政府・与党が検察庁法改正案の今国会での成立を断念したのは、インターネットでの反対世論の盛り上がりが背景にある。ネットを用いた選挙・政治活動に詳しい自民党の山田太郎参院議員に聞いた。(沢田大典)
--一連の動きの見方は
「新しい政治活動の幕開けというと極端だが、ネットが力を持ち始めた。ネットの世界ではノイジーマイノリティー(声高な少数派)とサイレントマジョリティー(物言わぬ多数派)という言い方をする。前者はいつも批判したり騒いだりする人で、数%以内だ。この人たちを世論だと思っても仕方がない。今回は普段は政治に声を上げない、政治的に中立なサイレントマジョリティーが動いた。芸能人も巻き込み、それが鮮明になった」
--なぜ広がったのか
「ネットの世論は『公平感』と『平等感』を求めるのが特徴だ。そこに抵触した。不満・疑問点は3つ。黒川弘務・東京高検検事長の定年を延長することで検察庁が政治的な手心を加えフェアな社会が実現できなくなるのではないか、新型コロナウイルスに対応している時期には不要不急ではないか、三権分立に反するのではないか、だ」
--不正確な情報に基づく意見もあった
「ネットには自浄作用がある。正確な情報を探し出してくれる人はいる。SNSを中心とした動きだったが、SNSは偏った意見の人同士でつながりやすい。自民党好き、自民党嫌い同士など。そうした垣根がなく広がった世論だということを間違えてはいけない」
--政府・与党の受け止め、対応については
「ネットをなめていたという感じがしなくもない。疑問に答えるのではなく『それは間違っている』と、制度の説明をしてしまった。日米安全保障条約や安保関連法のように、政権の命運をかけて強行採決をするようなものではない」
--政治によるネット世論との付き合い方は
「自民党内には『ネットに負けたら大変だ』『味をしめる』という意見もあったが、違う。同じことは起きるかもしれないが、ネットには自浄作用もある。もっと信用し、有権者の声として真摯(しんし)に受け止めるべきだ」