さあこの夢溢れる未来的な壊れ映えしそうな(← こら!)建物は、水戸市立西部図書館と申します、どかーん…… いや西部警察じゃないってば。市街の西、住宅街の外れの木々と田んぼに囲まれた静謐な知の殿堂でしたが、今や周囲はすっかり開けてます。
映画「図書館戦争」のロケに使われたことでよく知られます。
この芝生側の入り口はどうやら裏口扱いであることをあとから知りました。入ってすぐに
おおおお、と一枚シャッターを切ったところで話しかけられました。
「撮影の許可はお取りになりましたか?」
わあびっくり。許可制なんだ。たぶんこの建築に魅せられた人や「図書館戦争」のファンが勉強や読書をしている人たちの横でシャカシャカシャッターを押すのが問題になったのでしょう。それを一律禁止にするのではなく住所氏名を申告することで許可するという、間違いなくこれは英断です。もちろん私も一筆書いて許可を得ました。
記念カードまでいただけたりして。なにこのサービスぶり。
改めまして館内。息を呑むほどに見事な空間演出です。
特徴的な円形書架。この形で有名なのは大英図書館ですが、一地方都市の郊外図書館としては破格の美しさです。見かけばかりでなく収納力もあり、弧を描く書架の内側外側に本がびっしり。それが1階では四重に同心円を描きます。
児童図書の上にはこんなサインが。細やかで優しい配慮が野の草花のようにそちこちに。
円形書架は異次元ポケット。本の収納に余裕のある様子がわかりますか。私が入り浸る県立図書館では書架が限界で、借りられ抜かれた本のおかげで残りがなんとか収まっているように見えます。
朝日百科「植物の世界」全巻。場所を取るうえに出版年次も古く、多くの図書館では閉架図書になって手に取ることができません。もちろん県立図書館でも市立中央図書館でも。その中央図書館で検索したら西部図書館では開架にあるという。これが今日の訪問の理由なのでした。
それだけではありません。県立図書館では検索に当たらなかった本が3冊、何とここで実物に目を通すことができました。蔵書数では知りませんが「読みたい本が置いてある」という1点で市内最高の図書館と呼ばせていただきます。
なんて言うとお世話になっている県立図書館に悪いので弁護しておきます。県立図書館は伝統的に勉強の場と認識されてます。よって座席数が一定量確保されねばならず、その分書架が削られます。さらに言うならアレは元の県会議事堂。決して図書館として理想のレイアウトにはできてません。市立中央図書館に至っては街なかの手狭な造りで、開架も小ぢんまりしたものです。対して西部図書館は図書館としての理想を思う存分に詰め込んでイチから設計されたもの。充実は必然なのでした。
というわけで館内。知の迷宮とはまさにこれ。
何よりも夢にあふれてます。ああここにある本をすべて読破したなら私は世界を救えるんじゃないか。
なんて浮かれて円形書架の間を歩いていたら、ふと怖くなる瞬間がありました。どこまで行っても同じ風景、自分がどこにいるのかわからなくなったんです。まるで森に迷った時のように同じところをぐるぐると回るこの空間識喪失、自己喪失感。ここはどこだ、私は誰だ。なんてこった。本当にここは迷宮だったんです。もちろん迷うほどに楽しくなる迷宮です。
水戸市立西部図書館。迷宮に遊びたくなった時にまた来ましょ。
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