」は、農林漁業や国産農林水産物を取り扱う、加工流通分野の長期資金の融資を行なっています。
それぞれの事業ごとにさまざまな融資制度が用意されていて、利用できる人や資金の使い道などの条件が細かく決まっています。
商工中金との違い
政府系金融機関には、日本政策金融公庫以外にも商工組合中央銀行(商工中金)があります。日本政策金融公庫は政府が100%出資しているのに対し、商工中金は政府と民間団体が共同出資をしています。
日本政策金融公庫は融資業務が事業の中心となっているのに対し、商工中金は法人や個人事業主向けの融資プランを扱うほか、中小企業向けに預金の受け入れや債券の発行、国際為替、手形取引などの事業も行なっています。
商工中金の融資は、商工中金の株主である中小企業団体の構成員が対象なので、まず中小企業協同組合など商工中金の株主である団体の構成員になったうえで、融資の申し込みを行うという流れになります。
日本政策金融公庫で融資を受けるメリット
日本政策金融公庫の大きな役割は、国の政策のもとに企業の貸付や創業支援などを行うことです。そのため、実績が少ない中小企業や個人事業主など、他の金融機関では融資を受けづらい人でも比較的審査が通りやすくなっています。また、創業資金の調達として創業前に融資を受けられる制度もあります。
融資の種類や担保の有無などによっても異なりますが、相対的に民間融資などに比べて融資利率が低く設定されています。全ての融資で固定金利が採用されていて(途中で見直しを行う融資もある)、期間も長めに設定できるため、無理のない返済計画が立てやすくなっています。
さらに、融資元本を据え置いたまま金利分だけ返済する据置期間が設定されています。事業の立ち上げ当初など、資金繰りが大変な時期に返済負担を軽くできるメリットがあります。
融資を受けるための相談や経営に関するアドバイスが受けやすいのも、日本政策金融公庫のメリットのひとつです。公庫の相談窓口は全国に152支店あり、「経営に関するアドバイス」を無料で実施しています。ホームページでは「経営・融資相談の予約」も受け付けているほか、創業準備で忙しい人には窓口以外に「創業メール相談」もあります。
日本政策金融公庫の主な融資制度一覧
日本政策金融公庫には多くの融資制度があり、資金を使う目的によって利用できる制度が異なります。どんな目的で資金調達を考えているのかを明確にしたうえで、目的に合った制度を選びましょう。
事業名 | 国民生活事業 | 中小企業事業 | 農林水産事業 |
---|---|---|---|
目的に関係なく利用できる融資制度 | |||
普通貸付(一般貸付) | 〇 | ||
起業時に利用できる融資制度 | |||
新規開業資金 | 〇 | ||
女性、若者/シニア起業家支援資 | 〇 | 〇 | |
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン) | 〇 | 〇 | |
新創業融資制度 | 〇 | 〇 | |
新規事業で利用できる融資制度 | |||
新事業育成資金 | 〇 | ||
新事業活動促進資金 | 〇 | 〇 | |
中小企業経営力強化資金 | 〇 | 〇 | |
経営再建・地域活性に利用できる融資制度 | |||
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資) | 〇 | 〇 | |
マル経融資(小規模事業者経営改善資金) | 〇 | ||
セーフティネット貸付 | 〇 | 〇 | |
企業再建資金 | 〇 | 〇 | |
地域活性化・雇用促進資金 | 〇 | 〇 | |
海外展開時に利用できる融資制度 | |||
海外展開・事業再編資金 | 〇 | 〇 | |
スタンドバイ・クレジット制度 | ー | ー | |
農業関係者が利用できる融資制度 | |||
農業経営基盤強化資金(スーパーL資金) | 〇 | ||
経営体育成強化資金 | 〇 | ||
青年等就農資金 | 〇 | ||
その他おすすめの融資制度 | |||
ソーシャルビジネス支援資金 | 〇 | ||
事業承継・集約・活性化支援資金 | 〇 | 〇 | |
IT活用促進資金 | 〇 | 〇 |
資金使途が自由な融資制度
融資制度の中で、目的に関係なく利用できるのが「普通貸付(一般貸付)」です。
1.普通貸付(一般貸付)
「一般貸付」は、金融業や投機的事業、一部の遊興娯楽業などの業種を除き、ほとんどの業種で利用できる制度です。
利用できる人 | ほとんどの業種の中小企業の人(金融業など一部を除く) | ||
---|---|---|---|
資金使途 | 運転資金 | 設備資金 | 特定設備資金 |
融資限度額 | 4800万円 | 4800万円 | 7200万円 |
返済期間(据置期間) | 5年以内(1年以内) | 10年以内(2年以内) | 20年以内(2年以内) |
担保・保証人 | 応相談 |
融資限度額について
他制度にも共通しますが、資金使途ごとに融資限度額が異なります。
- 運転資金:主に商品の仕入れなどの資金繰りに必要な資金
- 設備資金:主に店舗・工場等の建築や機械・車両・什器等の購入に必要な資金
- 特定設備資金:大型店の進出や公害などによって事業所を移転する場合や、店舗・工場を立ち退きで不動産の取得するなど、特別な事情で必要となる設備資金
起業時に利用できる融資制度
新しく会社を立ち上げるときには、会社設立費用や設備の購入、事業が軌道に乗るまでの運転資金など、さまざまな資金が必要となります。以下は、創業間もない企業でも利用できる制度です。
2.新規開業資金
「新規開業資金」は、新しく事業を立ち上げる人や、事業開始後おおむね7年以内の人を対象とした融資制度です。
利用できる人 | 新たに事業を始める人、または事業開始後おおむね7年以内の人 | |
---|---|---|
資金使途 | 運転資金 | 設備資金 |
融資限度額 | 4800万円 | 7200万円 |
返済期間(据置期間) | 7年以内(2年以内) | 20年以内(2年以内) |
担保・保証人 | 応相談 |
融資を受けるには、さらに以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 始める事業と同じ業種の企業に通算6年以上勤めていた、もしくは現在勤めている企業に6年以上勤続している人
- 大学等で習得した技能等と密接に関連した職業に2年以上勤めて、その職種と密接に関連した業種の事業を始める人
- 技術やサービス等に工夫を加え、多様なニーズに対応する事業を始める人
- 雇用の創出を伴う事業を始める人
- 産業競争力強化法に規定される「認定特定創業支援事業」を受けて事業を始める人
- 地域創業促進支援事業による支援を受けて事業を始める人
- 公庫が参加する地域の創業支援ネットワークから支援を受けて事業を始める人
- 民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める人
- 上記の要件に該当せず事業を始める人で、新たに営もうとする事業の適正な事業計画を策定していて、計画を遂行する能力が十分あると公庫が認めた人(資金は1000万円が限度)
なお、地方で新たに事業を始める場合など、公庫の定める要件を満たすと、基準金利よりも低金利の特別利率が適用になります。
3.女性、若者/シニア起業家支援資金
「女性、若者/シニア起業家支援資金」は、女性、30歳未満の若年層、55歳以上のシニア層で新たに事業を始める人、または事業開始後おおむね7年以内の人が対象の融資制度です。技術・ノウハウに新規性が見られる人など、融資を受ける人の要件によって適用利率が異なります。
利用できる人 | 女性、または35歳未満か55歳以上で、新たに事業を始める人または事業開始後おおむね7年以内の人 | |
---|---|---|
資金使途 | 運転資金 | 設備資金 |
融資限度額 | ・国民生活事業 7200万円(うち運転資金は4800万円) ・中小企業事業 7億2000万円(うち運転資金は2億5000万円)、代理貸付1億2000万円 | |
返済期間(据置期間) | 7年以内(2年以内) | 20年以内(2年以内) |
担保・保証人 | 応相談 |
4.挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)
「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」とは、金融審査上、借入金が「負債」ではなく「資本」とみなされる融資制度です。
借り入れを行なっても自己資本比率を下げることなく、ベンチャー企業やスタートアップ企業が、資金調達をしながら財務体質の強化を図れることが特徴となっています。
利用できる人 | ・国民生活事業 新規開業資金・女性、若者/シニア起業家支援資金 など、適用融資制度の対象となり、さらに地域経済の活性化にかか る事業を行うなどの要件に適用する人 ・中小企業事業 新企業育成貸付、企業活力強化貸付、企業再生貸付 のいずれかを利用し、さらに地域経済の活性化にかかる事業を行う などの要件に適用する人 |
---|---|
融資限度額 | 国民生活事業/4000万円(事業承継・集約・活性化支援資金制度は別枠4000万円) 中小企業事業/3億円(事業承継・集約・活性化支援資金制度は別枠で3億円) |
返済期間 | 国民生活事業/5年1か月以上15年以内 中小企業事業/5年1か月、7年、10年、15年 |
担保・保証人 | 不要 |
この制度では、財政状況よりも事業内容や成長性が重視されるため、赤字の状態でも審査の対象となります。担保や保証人がいなくても借り入れが可能です。融資利率は1年ごとに見直され、業績が悪いと金利が下がり、利息を抑えることができます。借入元本は期限日に一括返済となっているので、借入期間中の返済は利息分のみと、返済負担を抑えることができます。
融資の審査を通るためには、成長が期待できて画期的な事業であることを伝えられる、事業計画書の作成が大きなポイントとなります。
5.新創業融資制度
「新創業融資制度」は、これから事業を始める人や、起業2年目までの人が対象の融資制度です。
通常の創業資金融資の場合は、担保や保証人、自己資金が3分の1以上必要ですが、新創業融資制度では自己資金は10%以上となっており、基本的に無担保・無保証人で融資が受けられるなど、条件が緩やかになっています。
その代わり、日本政策金融公庫のほかの融資と比べると、返済利率が少し高くなっています。また、融資の申し込みには、創業計画書の作成・提出が必須となっています。この融資制度は単体で利用することはできないため、日本政策金融公庫が設けている、ほかの融資制度と組み合わせて申し込みます。
利用できる人 | 新たに事業を始める人、または事業を開始してからの2期分の税務申告を終えていない人。さらに雇用創出等・自己資金の要件を満たす人 | |
---|---|---|
資金使途 | 運転資金 | 設備資金 |
融資限度額 | 1500万円 | 3000万円 |
返済期間 | 併用する融資制度の返済期間 | |
担保・保証人 | 原則不要 | |
【併用する融資制度】 新規開業資金、女性、若者/シニア起業家支援資金、再挑戦支援資金、新事業活動促進資金、企業活力強化資金、IT資金、海外展開・事業再編資金、ソーシャルビジネス支援資金、地域活性化・雇用促進資金、観光産業等生産性向上資金、事業承継・集約・活性化支援資金、働き方改革推進支援資金、環境・エネルギー対策資金、社会環境対応施設整備資金、企業再建資金、食品貸付 |
新規事業で利用できる融資制度
新規事業を始める際に利用できる融資制度もあります。
6.新事業育成資金
「新事業育成資金」とは、新しい事業を行う際に必要な設備資金および長期運転資金の融資を受けられる制度です。融資限度額は6億円、設備資金の場合は最長20年まで長期借り入れを行うことができます。
利用できる人 | 高い成長性が見込まれる新たな事業を行う人で、事業化させておおむね5年以内で、事業の新規性・成長性の認定を受けるなどの条件を満たし、中小企業事業から継続的に経営指導を受けることで円滑な事業の遂行が可能な人 | |
---|---|---|
資金使途 | 運転資金 | 設備資金 |
融資限度額 | 直接貸付6億円 | |
返済期間(据置期間) | 7年以内(2年以内) | 20年以内(2年以内) |
担保・保証人 | 応相談 |
この制度で融資を受けるには、高い成長性が見込まれる新しい事業である必要があります。そのためには、以下のいずれかに当てはまることが条件となります。
- 公庫の成長新事業育成審査会から事業の新規性・成長性の認定を受けた人
- 中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けた人
- 他の企業に利用されていない知的財産権や中小企業技術革新制度に係る特定補助金などの交付を受けて、開発した技術を利用して新事業を行う人
7.新事業活動促進資金
「新事業活動促進資金」とは、経営多角化や事業転換を図ろうと計画していたり、中小企業が連携して新事業分野を開拓する際に利用できる融資制度です。
利用できる人 | 新たに経営多角化、事業転換を図る人、または経営多角化、事業転換後おおむね5年以内の人 など | |
---|---|---|
資金使途 | 運転資金 | 設備資金 |
融資限度額 | ・国民生活事業 7200万円(うち運転資金は4800万円)。無担保、無保証人での利用は最大2000万円まで ・中小企業事業 7億2000万円(うち運転資金は2億5000万円)、代理貸付1億2000万円 | |
返済期間(据置期間) | 7年以内(2年以内) | 20年以内(2年以内) |
担保・保証人 | 応相談 |
上記の利用できる条件に加え、第三者の認定を受けることで、基準金利よりも有利な特別金利で融資が受けられます。国民生活事業で融資を受ける場合は、「経営革新計画」「経営力向上計画」「農商工等連携事業計画」などの認定が対象となっています。
8.中小企業経営力強化資金
「中小企業経営力強化資金」は、専門家の経営サポートを受けることによって、2000万円までの融資が無担保・無保証人で受けられます。新創業融資制度は創業して2期以内の企業が対象ですが、こちらは創業期以外でも利用が可能です。
利用できる人 | ・国民生活事業 (1)経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓を行おうとする人、(2)事業計画を策定し、認定支援機関(経営革新等支援機関)に指導および助言を受けている人 ・中小企業事業 (1)(2)または以下に当てはまる人 (3)中小企業の会計に関する基本要領または中小企業の会計に関する指針を適用している人 (4)事業計画書を策定する人 | |
---|---|---|
資金使途 | 運転資金 | 設備資金 |
融資限度額 | ・国民生活事業 7200万円(うち運転資金は4800万円)無担保・無保証人での利用は最大2000万円 ・中小企業事業 7億2000万円(うち運転資金は2億5000万円) | |
返済期間(据置期間) | 7年以内(2年以内) | 20年以内(2年以内) |
担保・保証人 | ・国民生活事業 融資額2000万円まで不要 ・中小企業事業 応相談 |
融資を受けるには、認定支援機関による指導を受け、事業計画を作成していることことが必須条件となります。認定支援機関とは、経済産業省よって専門知識、実務経験が一定レベル以上あると認定された税理士や公認会計士、金融機関などのことです。
さらに、融資を受けた後も認定支援機関ヘ定期的に経過報告することが求められます。なお、当初の事業計画通りに事業が進まなくても特にペナルティ等はありません。
経営再建・地域活性に利用できる融資制度
現在営んでいる会社の経営を立て直したいときなど、さまざまな事業の再建・拡大などに利用できる融資制度があります。
9.再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)
過去に廃業歴などがある場合、新たに事業を始めるにあたって資金の調達が難しいケースがほとんどです。そうした人でも条件を満たすことで利用できる融資制度が「再挑戦支援資金」です。
利用できる人 | 廃業歴などがあり一定の要件に該当する方で新たに事業を始める人、または事業開始後おおむね7年以内の人で、以下のすべてに当てはまる人 ・廃業歴のある個人または経営者が営む法人であること ・廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理できる見込みであること ・廃業の理由・事情がやむを得ないものであること | |
---|---|---|
資金使途 | 運転資金 | 設備資金 |
融資限度額 | ・国民生活事業 7200万円(うち運転資金は4800万円) ・中小企業事業 7億2000万円(うち運転資金は2億5000万円) | |
返済期間(据置期間) | 7年以内(2年以内) | 20年以内(2年以内) |
担保・保証人 | 応相談 |
過去の廃業で多額の負債を抱え完済の目処が立たなかったり、破産手続きを行ったものの免責決定を受けられなかった人などは、融資を受けるのが難しくなっています。また当然ですが、無許可営業など法律に違反するような行為で廃業した場合には、融資の対象になりません。
10.マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
「マル経融資」とは、商工会・商工会議所経由で公庫の融資が受けられる融資制度のことです。正式名称は「小規模事業者経営改善資金」といいます。無担保・無保証で経営改善に必要な資金の融資を受けることができます。ただし、融資実行まで時間がかかるという注意点があります。
利用できる人 | ・商工会議所の経営、金融指導を受けて事業改善に取り組んでいる人 ・指導を受ける商工会議所の地域内で1年以上、事業を行っている人 ・商工業者であり、日本政策金融公庫の融資を受けられる事業を営んでいる人 など | |
---|---|---|
資金使途 | 運転資金 | 設備資金 |
融資限度額 | 2000万円 | |
返済期間(据置期間) | 7年以内(1年以内) | 10年以内(2年以内) |
担保・保証人 | 不要 |
制度の対象となるのは、商工会や商工会議所などの経営指導を受けている小規模事業者です。原則として商工会・商工会議所の経営相談員から6か月間以上の経営指導を受けていて、指導を受ける商工会議所の地域内で1年以上事業を行なっていることが条件になります。
11.セーフティネット貸付
経済不安や、取引先企業の業績不振・倒産といった外的要因によって、経営が厳しくなっている事業者に向けた融資制度が「セーフティネット貸付」です。この制度は、外的要因で一時的に経営状況が悪化しているものの、中長期的には十分に業況回復が見込まれる場合に利用できます。
セーフティネット貸付は、「経営環境変化対応資金」「金融環境変化対応資金」「取引企業倒産対応資金」の3種類の制度が用意されています。
制度名 | 経営環境変化対応資金 | 金融環境変化対応資金 | 取引企業倒産対応資金 |
---|---|---|---|
利用できる人 | 売上減少など業況が悪化している人 など | 取引金融機関の経営破綻などで資金繰りが困難な人 など | 取引企業などの倒産で経営が困難な状態にある人 など |
資金使途 | ・社会的、経済的要因により緊急に必要な設備資金 ・経営基盤を強化するために必要な運転資金 | ・設備資金 ・金融機関との取引状況の変化により必要となる運転資金 | <国民生活事業> ・売掛金債権の回収困難や売上減少により緊急に必要な設備資金 ・関連企業の倒産の影響により緊急に必要な運転資金 <中小企業事業> 取引企業などの関連企業の倒産により緊急に必要な長期運転資金 |
融資限度額 | ・国民生活事業 4800万円 ・中小企業事業 7億2000万円(直接貸付) | ・国民生活事業 別枠4000万円 ・中小企業事業 別枠3億円 | ・国民生活事業 別枠3000万円 ・中小企業事業 別枠1億5000万円(直接貸付・代理貸付合計) |
返済期間(据置期間) | 設備資金/15年以内(3年以内) 運転資金/8年以内(3年以内) | 運転資金/8年以内(3年以内) | |
担保・保証人 | 応相談 |
12.企業再建資金
経営が立ちいかなくなった企業を再建するのは、並大抵のことではありません。中小企業の場合には特に資金面の問題が大きく、一旦経営難に陥った企業が金融機関から資金を融資してもらうのはとても厳しいのが現実です。このように、経営再建のチャンスを失ってしまうことがないように、資金面で支援する制度が「企業再建資金」です。
利用できる人 | ・国民生活事業 中小企業再生支援協議会など指定機関の関与の下で事業再建を図る人 ・中小企業事業 経営改善、経営再建等に取り組む必要があり、一定の要件を満たす人 | |
---|---|---|
資金使途 | 運転資金(中小企業事業は運転資金のみ) | 設備資金 |
融資限度額 | ・国民生活事業 7200万円(うち運転資金は4800万円) ・中小企業事業 7億2000万円 | |
返済期間(据置期間) | 15年以内/一定の要件を満たす場合は20年以内(2年以内) | 20年以内(2年以内) |
担保・保証人 | 応相談 |
この制度で融資が受けられるのは、指定された第三者機関のもとで事業再建に取り組んでいたり、認定支援機関による経営改善計画策定支援事業を利用して、経営改善に取り組んでいる企業となります。
13.地域活性化・雇用促進資金
事業活動を通じて、地域の活性化や雇用促進への貢献に取り組む企業を応援する融資制度が「地域活性化・雇用促進資金」です。
利用できる人 | 地域経済の活性化や雇用創出へ貢献できる事業を行い、一定の要件に当てはまる人(一定要件は国民生活事業・中小企業事業で異なる) | |
---|---|---|
事業 | 運転資金 | 設備資金 |
融資限度額 | ・国民生活事業 7200万円(うち運転資金は4800万円) ・中小企業事業 7億2000万円(うち運転資金は2億5000万円) 代理貸付1億2000万円 | |
返済期間(据置期間) | 7年以内(2年以内) | 20年以内(2年以内) |
担保・保証人 | 応相談 |
雇用の減少や若者の流出などによる人口減少が進む地域で、事業活動を通じて地域の活性化などに取り組む企業を支援する制度です。具体的には、工場を新・増設したり従業員の増員などを行う際に、必要となる資金の融資を受けることができます。
海外展開時に利用できる融資制度
海外への事業展開に向けて資金調達を考えている場合に、利用できる融資制度を紹介します。
14.海外展開・事業再編資金
「海外展開・事業再編資金」は、海外で事業展開を始めたり、海外展開事業の再編などに取り組む中小企業者を支援する融資制度です。
利用できる人 | 海外で事業を開始する人、海外展開事業の再編などに取り組む人、海外事業の業況悪化で日本国内の事業活動が影響を受けている人 など | |
---|---|---|
資金使途 | 運転資金 | 設備資金 |
融資限度額 | 国民生活事業/7200万円(うち運転資金は4800万円) 中小企業事業/7億2000万円(うち運転資金は4億8000万円) 代理貸付1億2000万円 | |
返済期間(据置期間) | 7年以内(2年以内) | 20年以内(2年以内) |
担保・保証人 | 応相談 |
この資金が利用できるのは、海外展開が経営上に必要なケースをはじめ、海外展開事業の再編が必要だったり、海外事業の業況悪化で日本国内の事業活動が影響を受ける場合などです。
具体的には取引先の海外進出によって自社も海外展開が必要だったり、仕入れ先を海外に移す、労働力不足により海外展開する場合に融資の対象となります。また、海外展開事業の再編に伴う債務の返済に充てることもできます。
15.スタンドバイ・クレジット制度
海外展開を行う上で、海外の金融機関から資金調達をする際に利用したい制度が「スタンドバイ・クレジット制度」です。海外現地法人や日本企業の海外支店が、現地の金融機関から円滑に資金調達を行えるように支援する制度です。
具体的には、日本企業の海外支店や海外現地法人が、海外の金融機関から融資を受ける際に、日本政策金融公庫が債務保証の信用状を発行します。海外の金融機関は、もし返済が受けられない状況になっても、日本政策金融公庫からの返済が保証されます。
利用できる人 | 海外現地法人が提携金融機関から現地通貨で融資を受けることを目的としていて、所定の法律に基づく計画の承認または認定を受けた人 |
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補償限度額 | 1法人あたり4億5000万円 (1)海外支店や分工場など国内親会社と法人格が同一の場合は国内親会社ごとに4億5000万円 (2)海外において別個に法人格を持つ場合は当該法人ごとに4億5000万が限度額 |
信用状有効期間 | 1年以上6年以内 |
補償料率 | 信用リスク・信用状有効期限等に応じて所定の料率を適用 |
海外での借入れ条件 | ・資金使途 承認または認定を受けた計画事業を行うための設備資金及び長期運転資金 ・融資金額および通貨 信用状の保証金額の範囲内。現地流通通貨建て ・融資期間 1年以上5年以内 |
この制度を利用するためには、経営革新計画や経営力向上計画の認定を受けるなど、さまざまな手続きが必要になります。
農業関係者が利用できる融資制度
農業を営むには、設備投資や機械の購入・維持などに多額の資金がかかります。こうした資金の借り入れに利用できる制度を紹介します。
16.農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)
経営を改善しようとする農業者を資金面で支援する制度が「農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)」です。
融資枠が大きいことや、返済期間が長く、融資対象となる範囲が広いのがこの制度の特徴です。また条件によっては実質無利子になる特例も設けられています。
利用できる人 | 認定農業者(個人・法人) ※個人の場合は簿記記帳を行っている、または今後簿記記帳を行うことが条件 |
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資金使途 | ・農地等など取得、改良、造成 ・農産物の処理加工施設、店舗などの流通販売施設 ・果樹・家畜等の購入費,新植・改植費用、育成費 ・規模拡大や設備投資などに伴って必要となる原材料費、人件費 ・負債の整理(制度資金は除く)など ・個人が法人に参加するために必要な出資金等の支払い |
融資限度額 | 個人/3億円(特認6億円) 法人/10億円(特認20億円/一定の場合は30億円) |
返済期間(据置期間) | 25年以内(10年以内) |
担保・保証人 | 応相談 |
融資が受けられる対象は、市町村から認定を受けた認定農業者のみとなっています。さらに個人で融資を受ける場合は、簿記記帳を行っていること(またはこれから行うこと)が、追加条件となります。
17.経営体育成強化資金
「経営体育成強化資金」は、農業を営む人が前向きな投資を行なったり、償還負担の軽減のために必要な資金の融資を行う制度です。この制度の対象となるのは、経営改善資金計画または経営改善計画を融資機関に提出している個人や法人となります。
利用できる人 | 農業を営む個人、法人・団体で経営改善資金計画または経営改善計画を融資期間に提出された人、農業参入法人 など |
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資金使途 | 経営改善資金計画または経営改善改善計画に基づいて行う農業経営の改善を図るために必要な資金(前向き投資/償還負担の軽減) |
融資限度額 | 1~3の範囲内で合計額が個人1億5000万円、法人・団体5億円以内 (1)前向き投資 負担額の80% (2)再建整備 個人1000万円(特認1750万円、特定2500万円)、法人4000万円 (3)償還円滑化 経営改善計画期間中の5年間(特認は10年間)に支払われる既往借入金等にかかる負債の各年の支払金の合計額に相当する額 |
返済期間(据置期間) | 25年以内(3年以内) |
担保・保証人 | 応相談 |
すでに農業を営んでいる人以外でも、一般の会社などが新たに農業に参入する際に必要となる農業用施設や機械の導入などの初期投資にも、この制度を利用することができます。利用できるのは、決算期を2期終えていない農業を営む法人で、経営改善資金計画について認定を受けているなどの条件を満たす必要があります。
18.青年等就農資金
農業を新たに始めるには、農地の取得から設備の購入など多額の資金が必要になります。そうした資金面の障壁を取り除いて、若い人の新規参入を手助けする制度が「青年等就農資金」です。
この制度の最大のメリットは、借入期間全期間にわたって無利子で融資が受けられる点で、担保や保証人も実質的に必要ありません。
ただし注意が必要なのは、この制度が国の補助金を財源に含む補助事業だということです。毎年予算の範囲内で実施されるため、実行時期によっては財源がすでに消化されていて、希望通りの資金が受けられない可能性もあります。
利用できる人 | 認定新規就農者(市町村から青年等就農計画の認定を受けた個人・法人) |
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資金使途 | 青年等就農計画の達成に必要な次の資金 ・農業生産用の施設・機械、農産物の処理加工施設・販売施設 ・家畜の購入費、果樹や茶などの新植・改植費・育成費 ・農地の借地料や施設・機械のリース料などの一括支払い ・経営開始に伴い必要となる資材費 |
融資限度額 | 3700万円(特認1億円) |
返済期間(据置期間) | 12年以内(5年以内) |
担保・保証人 | ・担保 融資対象物件のみ ・保証人 個人は不要、法人の場合で必要な場合は代表者のみ |
この制度を利用できるのは、農業経営を開始して5年以内の人が対象です。原則18歳以上45歳未満なら個人・法人問わず申し込めます。また、市町村から青年等就農計画の認定を受けることが必要です。
その他おすすめの融資制度
上記以外にも、個人事業主や中小企業の経営者向けに利用できる融資制度は数多くあります。個別のニーズにマッチするものがないかチェックしたり、税理士から直接アドバイスを受けるのもよいでしょう。
19.ソーシャルビジネス支援資金
「ソーシャルビジネス支援資金」は、社会福祉などの課題解決を目指して活動するNPO法人や事業者など、ソーシャルビジネスの担い手を支援するための融資制度です。NPO法人または、NPO法人以外で保育や介護サービスの事業者、社会的課題の解決を目的とする事業を営む人が対象となります。
利用できる人 | NPO法人、またはNPO法人以外で次の(1)か(2)に該当すること。 (1)保育サービス事業、介護サービス事業等を営む人 (2)社会的課題の解決を目的とする事業を営む人 | |
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資金使途 | 運転資金 | 設備資金 |
融資限度額 | 7200万円(うち運転資金は4800万円) | |
返済期間(据置期間) | 7年(2年以内) | 20年(2年以内) |
担保・保証人 | 応相談 |
ソーシャルビジネスの場合、事業内容によっては補助金や助成金などが期待できます。しかし、使用目的が制限されたり、受け取れる時期が限定されるなど、制約が多く事業資金として積極的に利用するのは難しい面もあります。そこで、必要なタイミングに必要な資金を調達する方法として、この制度が利用できるのです。
20.事業承継・集約・活性化支援資金(企業活力強化資金)
後継者に事業の継承を予定している人が利用できるのが「事業承継・集約・活性化支援資金」です。現経営者が後継者とともに事業承継計画を策定する人などが対象で、事業承継計画を実施するために必要な設備資金や運転資金の融資が受けられます。
利用できる人 | 経営者が後継者と共に事業承継計画を策定している(融資後おおむね10年以内に事業承継を実施することが見込まれる)、事業承継に際して経営者個人保証の免除を取引金融機関に申し入れたことを機に資金調達が困難になっていて、公庫が融資に際して経営者個人保証を免除する人 など | |
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資金使途 | 運転資金 | 設備資金 |
融資限度額 | 7200万円(うち運転資金は4800万円) | |
返済期間(据置期間) | 7年(2年以内) | 20年(2年以内) |
担保・保証人 | 応相談 |
中小企業の場合、事業承継に際して経営者の個人保証の免除を取引金融機関に申し入れることで、資金調達が困難になる場合もあります。そうしたケースにおいても融資を受けることが可能です。さらに事業承継・集約をきっかけに、新たな取り組みを図るために資金が必要になった場合も、融資の対象となります。
21.IT活用促進資金
社会の急速なIT化に伴い、企業もコンピュータやソフトウェア、ネットワーク設備の導入などIT関連の設備の導入が必要不可欠になっています。「IT活用促進資金」は、そうしたIT設備に必要な資金の融資が受けられる制度です。
利用できる人 | 情報化投資を行う人で、情報技術を活用した効果的な企業内業務改善および企業内の情報交換など業務の高度化を行うなど、一定の要件に当てはまる人 | |
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資金使途 | 運転資金 | 設備資金 |
融資限度額 | ・国民生活事業 7200万円(うち運転資金は4800万円) ・中小企業事業 7億2000万円(うち運転資金2億5千万円)、代理貸付1億2000万円 | |
返済期間(据置期間) | 7年以内(2年以内) | 20年以内(2年以内) |
担保・保証人 | 応相談 |
コンピュータやソフトウェアや通信機器など、対象となる範囲は多岐にわたります。2019年10月に導入された軽減税率に対応するための設備の取得なども融資の対象となります。
専門家の助言や指導を受けてIoTを導入し、生産性向上を図るケースも融資の対象となります。この場合は、設備資金だけでなく運転資金も融資対象です。
おわりに
日本政策金融公庫で融資を受ける場合には、融資実行までに最低1か月程度必要になるため、すぐに必要な資金の調達には向いていません。
金利や返済期間など条件面で民間金融機関よりも有利な制度もある反面、自社にあった融資制度を選択するのが難しいケースもあります。
また、融資を受けるために認定支援機関のサポートや計画書の提出を求められる場合もあり、専門的な知識が必要なケースが多いので、融資を受ける際は資金調達に詳しい税理士に相談すると安心です。
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