舟形
舟形
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/04 04:15 UTC 版)
「シクロヘキサンの立体配座」の記事における「舟形」の解説
舟形配座はいす形配座よりも高いエネルギーを有する。具体的には、2つのフラッグポール位(旗ざお位、flagpole)水素間の相互作用が立体ひずみ(英語版)を生み出す。ねじれひずみも、重なり形配座を取るC2–C3およびC5–C6結合間に存在する。このひずみのため、舟形配置は不安定である(すなわち局所的エネルギー極小ではない)。シクロヘキサンにおいて舟形配座はいす形配座よりも29 kJ/mol不安定である。この値はシクロヘキサン中において、ある瞬間に舟形配座をとっている分子数はいす形配座をとっている分子数の14万分の1に過ぎないことを示している。 配座エネルギーの解析によれば、舟形配座はポテンシャルエネルギー面の極小点ではなく鞍点にあたる。すなわち配座同士の変換の遷移状態に相当する。実際に極小点となっているのはボートの舳先をそれぞれ環の円周方向に逆向きにひねった形のねじれ舟形(twist-boat、twisted-boat、skew-boat、skewed-boat、またはskew)と呼ばれる配座である。これはシクロヘキサンにおいては舟形配座よりも6 kJ/mol安定である。ねじれ舟形配座はD2対称性を有する。 普通、シクロヘキサン環においてはねじれ舟形配座よりもいす形配座の方が安定な配座であるが、cis-1,4-ジ-tert-ブチルシクロヘキサンのようにかさ高い置換基がある場合、これらの置換基がバウスプリット位にあるねじれ舟形配座の方が安定になる場合がある。 舟形配座の分子対称性はC2vである。 舟形の立体配座においては、ボートの胴体部分を構成する4つの炭素に結合している置換基のうち、環のおおよその平面に垂直の方向に出ている置換基を擬アキシアル位(ぎアキシアルい、pseudo-axial)にあるといい、平面内の方向へ出ている置換基を擬エクアトリアル位(pseudo-equatrial)にあるという。また、ボートの舳先にあたる炭素に結合している置換基のうち環の内側に出ている置換基をフラッグポール位(旗ざお位、flagpole)にあるといい、環の外側に出ている置換基をバウスプリット位(船首斜檣、bowsprit)にあるという。
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