表面準位
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/07 08:35 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動表面準位 (ひょうめんじゅんい、Surface states) とは、材料の表面で見られる電子状態。表面で終わる固体材料からのシャープな遷移により形成され、表面に最も近い原子層でのみ見られる。表面を持つ材料の終端は、バルク材料から真空への電子バンド構造に変化をもたらす。表面のポテンシャルが弱くなると、新たな電子状態、いわゆる表面準位が形成される[1]。
凝縮体の界面における表面準位の起源
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ブロッホの定理で述べられているように、完全に周期的なポテンシャル(結晶)である単一電子シュレーディンガー方程式の固有状態はブロッホ波である[2]。
図4 ほとんど自由な電子の電子バンド構造の図。ブリルアンゾーンの境界から離れると電子波動関数は平面波の特性を持ち、分散関係は放物線になる。ブリルアンゾーンの境界では波動関数は入射波とブラッグ反射波からなる定在波である。最終的にこれによりバンドギャップが形成される。
ほとんど自由な電子の近似を用いて、狭ギャップ半導体の表面準位の基本的特性を導出することができる。この場合、半無限線形連鎖モデルも有用である[4]。しかし、ここでは原子鎖に沿ったポテンシャルはコサイン関数として変化すると仮定する。
図5 プラチナ原子のような軌道。示された軌道は密度汎関数計算で使われるダブルゼータ基底関数系の一部である。軌道は通常の量子数(n,l,m)により区別される。
単原子線形鎖の表面準位の結果は、3次元結晶の場合に対して簡単に一般化することができる。表面格子は2次元で周期性があるため、ブロッホの定理は表面に平行な並進に対しても成り立つ必要がある。結果として、表面準位は表面に平行なk値と1次元の表面準位を表す関数の積として書くことができる。
この準位のエネルギーは、項により増加し、
を得る。ここでm*は電子の有効質量。結晶表面、つまりz=0での整合条件は、各に対してそれぞれ満たされ、各に対して1つである必要がある。しかし、表面準位の一般的に異なるエネルギー準位が得られる。
真の表面準位と表面共鳴
表面準位はエネルギーと表面に平行な波動ベクトルにより書かれるが、バルク準位はと波数の両方により特徴づけられる。したがって表面の2次元ブリルアンゾーンでは、の各値に対してのロッドがバルクの3次元ブリルアンゾーンに延びている。これらのロッドにより切られているバルクエネルギーバンドにより、結晶の深くまで進む準位が可能になる。よって、一般的には真の表面準位と表面共鳴は区別される。真の表面準位は、バルクエネルギーバンドで減衰しないエネルギーバンドにより特徴づけられる。これらは禁制エネルギーギャップにのみ存在するため、図3に示すように表面に局在する。表面とバルク準位が縮退するエネルギーでは、表面とバルク準位が混ざり合い表面共鳴を形成する。このような準位はブロッホ波同様バルクの奥まで伝播することができるが、表面近くでは振幅が増大する。
タム準位
強結合モデルのフレームワークで計算される表面準位はしばしばタム準位と呼ばれる。強結合のアプローチでは、電子波動関数は通常、LCAO法として表される(図5参照)。この図では、表面の存在がバルク準位のエネルギーとは異なるエネルギーの表面準位を生じさせることを理解するのは簡単である。最上部の表面層にある原子は片側に結合パートナーがないため、その軌道は隣接する原子の軌道とあまり重ならない。したがって、結晶を形成する原子のエネルギー準位の分裂とシフトは、バルクよりも表面で小さくなる。
特定の軌道が化学結合、例えばSiまたはGeのsp3混成の原因である場合、表面の存在に強く影響され、結合が切断され、軌道の残りのローブ(丸い部分)が表面から突き出る。これはダングリングボンドと呼ばれる。このエネルギー準位は、バルクの値から大きくシフトすると予想される。
ショックレー準位の記述に用いられるほとんど自由な電子モデルとは対照的に、タム準位は遷移金属やワイドギャップ半導体の記述にも適している。
外的要因の表面準位
きれいで秩序だった表面から生じる表面準位は通常、内的(intrinsic)と呼ばれる。これらには再構成された表面から生じる準位が含まれている。ここでは2次元の並進対称性により表面のk空間にバンド構造が生じる。
外的要因(extrinsic)の表面準位は通常、きれいで秩序だった表面に由来しない準位として定義される。extrinsicのカテゴリに入る表面は[7]
- 表面の並進対称性が壊れている欠陥のある表面
- 吸着質のある表面
- 半導体酸化物もしくは半導体金属界面など2つの材料間の界面
- 固体相と液体相の界面
一般的に、extrinsicな表面準位は化学的、物理的、構造的特性から簡単に特徴づけることができない。
角度分解光電子分光(ARPES)
表面準位の分散を測定する実験技術は角度分解光電子分光(ARPES)もしくは角度分解紫外光電子分光法(ARUPS)である。
関連記事
脚注
- ^ a b Sidney G. Davison; Maria Steslicka (1992). Basic Theory of Surface States. Clarendon Press. ISBN 0-19-851990-7 .
- ^ a b C. Kittel (1996). Introduction to Solid State Physics. Wiley. pp. 80–150. ISBN 0-471-14286-7.
- ^ a b K. Oura; V.G. Lifshifts; A.A. Saranin; A. V. Zotov; M. Katayama (2003). “11”. Surface Science. Springer-Verlag, Berlin Heidelberg New York.
- ^ a b Feng Duan; Jin Guojin (2005). “7”. Condensed Matter Physics:Volume 1. World Scientific. ISBN 981-256-070-X.
- ^ W. Shockley (1939). “On the Surface States Associated with a Periodic Potential”. Phys. Rev. 56 (4): 317. Bibcode: 1939PhRv...56..317S. doi:10.1103/PhysRev.56.317.
- ^ I. Tamm (1932). “On the possible bound states of electrons on a crystal surface”. Phys. Z. Sowjetunion 1: 733.
- ^ Frederick Seitz; Henry Ehrenreich; David Turnbull (1996). Solid State Physics. Academic Press. pp. 80–150. ISBN 0-12-607729-0.
表面準位と同じ種類の言葉
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