ようやく衆院予算委員会の場で、とりあげられた。
新藤義孝前経済再生担当相は10日、埼玉県川口市で、トルコの少数民族クルド人による迷惑行為が相次いでいると指摘し、「日常生活のマナーに違反する程度ではない」「地域では本当に怒りが頂点に達している」と訴えた。
朝日もクルド質疑「黙殺」
小紙はむろん紙面でもネットの産経ニュースでも報じたが、11日付の朝日、毎日、読売、日経の4紙(東京版)を隅から隅まで読んでも新藤氏と政府側の質疑応答は、1行も出ていなかった。
鈴木馨祐法相が、「強制退去が確定した外国人は、すみやかに出ていっていただく。これは原則だ。迅速に送還を実施していくことを政府としても進めている」と踏み込んだ答弁をしているにもかかわらず。
唯一、東京新聞だけは、共同通信電をべた記事で掲載した。
記事は「迷惑行為の原因や責任を個人でなく、民族性に求めているとも受け取れる内容。交流サイト(SNS)などで問題化している在日クルド人差別を助長する可能性がある」と、質問した新藤氏を批判する内容になっているが、共同通信は記事にしているだけまだましである。
テレビも衆院予算委員会を生中継したNHKでさえ、当日や翌朝のニュースで1秒もとりあげなかった。民放は推して知るべし。
もちろん、新聞には紙面の容量、テレビには放送時間という制約があり、小紙も森羅万象すべてのニュースを報じることはできない。
報道各社には、それぞれに編集権があり、編集権の不可侵は言論の自由の根幹をなしている。
しかし、首都のすぐ近くでクルド人の迷惑行為によって地域住民との間で摩擦が起き、国会議員が衆院予算委員会でとりあげた事実をスルーするのは、記者の端くれとしてまったく理解できない。
埼玉県警は事件発表せず
国会論議だけではない。産経ニュースは6日、女子中学生に性的暴行して有罪判決を受けた在留クルド人の男が、執行猶予中に別の少女を暴行し、逮捕・起訴されていた事実をスクープした。
痴漢事件は積極的に広報する埼玉県警だが、この事案はなぜか隠蔽(いんぺい)し、発表しなかったため「スクープ」になった。
こうした事案を他メディアは、めったに報道しない。確かにクルド人問題には複雑な背景がある。民族差別なぞもってのほかだが、クルド人が起こした事件をとりあげると、何か厄介なことでもあるのだろうか。
報道各社で、ネット民が揶揄(やゆ)する「報道しない自由」が発動されたのだとしたら、由々しきことだ。
兵庫県知事選でも県民の多くが、「ネットの方が新聞やテレビよりも真実を知らせてくれる」と感じ、斎藤元彦氏を再選させた。
そうした風潮を「時の流れで仕方がない」と、オールドメディアは、黙って見ていていいのか。
世の中で今、何が起きているか、しっかりとした取材で「事実」をタブーなく読者や視聴者に伝えることこそ、われわれの仕事ではないか。
偉そうに書きすぎた。年を取ると、どうも説教臭くなっていけない。(コラムニスト)