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お知らせ

いま注目の本! 筒井康隆『敵』

老人文学の金字塔が映画化、東京国際映画祭で三冠受賞! 公開は2025年1月17日。

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 東京国際映画祭で筒井康隆さん原作の「敵」が東京グランプリ、最優秀監督賞(吉田大八監督)、最優秀男優賞(長塚京三さん)の三冠を獲得しました。
 映画はモノクロームで撮られ、まずその美しさ(特に俳優たちの顔)に惹かれますが、白黒の画面は、徐々に(によって!)日常がズレ始める異化効果においても抜群の力を発揮します。ロケ撮影された、主人公渡辺儀助が独りで暮す日本家屋も実に素敵な佇まい。
 原作は筒井さんらしい企みに満ちた「老人文学の傑作」(文庫版解説の川本三郎氏評)。渡辺儀助の日常を描いた果ての、文字でしか表現できない技を用いた大団円の感動に、映画版は実に映画らしい処理で対抗します。エンディングに至る最後の数カットは鳥肌もの。
 一年足らずの物語の中で〈進行する老い〉を微細に表現し尽した長塚さんの演技や吉田監督の演出は巧妙で精緻ながら、原作者が儀助老人に扮した通常版文庫カバーの写真を眺めていると、筒井康隆原作・主演版「敵」というのも観てみたいなあと思えてきます。

波 2025年1月号「いま話題の本」より

著者紹介

筒井康隆ツツイ・ヤスタカ

1934(昭和9)年、大阪市生れ。同志社大学卒。1960年、弟3人とSF同人誌〈NULL〉を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が〈宝石〉に転載される。1965年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。1981年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、1987年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、1989(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、1992年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。1996年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。1997年、パゾリーニ賞受賞。2000年、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞。2002年、紫綬褒章受章。2010年、菊池寛賞受賞。2017年、『モナドの領域』で毎日芸術賞を受賞。他に『家族八景』『敵』『ダンシング・ヴァニティ』『アホの壁』『現代語裏辞典』『聖痕』『世界はゴ冗談』『ジャックポット』等著書多数。

書籍紹介

雑誌紹介