池澤あやかの 体験!スマートワークテクノロジー - 第6回
思わずカワイイを連発! 自由度の高い人の役に立つロボット「タピア」はノリから生まれた!?―前編
MJI「プレゼンテーションタピアセット」
さまざまな働き方改革を実現するソリューションに触れ、体験する、池澤あやかさんの連載。今回は、かわいいロボットの形をしたデジタルサイネージ、MJIの「タピア」です。コミュニケーションロボットづくりを目指す企業として2015年7月に設立したまだ若い会社ですが、この「タピア」の発売以降、各方面から注目を集めており、さまざまなイベントや宿泊施設、観光スポットなどで利用されています。そんな「タピア」の秘密に池澤あやかさんが迫りました。今回は前編と後編に分けてお届けします。
取材/池澤あやか、文/飯島範久、写真/岡田清孝
タレント/エンジニア
池澤あやか
@ikeay
第6回東宝「シンデレラ」オーディションで審査員特別賞に選ばれ、タレントとして活躍する一方、慶應義塾大学 環境情報学部(SFC)在学中にプログラミングに目覚める。大学卒業後もプログラミングができるタレントという特技を活かして活動中。
小さい企業ならではの“ノリ”で生まれた「タピア」
青山にあるMJIのオフィスを訪れると、さっそく入り口の「タピア」が受け付けて出迎えてくれました。
池澤あやかさん(以下池澤) 「かわいいですね。意外と大きいですけど、中身ってどうなっているんだろう?」
さっそく、中身のことが気になるご様子。今回対応していただいたのは、共同創設者であり代表取締役の永守知博さん。
永守知博さん(以下永守) 「スケルトンモデルがあるので見てみますか」
池澤 「スケルトンがあるんですね」
目をキラキラさせながら、持ってきていただいたスケルトンモデルをマジマジと眺める池澤さん。
池澤 「中身は意外と空洞なんですね」
永守 「そうなんです。まだまだ、ちょっと伸びる余地があるっていうことですね」
池澤 「すごい。ここに伸びしろがある! 何でこのサイズにしたんですか?」
永守 「何となくサッカーボールぐらいのサイズがいいかなって。うちは大企業ではないので、コンセプトを詰めてどうこうするという感じじゃないんですよ。意外とノリでやっていたりするので、あとから考えると何だったっけと思うことが多いですね(笑)」
池澤 「じゃあ、ノリでサッカーボールぐらいのサイズにしたという」
永守 「そうですね。社長のトニー(・シュウ)が『だるまみたいだ』って言い出して。僕は無印(良品)っぽいやつって言い出して。お互い言いたいこと言って、こんな形になりました」
池澤 「なるほど、無印が作っただるまみたいな感じですね」
永守 「こういうハードウェアは、何年かすると陳腐化するんですよ。でも陳腐化して置いといても、キレイに映るものって何だろうと思ったときに、やっぱり無印っぽいものが、飽きのこないデザインだと思うんです」
池澤 「確かに。ロボットとしてはコンパクトですね」
永守 「そうですね。だからドラッグストアだとか、受付とかにも置けるちょうどいいサイズなんです。これ以上小さ過ぎると、気がついてもらえないので。あと、シニアの方が、抱きかかえるのにちょうどいいみたいです」
池澤 「これ抱いてもいいんですか?」
永守 「大丈夫です」
池澤 「あ。意外と重い!」
永守 「2.5kgあります。バッテリー駆動なので、バッテリーが重いんですね」
池澤 「確かにバッテリーが入ってる。どれぐらいもつんですか?」
永守 「だいたい連続可動で7時間ぐらい持ちます」
池澤 「2.5kgだと持ち運べないなぁ。この目がカワイイですね」
永守 「ちょっと会社案内をさせましょう」
タピアを操作すると、傍らに置かれたPCの画面に動画が表示され、それに対してタピアが会社案内をはじめました。きちんと、動画の映像タイミングにあわせてしゃべっていて、人が説明しているのと変わりません。
永守 「これは、プレゼンタピアという商品なんですが、日本語のほか英語、中国語、韓国語の4ヵ国語でしゃべれるんです」
池澤 「すごい! このプロジェクトは、どういうところからスタートしたんですか?」
永守 「もともと僕とトニーは、いろんな意味でビジネスを一緒に何年かやっていたんです。2014年末に食事をしていたとき『永守さんロボットやらない?』って言われて、『やりましょうか』って言ったのがスタートですね」
池澤 「即やりましょうって、信頼関係ですね」
永守 「それから、どんなロボットを作ろうかと考えたので。あまりビジネスプランはなかったんです」
池澤 「何でロボット作ろうと?」
永守 「ノリに近い感じですね(笑)。トニーも僕もそうなんですが、電気屋さんだったので、このタイミングでロボットやっていないと、後悔するかもしれないと。トニーはご両親にスマホを渡したんだけど、どうも使えなくて。なのでシニアの方にも使えるようなデバイスを作りたいという思いから、こういう形のロボットにしたんでしょう。2人の意見がごちゃ混ぜになっているので、結局ノリという表現がいちばん近いと思います」
池澤 「もともと電気屋さんだったんですね」
永守 「僕自身は電気の大学出てますし、電気の仕事しかしませんので、いわゆるメカトロニクスの世界に生きてきた2人です」
池澤 「どういうものをやられていたんですか?」
永守 「発電機とかメガソーラーですね」
池澤 「それは規模が大きいですね」
永守 「規模は大きいですが、電気屋さんっていったら電気屋さんです」
池澤 「家電とかだと思っていたらまったく違ってた(笑)」
永守 「トニーはロボット掃除機もやってましたから家電系もやってはいます」
池澤 「なるほど。じゃあ、結構そういう電気的な知識も詰め込まれたと」
永守 「どちらかというと、われわれの強みはマスプロダクションといわれている量産の技術ですね。結構皆さん、研究室で1台限りのものに評価がいきがちなんですが、いやいやいや、一気にたくさんマスプロダクションするほうがものすごい技術が必要で、同じ品質を保つことはすごく大変なんです。それがわれわれの強みだと思ってやっています」
池澤 「確かに、量産するための設計って大変そうです」
タピアはプレゼンだけじゃないさまざまな使い方
池澤 「シニアがターゲットとのことですが、どういう使い方をしてほしいんですか?」
永守 「認知症が始まる方は、結構しゃべることが少なかったりします。だからタピアにしゃべりかけて、コミュニケーションをとってもらいたいですね。孤独がいちばん怖いので、孤独を解消するようなロボットでありたい。あと、ここにカメラが付いていますので、離れたお子さんと会話することもできます。そういったコミュニケーションのとり方をしてもらえるといいと思います」
池澤 「なるほど。ということは、電話というかSNSなんかで息子さんや娘さんとつながる」
永守 「どっちかっていうとSkypeみたいな感じですね。ちょっとデモをお見せしましょう」
スマホの相手とテレビ電話のように会話するデモを見せてもらいました。このタピアは、企業向けだけでなく個人向けとしても販売されています。
池澤 「企業向けと個人向けと製品内容は違うんですか?」
永守 「ハードウェアは基本的に同じですが、入っているソフトが違ってきます」
池澤 「じゃあ、購入するときは、利用方法を考えた上で購入しなければならないと」
永守 「基本的に、個人向けはネットのストアで販売している1種類だけです。法人向けは利用方法に合わせてカスタマイズできるようになっています。アプリケーションを入れることによっていろんなことができるパソコンに近いですね」
池澤 「取りあえずネットで買っちゃったけど、企業用にカスタマイズしたい、というときは……」
永守 「それはまた別で、別途SDK(ソフトウェア開発キット)があるので。それを購入していただくとカスタマイズできます」
ここで、プレゼンタピアを使って、池澤さんの顔を登録し、顔認証できるようにしてもらいました。名前や年齢など質問に答えていき、最後に顔写真を撮影すれば登録完了です。タピアのモニターが水色のときに話し掛けると、聞き取ってくれます。タピアの質問に対しては、「はい」や「いいえ」、「いいよ」、「駄目だよ」などと答えることで、判断してくれます。そんなにゆっくり話さなくても認識してくれました。登録が完了すると、顔で認識して名前を呼びかけてくれます。
タピア 「はい、あやかさん、何でしょうか」
池澤 「きょうの天気を教えて」
タピア 「きょう、東京は快晴の一日です。最高気温23度、最低気温10度です。お話ししよう」
永守 「住所を東京で登録してたので、東京の天気を言ってくれます」
一覧にある質問事項を話すと、答えてくれます。ほかにもニュースや音楽を掛けたり、さまざまなコミュニケーションができます。またスマホ用に「タピアあぷり」というのがあり、タピアとリンクさせることで、「写真のダウンロード・確認」や「みまもり」、さきほど行った「ビデオ通話」ができます。
永守 「みまもり機能は、お部屋に置いて、わんちゃんの状況を見たり、ご両親がどうなってるか見たりといった見守りができます」
池澤 「こっちを見ている。すっごくかわいいロボットですね」
永守 「ありがとうございます。簡単に設置して見守れるのがタピアの売りですね」
池澤 「どういう利用方法が多いんですか?」
永守 「コンシューマー向けは、発売して2年になりますが、ロボットとしては9万8000円という破格の価格だったので、最初アーリーアダプターの方がほとんどでした。その後は、離れた人とのコミュニケーションで利用する方が多いと思います。実際BtoBのカスタマイズモデルでも、シニア向けっていうのがすごく売れてますね」
池澤 「ほかにはどんな使いかたを?」
永守 「中小企業の経営者向けで説明したことがあって、たとえば会社の机の上にこれを置いて、社員が悪口言ってないか離れた場所から見られるんですよ」
池澤 「うわー怖い。そっか、映像だけでなく音も聞こえる」
永守 「要するに社内を“見守り”しているわけです。“監視”じゃないです(笑)」
池澤 「見守り(笑)」
永守 「離れていても君たちのこと考えてるよって、見守りをするわけです(笑)。そうしたら『それはいい』って、10台買われた方がいらっしゃいました」
池澤 「これで、ミーティングとかもできるんですか」
永守 「もちろんできますね。各席に全部タピアを置いて、タピアでしゃべるとかね」
池澤 「もはや、全員がタピア(笑)。BtoB向けだと、どういった業種がよく購入されるのでしょう」
永守 「いちばん多いのがホテルですね。一度ホテルに導入したら、海外のホテルからも引き合いがありました」
池澤 「だから、何ヵ国語かに対応してるんですか?」
永守 「そうですね。ただ日本でも中国語圏の方がいらっしゃっていますので、そういうインバウンドへの対応をすることもできます。技術的には何語でも対応できますので。どのような国の方が来ても、コンシェルジュとして話すことができます。ちょっとしたホテルの説明だったり、非常階段の説明だったりなど大事な話ってありますよね。それぐらい簡単なことであれば、ロボットでも対応できるので利用してもらえると思います。タピアは人の代わりになるロボットではなく、人に寄り添って、人の手助けをするロボットを目指しているので。そういうお仕事のお手伝いをして、人手を減らしていければと思います」
池澤 「音声認識は日本語以外もできるんですか?」
永守 「日本で現在販売しているものは、日本語だけですけど、今後出していく予定です。しゃべる方に関しては4ヵ国に対応しています」
池澤 「結構日本語より流ちょうにしゃべりますよね」
永守 「英語や中国語ができなくても、テキストを読み込んでいるだけなので、たとえばGoogleで翻訳したものをコピペすれば、きちんと英語でプレゼンしてくれます。企業の説明でも重宝すると思います」
池澤 「確かに」
タピアのしゃべりが記載されているExcelのファイルを見せていただきましたが、しゃべる内容だけでなく、言語やしゃべるタイミング、動きの指示もしてありました。これをjsonファイルに書き出して設定すればいいだけだそうです。
永守 「道の駅とかの観光案内をロボットでやっていて、ハングルを知らなくてもタピアならちゃんと話してくれるわけです。道の駅だけでなく、展示会とかデパートとか、外国人観光客や招待客が来るような場所には、かなり有効だと思います。とくに展示会は非常に需要が多くて、動画をリピートして延々と流し続けられるので1台置いておくと説明が楽になります」
ほかにも問診とか検査説明とかをタピアにやらせるデモを視聴。説明とかは、患者ごとに同じことを何回も言わなければならないので、看護師さんの負担をへらすためにタピアは有効でしょう。
永守 「タピアにはFeliCa決済機能が付いてるので、それを利用したサービスとかも考えられます。Androidベースなので、やろうと思えば何でもできると思っていただければいいと思います」
◆
前編はここまで、後編へと続きます。
思わずカワイイを連発! 自由度の高い人の役に立つロボット「タピア」はノリから生まれた!?―後編 >
今回紹介したソリューション
ロボット型ビジネス向け新感覚デジタルサイネージ
人間は非常に豊かにコミュニケーションをすることができますが、頭の中にあるイメージを見せたり、外国語で会話をしたり、不特定多数の人の興味を引いたりするなど、苦手なコミュニケーションもあります。こうした苦手なコミュニケーションや、より効果的なコミュニケーションを実現するのが、ロボットとモニターを組み合わせた新感覚のデジタルサイネージ「タピア」です。日本語をはじめ英語、中国語、韓国語の4カ国語に対応でき、訪日外国人客への対応も可能です。またネットワークケーブルが必要ないのでさまざまなシーンで利用でき、人では不可能な24時間365日の稼働を実現します。