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教育訓練とは? わかりやすく解説

教育訓練

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/20 14:49 UTC 版)

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教育訓練(きょういくくんれん)とは職業教育職業訓練の合成語で、現在または将来に渡って要求される能力を開発するための人材育成手法の一つである。また教育訓練が実施される施設や機関を教育訓練施設教育訓練機関等と呼ぶ。

人材育成論としての「教育訓練」は1960年(昭和35年)の国民所得倍増計画において初めて用いられた概念である[1][注 1]

概説

教育と職業訓練の関係については様々な見方がある[1]。「教育訓練」は1960年(昭和35年)の国民所得倍増計画の「人的能力の向上と科学技術の振興」の章において初めて用いられたが、その文脈では「学校教育」と「職業訓練」を包摂する概念として用いられている[1][注 1]。やがて「教育訓練」は大局的な人材育成論の概念として用いられるようになった[1]

一般的に教育訓練には学業職業実技技能を含めた幅広い分野の指導が含まれる。日本の教育訓練プログラムでは、企業内においては日常の業務につきながら行うものをOJT(On-the-Job Trainingの略)と呼び、通常の業務を一時的に離れて行うものをOFF-JT(OFF the Job Trainingの略)と呼ぶ[3]

教育訓練は訓練の仕上がり像[4]や組み立てられた人材育成計画の各要素それぞれの目的に従い、相補的に行われる。また、それらは体系的かつ段階的に行われる。

しかしながら人材育成のプログラムが教育訓練に偏ると、対象者に能力向上への動機付けや印象付けを起こすことが難しくなる。育成対象者個々のレベルを見渡しながら、バランスよく行わないと大きな成果は期待できない。

教育訓練の実例

職業訓練における教育訓練

職業訓練と関連して用いられる教育訓練とは労働者の職業能力の開発や向上に役立たせるために都道府県市町村、民間団体などが設置した施設が行う教育訓練である[5]。従って、教育訓練には職業能力開発促進法で規定される公共職業能力開発施設が実施する職業訓練や学校教育法で規定される学校教育施設が実施する教育も含まれる。本来「職業訓練」は学校教育法で規定される「教育」とは区別されなければならない概念なので(学校教育と職業訓練を参照)、この両者と統合する概念として使われる用語である。

職業能力開発促進法における教育訓練は、第15条の6第3項の委託訓練の規定の中で用いられる。

災害予防における教育訓練

平成19年版防災白書」[6]には、災害予防としての教育訓練について説明されている[7]。それによれば政府と地方公共団体が連携して実施する防災訓練、警察庁による大規模災害警備訓練、防衛庁による自衛隊統合防災演習、日本放送協会による大規模災害等における放送確保等のための訓練、法務省による「法務省緊急連絡体制網」通信訓練などが教育訓練として挙げられている。

鉄鋼業界によるOFF-JTの実例

1962年、鉄鋼業界(一般社団法人日本鉄鋼連盟)は、産業技術短期大学兵庫県尼崎市・開学時は関西鉄鋼短期大学)を開学した。

日本の鉄鋼業界には、「鉄鋼業自らが大学を設立して業界の技術者を養成するとともに、一般社会の優秀な青年の教育にも貢献していくことで、社会とともに鉄鋼業の繁栄を目指す」という高い志と壮大な理念がある。この理念は、例えば「事業は人なり」、「経営においては、まず何よりも人を育てていかなければならない。単に仕事ができ、技術が優れている人ではだめで、『人間として社会人として立派な人』を育てなければ企業として発展しない」という考え方に通じている。

産業技術短期大学は、鉄鋼業が一丸となって開設した「世界でも類例を見ない特色ある大学」であり、2年間で4年制大学レベルの技術者教育を行うことを目標に、4年制大学水準のカリキュラムが設定された。また、そのモデルとなるような施設設備と人材が用意された。

日本鉄鋼連盟は、産業技術短期大学日本製鉄JFEスチール神戸製鋼所日新製鋼日立金属日本製鋼所愛知製鋼東洋鋼鈑トピー工業中山製鋼所三菱製鋼新日本電工中部鋼鈑などをはじめとする鉄鋼各社の若手・中堅層の従業員を再教育して、将来を担う優秀な技術者を育成してきた。具体的には、「製造現場における知識創造と人材の多機能育成政策・綿密な能力開発策のひとつとして、企業内選抜を経て中堅技術者への昇進に結びつく産業技術短期大学への派遣を行う政策の実行」であり、このような人材育成形態(教育訓練形態)を「オフ・ザ・ジョブ・トレーニング・OFF-JT」という。

鉄鋼業界各社から企業派遣学生として2年間産業技術短期大学で学んだ者は、現在までの合計で6,000名を越える。

人材の確保・育成は鉄鋼業界発展のための大きな課題であり、産業技術短期大学を活用するなど、今後も積極的に人材獲得・育成に取り組むものと見られる。

脚注

注釈

  1. ^ a b 1938年(昭和13年)の国家総動員法にも「教育訓練」という語句はあったが戦後廃止されており制度上も関連はない[2]

出典

  1. ^ a b c d 田中万年『職業訓練原理』、2006年、40頁。
  2. ^ 田中万年『職業訓練原理』、2006年、43頁。
  3. ^ 「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」資料6(厚生労働省職業能力開発局)
  4. ^ 訓練の仕上がり像とは訓練のカリキュラムが目指すゴールシークで目標設定と混同されることがあるが、理解度やスキルや技能といった定量的に数値化が難しいものが含まれるため目標設定とは区別される。
  5. ^ 厚生労働省職業能力開発局編『新訂版職業能力開発促進法—労働法コンメンタール8—』(株)労務行政、220頁、2002年
  6. ^ 平成19年版防災白書内閣府
  7. ^ 第4章 災害予防平成19年版防災白書、内閣府)

参考文献

ほか

関連項目


教育訓練

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 19:08 UTC 版)

雇用調整助成金」の記事における「教育訓練」の解説

助成金支給対象となる教育訓練は、職業に関する知識技能または技術習得させ、または向上させることを目的とする教育訓練講習等であって所定労働日所定労働時間内に実施され、かつ、当該教育訓練講習等受講する労働者当該所定労働日全一日にわたり業務に就かないものをいうまた、職業に関する」とは、現在就いている職業直接関係するもの限らず、現在就いている職業関連する周辺技能知識に関するものも含まれる他、事業活動縮小に伴い配置転換をする場合などに必要な訓練含まれる具体的には、以下のすべてを満たす必要がある労使間の協定によるのであること。 事業主が自ら指定した対象期間内に行われるのであること。 判定基礎期間における対象労働者係る休業又は教育訓練の実施日延日数が、対象労働者係る所定労働延日数20分の1中小企業以外の場合15分の1)以上となるものであること。 職業関連する知識技術習得させ、または向上させることを目的とする教育訓練講習等であって下記参照)、かつ、受講者当該受講日に業務(本助成金対象となる教育訓練を除く)に就かせないのであること。 所定労働日所定労働時間内において実施されるのであること(半日訓練場合当日残り時間帯業務就かせることはできないが、休業することは可能)。 事業所内訓練の場合は、事業主が自ら実施するものであって生産ラインまたは就労の場における通常の生産活動区別して受講する対象労働者所定労働時間全日または半日3時間以上で所定労働時間未満)にわたり行われるのであること。事業所訓練場合は、教育訓練の実施主体助成金受けようとする事業主以外であって受講者所定労働時間の全1日または半日にわたり行われるのであること。 なお、教育訓練の内容が以下のいずれかに該当する場合には受給できない1.~5.については、平成25年12月1日以後判断基準追加された。 職業に関する知識技能または技術習得または向上を目的としないもの(例:意識改革研修モラル向上研修寺社での座禅 等) 職業または職務種類問わず職業人として共通して必要となるもの(例:接遇マナー講習、パワハラ・セクハラ研修メンタルヘルス研修 等) 趣味教養身につけることを目的とするもの(例:日常会話程度語学習得のみを目的とする講習話し方教室 等) 実施目的訓練直接関連しない内容のもの(例:講演会研究発表会学会 等通常の事業活動として遂行されることが適切なもの(例:自社商品知識研修QCサークル 等) 当該企業において通常の教育カリキュラム位置づけられているもの(例:入社時研修新任管理職研修中堅職員研修OJT 等) 法令義務づけられているもの 事業所内で実施する訓練場合通常の生産ライン行われるものなど、通常の生産活動区別がつかないものまたは教育訓練過程生産されたものを販売するもの 当該教育訓練の科目職種等の内容について知識または技能有する指導員または講師により行われないもの 指導員または講師不在のまま自習等を行うもの 転職再就職準備目的したもの 過去行った教育訓練を、同一労働者実施するもの 海外実施するもの 外国人技能実習生に対して実施するもの

※この「教育訓練」の解説は、「雇用調整助成金」の解説の一部です。
「教育訓練」を含む「雇用調整助成金」の記事については、「雇用調整助成金」の概要を参照ください。

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