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宮腰精機、オフセット輪転印刷機の完全自動化へ

匠の技を見える化〜「yaless AI」開発

 宮腰精機(株)(秋田県大仙市、宮腰亨社長)が顧客から寄せられた意見や要望を最大限に活かし、市場ニーズを踏まえた明確なユーザー動向、課題解決、SDGsをテーマに約3年の歳月を経て開発されたオフセット印刷設定操作AIアシスタントシステム「yaless AI」。損紙低減、生産効率向上、人材不足・育成の課題を解決する「yaless AI」は、令和4年度に採択された成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)を活用して開発されたもの。5月9日には、秋田県庁において「yaless AI」の開発成果発表記者会見が行われた。


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yaless AIを搭載したMLP13M

Go-Tech事業を活用して開発

 会見には、宮腰精機から宮腰社長と国見工場の藤原鈴司工場長、そして公益財団法人 あきた企業活性化センターの菊地智英専務理事が出席。会見の冒頭、挨拶した宮腰社長は、「当社の顧客である印刷産業は、様々な課題を抱えている。その課題を解決するために、新たなソフトウェア開発に着手した」と、今回の開発の経緯について説明した上で「今回の開発は、秋田県産業技術センターや、あきた企業活性化センターなどの支援を得て、『オール秋田』でこの開発をやり遂げることができた。これからは、秋田県内から日本だけでなく海外の印刷市場に向けて発信、納入をしていきたい」と述べ、改めて関係諸団体の協力に対し、感謝の意を伝えた。


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宮腰 社長

 同社が「yaless AI」の開発に活用したGo-Tech事業は、中小企業者等が有するものづくり基盤技術及びサービスの高度化に向けて、研究機関等と連携して行う事業化に繋がる可能性の高い研究開発及びその成果の販路開拓への取り組みを一貫して支援する制度。

 宮腰精機は、この制度を活用し、損紙低減、コストダウン、技術継承などの課題に直面する印刷会社を支援するために「yaless AI」の開発を開始した。

 開発に至った経緯について藤原工場長は、印刷機の操作には匠の技が必要であること、熟練オペレーター不在による印刷不良の増加などを挙げた上で「作業環境の改善や環境問題への配慮に対し、AIやIoTなどの最新技術で全方位型の開発を進め、これらの課題解決に貢献していくことを目的に着手した」と説明した。

 開発の方向性としては、同社独自の技術を搭載し、競合他社機と差別化を図っていくこと、さらに付加価値を提供することで価格競争だけの受注活動にならないような機能を装備することをコンセプトとし、開発に着手した。

損紙低減・作業短縮・予知保全を実現する「yaless AI」

 「yaless AI」は、最適な印刷品質を担保するための最先端センサー技術を導入し、得られたデータを学習させ、誰でも簡単、効率的に運用できる特徴を有するシステム。機器が設置された工場内の温度や湿度を計測し、ユニット全色にセットされた版面、水舟、インキの温度センサーと印刷面全体の輝度変化量をユニット各色2箇所に設置されたカメラが監視する。巻き取り前にインキ濃度と網点を計測することで最適な印刷特性を割り出す。各所のセンサーにより得た情報は、常時モニターに表示されており、最適な設定値から外れた場合や規定値を超えそうな場合など、印刷状態が可視化され、オペレーターはその情報をもとに設定を最適化し、最高の品質を維持することができる。

 これらの機能により従来、経験と勘をもとに行っていた作業がすべてデータ化されるので、経験の浅いオペレーターでも最適な印刷環境を生み出すことができ、短期間でもオペレーター育成が可能となる。

2024年には新型オフセットラベル印刷機への搭載を予定

 「yaless AI」は、印刷前工程での細かい設定や印刷品質の確認工程を削減し、最大30%から50%の損紙を低減することを目標に、インキ量、稼働時間、使用電力量の削減を行える環境を構築する。

 多品種・小ロット化が進む、現在の印刷市場において「yaless AI」は、コスト削減、省人化、生産効率向上に最大限の効果を発揮する。

 また、「yaless AI」は、新機種だけではなく、ミヤコシ製既存機にもレトロフィットが可能で、今後は世界中にある印刷機の設置環境や設定データを「yaless AI クラウド」に集積し、そのビッグデータを活用できるアプリケーションを開発する予定。将来的には、オペレーターが煩雑な設定をしないフルオートメーションの実現を見据え、開発を進めている。


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連日大盛況だったIGAS2022での稼働実演

 すでに「IGAS2022」や「Label Expo2023」など、国内外の展示会に「yaless AI」を搭載したオフセットラベル印刷機「MLP13M」を参考出展し、その開発成果を紹介するとともに、各展示会で実施したデモを通じて来場者からの意見や要望など抽出し、さらなる改善につなげている。

 さらに国内外のユーザーによるデータテストも同時に進めており、これらの実稼働で得た情報も、さらなる機能強化に活用している。

 同社では現在、完全自動化を実現する第2段階の開発を推し進めており、2024年に新型オフセットラベル印刷機への搭載を予定している。

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