MSAS
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/25 03:17 UTC 版)
MSAS(エムサス、運輸多目的衛星用衛星航法補強システム、英: MTSAT Satellite-based Augmentation System)は日本の静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS)。地上の電子基準点で計測したGPSの測位誤差情報を基に、MTSATを経由してGPSの誤差を補正する信号を航空機に提供する。GPS単独測位に比べて測位性能が向上した[1]。
運用
2005年2月26日にMTSAT-1Rが、2006年2月18日にはMTSAT-2がそれぞれH-IIAロケットにより打ち上げられた。MSASはシステムの確認、および最適化のため様々な試験を重ね、2007年9月27日に試験信号から正式な信号への切換を行い、MSASの供用が開始された[2]。2016年末にMTSAT-1Rが運用を終了した[3]。運輸多目的衛星運用終了後のSBAS機能については、準天頂衛星システムの静止軌道衛星(みちびき3号機)から2020年4月より配信中[4]。
衛星 | NMEA / PRN番号 | 経度 | 状態 |
---|---|---|---|
MTSAT-1R | NMEA #42 / PRN #129 | 140°E | 終了 |
MTSAT-2 | NMEA #50 / PRN #137 | 145°E | 終了 |
QZS-3 | NMEA #50 / PRN #137 | 127°E | 運用中 |
地上局として、国内13箇所に設置されているSLAS監視局を使い、常陸太田にある主統制局(MCS)から衛星にデータを送っている。MCSのバックアップ局(TMC)が所沢にある。[5]
MSASは当初、En Route(航空路)~ NPA(Non-Precision Approach)(非精密進入)の対応のみだったが、2023年からLPV(Localizer performance with vertical guidance)の試行を始めている。[6]
今後打ち上げ予定のみちびき6号機・7号機を使用した3機体制や、ICAOで新たに規格化されたL5 SBASへの対応が計画されている。[5]
機能
- インテグリティ機能
- GPSを監視し、99.99999%の確率で保証する誤差範囲情報(保護レベル)を提供する[7]。
- レンジング機能
- MTSATをGPS同様の測位衛星として常に利用可能となり、信頼性が向上する[7]。
- ディファレンシャル機能
- 誤差補正値を提供し、GPS単独で20m程度の精度(水平方向)が数m以内の精度に改善される[7]。
他国のSBAS
- アメリカ合衆国:WAAS(Wide Area Augmentation System)
- 欧州:EGNOS(European Geostationary-Satellite Navigation Overlay Service)
など。
参考文献
- ^ “MSASの測位精度評価”. 東京海洋大. 2013年7月18日閲覧。
- ^ “運輸多目的衛星用衛星航法補強システム(MSAS)信号の送信について”. 神戸航空衛星センター. 2010年9月25日閲覧。
- ^ “将来の航空交通システムに関する推進協議会 GNSS 検討アドホック活動報告書”. PBN検討WG (2016年8月). 2018年1月13日閲覧。
- ^ 準天頂衛星システムウェブサイト>>SBAS配信サービス, 準天頂衛星システムサービス株式会社 2020年1月11日閲覧。
- ^ a b SBASの最新動向 2024年12月25日閲覧。
- ^ [https://www.icao.int/APAC/Meetings/2023%20GBASSBAS%20ITF5/IP06%20-%20%20MSAS%20Program%20update%20-%20Japan.pdf MSAS program update (Presented by JCAB) accessdate=2024/12/25]
- ^ a b c “運輸多目的衛星用衛星航法補強システム(MSAS)飛行試験の実施について”. 国土交通省. 2010年9月25日閲覧。
関連項目
- MSASのページへのリンク