ユー‐エス‐エー‐アイ‐ディー【USAID】
読み方:ゆーえすえーあいでぃー
《United States Agency for International Development》米国国際開発局。開発途上国の資金・技術援助を行う国務省管轄の政府機関。1961年設立。
ユーエス‐エイド【USAID】
読み方:ゆーえすえいど
《United States Agency for International Development》⇒ユー-エス-エー-アイ-ディー(USAID)
米国国際開発庁
1961年、ケネディ大統領は対外援助法に署名し、米国の非軍事の海外援助を 1つの機関にまとめる行政命令を出した。これにより、それまでの国際協力局(ICA)、開発借款基金(DLF)、米国輸出入銀行業務の一部など、米国の非軍事海外援助を一つにまとめる機関としてUSAIDが設立された。援助の実施は政治的な意味合いを持つ経済支援基金 (ESF) と低開発国向けの開発援助 (DA) の形をとり、冷戦下には友好国を優先して行われた。
当初は大統領直属の連邦部局であったが、1998年以降国務省の指導下に置かれ、米国の外交政策をより強く反映させることになった。USAID長官は国務長官に報告義務を負っている。
USAIDの使命は、経済的、社会的な発展をめざして努力している発展途上国や移行国の人々を助けることにあるとされ、その活動はアメリカ政府の海外援助の主要な一翼を担っているが、反面、CIAと深い関係があるとの批判もされている。
USAIDの援助方針は政権によって変更されるが、現在の主な援助分野は以下の3つである。(1)経済成長、貿易振興、農業開発分野 (基礎教育、環境保護も含む)、(2)HIV/AIDSや他の感染症を含む健康・保健分野、(3)紛争予防や人道援助分野 (災害緊急援助も含む)。
なお、米国では、ミレニアム開発目標に対応するため、2004年ミレニアム挑戦公社(MCC)が新設されたが、その理事長は国務長官で、USAID長官は理事の一人となっている。
(清水利恭)
参考URL:USAIDホームページ http://www.usaid.gov/
アメリカ合衆国国際開発庁
アメリカ合衆国国際開発庁 United States Agency for International Development | |
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役職 | |
長官 |
マルコ・ルビオ(代理) ピート・マロッコ (Pete Marocco)(権限代行) |
組織 | |
上部組織 | 国務省 |
概要 | |
所在地 |
ワシントンD.C. ロナルド・レーガン・ビルディング |
定員 | 3,893人 |
年間予算 | 2,720億ドル(2016年度) |
設置 | 1961年11月3日 |
ウェブサイト | |
usaid |
アメリカ合衆国国際開発庁(アメリカがっしゅうこくこくさいかいはつちょう、英語: United States Agency for International Development, USAID)は、1961年に設置されたアメリカ合衆国のあらゆる全ての非軍事の海外援助(ただし、USAIDとアメリカ軍は密接な協力関係にあり、援助に軍事力を利用しないという意味ではない)を行う政府組織である。第2次ドナルド・トランプ政権において閉鎖される方針で、一部機能が国務省に統合されることが検討されていると報じられている[1][2]。
設立
背景には欧州へのマーシャル・プランやトルーマンのポイント・フォー・プログラムなどがある。1961年9月にジョン・F・ケネディは対外援助法に署名し米国の非軍事の海外援助を USAID として1つの機関にまとめる行政命令を出した。援助の実施は政治的な意味合いを持つ経済支援基金(ESF、Economic Support Fund)と低開発国向けの開発援助(DA、Development Assistance)のかたちをとり、冷戦下には友好国を優先して行われた。しかし近年はかつて敵対していたベトナムに設置をしておりジョナサン・アロシ駐越アメリカ副大使は「このセンターはダナン市の医療サービス業務に重要な貢献をするとともに、障害者支援における両国協力関係の象徴になるだろう」と発言していた。
活動
大統領に直属した連邦部局であったが、1998年以降は国務省の監督下に置かれ米国の外交政策を反映し、「より良い生活をたてるためにもがいたり、災害からの復興、自由で民主的な国で生活できるように努力するなどの海外の人々へ援助の手を広げて」[3]いる。
グローバル開発アライアンス、経済成長・貿易振興・農業開発、保健、紛争予防及び人道援助を4つの柱としている。
公安局(Office of Public Safety、OPS)は1957年に設置され対象国の警察に訓練や機材を提供していたが、1974年の対外援助法改定で廃止された。海外災害援助局は災害援助を担当する。1986年以降飢饉早期警戒システムネットワークが食料危機を監視している。
2012年からは、ベトナムにてベトナム戦争時に使用した枯葉剤貯蔵施設跡の浄化作業を始めた[4]。
スーダンの担当は、ジョー・バイデン大統領時に国連特別政治問題担当アメリカ合衆国代表代理でもあったロバート・A・ウッドであった。
またバイデン政権(首席補佐官はロン・クレイン、ジェフ・ザイエンツ)では、サマンサ・パワーが長官を務めた[5]。
アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)の閉鎖
2025年1月20日、ドナルド・トランプ大統領は2期目の就任直後、対外援助の一時停止を指示する大統領令14169号「米国の対外援助の再評価と再調整」に署名した。これにより、米国国際開発庁(USAID)の多くのプログラムが停止された。
さらに、トランプ政権は新たに政府効率化省(Department of Government Efficiency、略称DOGE)を設立し、イーロン・マスク氏を長官に任命した[2]。マスク長官はUSAIDの運営に対する批判を表明し、同庁の閉鎖手続きを開始した。
2025年2月5日、ホワイトハウスは、アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)が実施してきた過去の一連の「浪費と悪用」を指摘する声明を発表し、以下のような具体例を挙げた[6]。
- 150万ドル:セルビアの職場とビジネスコミュニティにおける多様性、公平性、包括性(DEI)の推進
- 7万ドル:アイルランドでの「DEIミュージカル」制作
- 250万ドル:ベトナムの電気自動車のため
- 4万7000ドル:コロンビアでの「トランスジェンダーオペラ」制作
- 3万2000ドル:ペルーでの「トランスジェンダー・コミックブック」制作
- 200万ドル:グアテマラでの性転換手術と「LGBT活動」の支援
- 600万ドル:エジプトの観光業への資金提供
- 数十万ドル:指定テロ組織と関連のある非営利団体への資金提供(監察総監が調査を開始した後も)
- 数百万ドル:武漢研究所との関係が指摘される エコヘルス・アライアンス(EcoHealth Alliance) への資金提供
- アルカイダ関連戦闘員への数十万食の食料供給
- 開発途上国での個別デザインの避妊具への資金提供
- 数億ドルが「灌漑用水路、農機具、さらには肥料」に使用され、アフガニスタンの ケシ栽培とヘロイン生産 を支え、結果的に タリバンの利益 となった
ホワイトハウスは声明の中で、「このリストは延々と続く。そして、このようなことが何十年にもわたって行われてきた」と述べ、トランプ政権の下でこのような「浪費、詐欺、不正を根絶する」と強調した。
2025年2月3日、ワシントンD.C.のUSAID本部において、職員の建物への立ち入りが禁止された。同日、国務長官のマルコ・ルビオがUSAIDの局長代理を務めていることが発表され、さらに権限を代行しているピート・マロッコ(Pete Marocco)が閉鎖手続きを担っていることが明らかになった[1]。今後、一部機能が国務省に統合されることが検討されている。
USAIDは約30か国で6,000人以上のジャーナリスト、700以上の独立系ニュースルーム、約300のメディア関連市民社会団体を支援してきた[7]。しかし現在、多くの受益者は、長期的な資金提供のリスクや政治的攻撃を恐れ、公に声を上げることを躊躇している[7]。
反応
民主党は、議会の承認なしにUSAIDを閉鎖するのは違法であると主張し、反発を強めている。また、国際的な人道支援団体や専門家からは、援助の停止が世界中の脆弱なコミュニティに深刻な影響を及ぼすとの懸念が表明されている[8]。一方、トランプ政権は対外援助の見直しが「米国の利益と安全保障を強化するために必要である」と主張している。
外交上の位置
1992年にリオ・デ・ジャネイロで行われた地球サミットで世界各国は開発援助委員会として知られる豊かな国(OECDのおよそ22ヶ国)に政府開発援助の目標を国民総生産の0.7%とすることを含んだアジェンダ21を採択した。米国の対外援助の水準はこのゴールに達しない(米国はGNPの約0.1%で世界で最も裕福な国の内で最低である)が、総額では米国は経済援助の世界で最大の提供者となっている。OECDによると2003年に162億5400万ドルを提供した。
脚注
- ^ a b “Rubio says he’s acting director of USAID as humanitarian agency is taken over by the State Department”. CNN.com. CNN. (2025年2月3日) 2025年2月4日閲覧。
- ^ a b “米国際開発局の閉鎖に着手、マスク氏主導 国務省に一部吸収か”. ロイター. (2025年2月4日) 2025年2月4日閲覧。
- ^ “About USAID”. United States Agency for International Development. 2011年1月9日閲覧。
- ^ “米、ベトナムで枯れ葉剤の浄化開始 205億円規模 完了までに10年”. AFP (2019年4月21日). 2019年5月2日閲覧。
- ^ "Who is Samantha Power? Meet the Biden-era USAID leader facing backlash amid Musk's DOGE crackdown"。FOXニュース、2025年2月5日。
- ^ “At USAID, Waste and Abuse Runs Deep”. White House (2025年2月5日). 2025年2月5日閲覧。
- ^ a b Jon Allsop (2025年2月4日). “USAID and the Media in a Time of Monsters”. Columbia Journalism Review 2025年2月6日閲覧。
- ^ “Trump halts foreign aid, raising concerns among global relief organizations”. AP通信. (2025年2月4日) 2025年2月4日閲覧。
参考文献
- 佐藤眞理子「2国間援助における援助政策理念と教育援助」JETRO 2000年3月
外部リンク
- USAIDのページへのリンク