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column 2024.10.8
 

地域材を学びながらつかう【連載第3回】

鎌倉R不動産
 

鎌倉R不動産で「地域材を学びながらつかう」ことについてコラムを書くことにしました。第3回は、南足柄の森近くの製材所での話。

コラムの第1回第2回もぜひご覧ください。

小髙材木店。奥に見えるラスティック感のある建屋がたまらない。

地域の製材所へ

南足柄の森を見学した日の午後は、近くの製材所「小髙材木店」を訪問。

原木から製材された様々なサイズや形の木材が敷地内に並んでいる。そこにフォークリフトで運ばれてきて材が置かれる。見ていると、黒く腐ってみえるような箇所や、いくつかの白い線のようなものが目に留まる。聞いてみると、「そこがカミキリ虫に食われた跡だよ」と教えられたのだった。
(※小髙材木店へ訪問する前に、森の中で聞いたばかりの「カミキリ虫」の話は第2回のコラムをご覧ください。)

着いて早々、さっそく目にした虫食いの跡。確かに目立つし、気になるといえば気になる。でもやっぱり、木そのものは自然のものだし、このように虫に食われるのだって自然なこと。見た目以外に、例えば強度などに問題があったりするのか尋ねると「この程度なら強度も変わらないよ。見た目の問題だけだね」とのこと。何を美しいと感じるかは人それぞれだけど、実際に見てみると、少なくとも、この状態の木がもっと多くの人にとって「選択肢の一つ」にはなって欲しいと感じた。

真ん中の黒っぽい箇所がカミキリ虫に食われて変色したところ。

「製材するとこ見る?」と、話はそこそこに、原木を製材する工程を見せてくれることに。製材機の電源を入れて、大きな刃がグングン動く。原木の丸太を台に乗せて、スライスするように切っていく。目の前で6枚ほどの板に切られる。目の前に並べられると、やはり木目や節をまじまじと見てしまう。製材機に丸太をどの向きで置くかで、節の出方や木目が決まる。これは、丸太の表面にある節の跡の場所などから、経験値をもって判断しているとのこと。

中央に建つのが製材機。手前に置かれているのが、実演して切られたばかりの製材後の板。

この地域の木材を求めて

そんな小髙材木店には、この地域の材を求めて、地元だけではなく都内などからも、オーダーがあるそうだ。「足柄の材をつかいたいなんて、変な人ばっかりだよね」なんて、小髙さんは言う。小髙材木店で扱う木の98%はこの地域の材。この地域には以前は数件あった製材所も、いまでは小髙材木店だけになってしまった。

「最近は変なお客さんが増えたよね」とも小髙さんは言う。でも、それは、小髙材木店がいろんなオーダーに応え続けてきた結果なんだろうなと、お会いしてお話を聞いて、様々なサイズや形に加工されて並べられている製材を見て、1週間ほどで乾燥できるという自作の乾燥機という設備も見て、そう思った。そして小髙さんの話しぶりから、そんな”変なお客さん”との仕事が楽しいんだろうな、と勝手に想像しつつ、たぶん間違いない気もしている。

私たちも、個性的な物件を案内している時に、普通の物件に満足しなくなってしまったようなお客さんと盛り上がり、私たちがたまに言う「グルーヴ感」を感じるひとときがあったりする。そんな「グルーヴ感」が生まれていそうな空気を、小髙材木店の製材所には感じた。

原木の丸太から、いろんなサイズや形に製材された木材たち。

小髙材木店には、南足柄の材を選択肢の一つにする人たちが増えてきていた。そして私たちも、そこに加わろうとしている。見学の最後に、製材所の端にある小屋で、私たちがオーダーしたい内容を相談。そして小髙さんからもアイデアをもらい、熱気のこもる小屋をあとにして、南足柄でのアツい1日が終了した。

「やっぱいいじゃんこれ」を見つけて伝えること

私たちの兄弟会社の八女流からの紹介でつながってきたこのご縁。あしがら森の会議に森を案内してもらい、そこで育った木を製材する小髙材木店の製材所を見学する。この後につながるのは、私たちでその木材をつかって建物を改装し、仲介して、そこに住む人につないでいく。そして、その住んだ人が友人や次に住む人などへと広げていく。そんなつながりと広がりのきっかけをこれからつくっていく。

私たちの知らないところで「なんだかこれ良くないよね」と振り分けられてしまって、私たちの選択肢にすらあがってきていなかったものたち。そのようなものを見つけて再評価すること。きっとどこかにもっと、それを好きになる人がいるはず。鎌倉R不動産が物件探しの時に大切にしていることと、今回、この森で感じたこと、本質的には同じことでした。私たちが今回思った南足柄の木の「やっぱいいじゃんこれ」に、共感してくれそうな人たちに、ちょっとづつ届いていったら嬉しい。

ということで、この南足柄の木材のコラムはもうちょっと続きます!

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