Well-defined
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/24 17:20 UTC 版)
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数学における well-defined[注釈 1](ウェル・ディファインド)は、「定義によって一意の解釈または値が割り当てられる」ことを言う[2]。
定義
ある定義が well-defined であるのは次の二命題が示されたときである[3]。
- 実際に成立する
- (定義で)示された表式が成立しない場合[注釈 2]、well-defined であるとは言えない。
- 経由する中途の表式に依存しない
- 往々にして、(数学上の)定義はいくつもの表式を経由する[注釈 3]。このとき、最終的な結論が中途の表式に依存している場合[注釈 4]、well-defined であるとは言えない。
つまり定めた対象が一意に存在しているとき、well-defined であるという。
代数学的定義
写像と定義域上の同値関係に対して、次のように数式を用いて記述することもできる。 集合 X 上の同値関係 ≡ と写像 f: X → Y に対して
- x ≡ x′ ならば f(x) = f(x′)
が任意の x, x′ ∈ X に対して成立するとき、写像 f は関係 ≡ に関して well-defined であると言う[5]。
例
1. 円周率 π の定義「円の直径に対する円周の比」を考える。この定義に現われる円は具体的な中心や半径が指定されていないが、直径は零でないのでまず比を取ることはどの円に対してもできる。さらにすべての円は互いに相似であるから、直径に対する円周の比は途中で経由する具体的な円の選び方に依存しない。したがって、この円周率の定義は well-defined である。
2. 実数 a > 0 の x 乗の定義を考える。 x が有理数の場合に良く定義されているとして、x が実数の場合に定義を拡張したいとする。 このとき x に収束する有理数列 {xn} を用いて
- ax ≔ axn
と定義する場合、well-defined 性が問題になる[3]。 実際は、そのような {xn} を取ることができるし、右辺の極限は収束して極限値は {xn} の取り方によらずに一意に定まる (特に x が有理数のとき、もともとの定義と一致する)[6]。 したがってこの定義は well-defined である。
脚注
注釈
出典
参考文献
- Denlinger, Charles G. (2011). Elements of Real Analysis. Jones and Bartlett. ISBN 978-0-7637-7947-4
- (英語) オックスフォード現代英英辞典 (9 ed.). オックスフォード大学出版局. (2015)
- Weisstein, Eric W. (2008年6月1日). “Well-Defined -- from Wolfram MathWorld”. 2021年3月27日閲覧。
- 雪江 明彦『代数学1 群論入門』(初版)日本評論社、2010年11月25日。ISBN 978-4-535-78659-2。
- 横田 一郎『例題が教える群論入門』(初版)現代数学社、1976年11月20日。 NCID BN03365362。
- 数学セミナー編集部 編『数学の言葉づかい100』(初版)日本評論社、1999年4月25日。 NCID BA41426277。
関連項目
- 定義
- 未定義 (数学) (undefined)
well-defined
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/08/19 09:45 UTC 版)
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well-defined は、ある概念が数学的あるいは論理学的に特定の条件を公理に用いて定義・導入されるとき、その定義(における公理の組)が自己矛盾をその中に含み持たぬ状態にあることを言い表す修飾語句である。また、ある概念の定義をする場合、そう決めることによって、何も論理的な矛盾なく上手くいくということ(定義の整合性)が確認されているということを言い表す言葉である。文脈により、「うまく定義されている」「矛盾なく定まった」「定義可能である」などと表現されることもある。
well-defined は「状態」を表す形容詞であるが、日本語の定訳はなく慣例的に形容詞と動詞の複合語に訳されるか、そのまま形容動詞的に「well-defined である」といった形で用いる。名詞形 well-definedness などもあり、これを well-defined 性と記すことはできるが日本語訳としてこなれたものは特には存在しない(文脈によっては「定義可能性」などで代用可能である)。
概要
以下の二つが示せたとき、定義が well-defined であるという[1]。
- (1) 定義で使われる方法が実際にうまくいく。
- (2) 定義がもともとの対象から複数定まる対象を経由して行われる場合、結果がもともとの対象にのみ依存する。
一つの対象のある表示に対して定義が満たされるが、別のある表示については満たされない状況であるとか、一つの対象の異なる表示を考えると定義の示す結果がそれぞれの表示に対して異なるといった状況であるならば、与えられた定義はその対象自体に対する定義として不適切 (ill-defined) である。
例
例えば、写像あるいは(一価の)関数 f は代入原理と呼ばれる条件
を満たす対応(一意対応)でなければならないから、同値類に対する写像をその代表元を用いて定義しようとする場面などでは well-defined 性が問題になる。典型的なものが、代数学において商代数系(商群や商環、商ベクトル空間など)の演算を導入する場面に現れる。
鎖複体の射からホモロジー(これは鎖複体から定まるある商加群である)の間の準同型が誘導されるが、このときも well-defined 性が問題になる。上述の一意性に加え、写像の行き先が実際に終域に入っていることを確かめなくてはならない。
実数 a > 0 の実数 x 乗を、x に収束する有理数列 {xn} を用いて
と定義するときにも、well-defined 性が問題になる[1]。右辺の収束性と一意性({xn} の取り方によらないこと)である。
参考文献
- ^ a b 雪江明彦 『代数学1 群論入門』 日本評論社、2010年。ISBN 978-4-535-78659-2。
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