ホンダと日産自動車が経営統合に向けて最終調整に入った。両社は、両社を傘下に置く持株会社を設立し、そこに三菱自動車も合流するという。3社による経営統合が実現すればトヨタグループ、独フォルクスワーゲングループに次ぐ、世界第3位の自動車メーカーグループとなる。
業績不振に喘ぐ日産は、11月、生産能力の2割縮小とグローバル社員9000人の削減を骨子とする構造改革策を発表した。再度の大規模リストラに追い込まれた要因をゴーン氏による「拡大路線の歪み」などと解説する向きもあるが、トップが引き継がれて既に8期目だ。EVで勝てず、HVもなく、販売奨励金に頼らざるを得ない状況にいつまでも手を打てなかった責任が “ゴーン以後の” 経営陣にあることは言うまでもない。
両社はこの3月、EV開発領域における協業に合意、8月には車載コンピューターの基本ソフトの共通化など業務提携の具体的な内容を発表、この時、三菱自動車の参画も表明されている。しかしながら、これが経営統合というレベルに一挙に進んだ背景には台湾の鴻海精密工業による日産株取得の動きがあったとされる。つまり、統合を主導したのは「外部」からの圧力であり、このタイミングでの発表は鴻海からの買収防衛とも解せよう。
さて、報道によると経営統合については “ほぼ合意” とのことである。であれば次の課題は経営体制だ。統合とは言え、実質的にはホンダによる救済的側面が強い。一方、大規模な開発投資を必要とするEV市場にあってホンダも今の規模では戦えない。当然、日産も対等を主張するであろう。しかし、そもそも「鴻海と組んでホンダを傘下に収めてやる!」ぐらいの覚悟と戦略をもったトップの不在が日産敗因の要諦である。よって、対等を前提とした経営スキームが成功するとは思えない。決定的とも言える企業文化のちがいを乗り越え、巨大自動車メーカーを率い、テスラやBYDと世界で戦うためにはそれこそゴーン氏以上の腕力と決断力が必要となる。