IoT投資で知っておくべき「コネクテッド・インダストリーズ税制」とは?
日本はほかの先進国とくらべ、時間当たりの労働生産性が低く、アメリカやフランス、ドイツとの差は拡大傾向にあるといわれています。一方で、人口減少社会を迎えており、今後、ますます働き手が減少することが予想されています。
このような流れの中で、日本政府はデフレ脱却と経済再生を目指し、生産性の向上を目標に掲げています。2018年度税制改正においてその方向性が反映された税制措置が創設されました。なかでも、いわゆるIoT投資に関わる「コネクテッド・インダストリーズ税制(IoT税制)」に注目です。
目次
コネクテッド・インダストリーズ税制とは
「コネクテッド・インダストリーズ税制」とは、生産性を向上させるシステムやセンサー・ロボットなどのIoT投資をした際に税金面で有利になる制度です。
2019年4月より、認定を受けた中小企業等は、その計画の設備投資のため日本政策金融公庫から特別利率で貸付を受けられるようになりました。
背景としては、企業が得た収益を人材や設備に再投資すれば成長と分配の好循環が生み出されると考えられるため、一定以上の賃上げや設備投資に取り組む企業を税制面から後押しするために設立された制度です。
制度の概要
制度の概要としては、企業の内外におけるデータを連携・高度利活用することで、生産性を向上させる大規模なIoT投資を行った場合に、特別償却または税額控除ができる、というものになります。
ただし前提として、事業者は設備投資に取り組む前に、内容に関する事業計画を作成し、主務大臣の認定を受けることが必要です。
対象期間は、特別措置法施行日から2021年3月31日まで。対象企業は青色申告事業者で、前述の通り特別措置法に基づく革新的データ産業活用事業者の認定を受けた企業となります。そのため業種や資本金規模による活用制限がなく、幅広く活用できることがポイントです。また、優遇内容である特別償却、税額控除の率はそれぞれ以下のようになっており、どちらかを選択し適用することになります。
特別償却:取得価額×30%
税額控除:原則は取得価額×3%(法人税額の15%が限度)
※継続雇用者給与等支給額が前期と比較して3%以上増加している場合は、特例として取得価額×5%(法人税額の20%が限度)
対象設備と認定要件のポイント
対象となるのは認定された事業計画に基づいて行う設備投資ですが、対象機器の区分としてはソフトウェア、機械および装置、器具および備品に分類されるものとなります。
なお、中古設備は対象外で、最低投資額は合計5000万円とされています。対象設備の例としては、センサー等のデータ収集機器、データ分析により自動化するロボット・工作機械、データ連携・分析に必要なシステム、サイバーセキュリティ対策製品などが挙げられています。
また、事業計画認定の要件としては、下記が必要となります。
- 社内外における一定のデータ連携・利活用
- 必要なセキュリティ対策が講じられていることを専門家が担保
- 投資後一定期間において、生産性向上目標(労働生産性が年平均伸率2%以上かつ投資利益率が年平均15%以上)を達成する見込みであること
データ連携・利活用の具体的例としては、「企業内において、新たにセンサーを設置しデータを取得・活用することで生産稼働の効率化や予防保全を実現させるような取り組み」、「工場間でデータ連携することで、全社での生産稼働の最適化を図り生産性を向上させる取り組み」、「他事業者とデータ連携することで、生産効率を最適化するような取り組み」などが挙げられます。
セキュリティについては、各法人、構築するデータ連携基盤において情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)などの指示等に基づき、各種のセキュリティ対策が必要です。
上記の内容を踏まえたうえで、労働生産性と投資利益率からなる生産性向上の見込みを算出し、要件をクリアする必要があります。なお、この計算方法については一般的な労働生産性の算出とは異なり、本制度にて指定された計算式となります。
おわりに
設備投資には大きなお金が必要です。優遇税制を活用するために設備投資を行うわけではありませんが、事業を運営していく上で、方向性が合うのならば、こういった優遇税制の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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