(2025/1/31 05:00)
経団連は31日、労使フォーラムを開催し、2025年春季労使交渉(春闘)が本格的に始まる。賃上げの勢いを定着させ、物価上昇を超える賃上げの流れを形成できるか重大局面を迎える。価格転嫁の徹底により、中小企業の賃金を底上げするのはもとより、大手企業も基本給の水準を上げるベースアップ(ベア)を優先的に検討し、実質賃金のプラス定着を実現したい。
経団連が今春闘で、これまで以上に踏み込んでいる点を評価したい。25年春闘における経営側の指針「経営労働政策特別委員会(経労委)報告」の中で、会員企業に「ベアを念頭に置いた検討」を求めた。24年春闘では、ベアは「有効な選択肢」との表現にとどめていた。実質賃金をプラス転換させ、消費を喚起するには、物価上昇率を上回るベアの実現が欠かせない。
連合によると、24年春闘での平均賃上げ率は5・1%と33年ぶりに5%を超え、このうちベアは3・56%に達した。だが直近(24年11月)の消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)上昇率は3・4%に達し、24年春闘のベアを相殺しかねない。このベアを重視した経団連の交渉指針は適切だ。意欲的な回答が相次ぐと期待したい。
経団連が価格転嫁の推進に向け、発注業務の評価軸に言及したことも注目に値する。発注企業が自社の取引担当者を評価する際、「コスト抑制」を主軸としていることが、価格転嫁を妨げているとの見方は多い。経団連は、今春闘の交渉指針で初めて「(発注企業は)自社の利益の確保を前提に、評価軸を改めることも検討すべき」と盛り込んだ。発注企業は価格転嫁への理解と協力を深めてほしい。
雇用の7割を中小が担い、4割を非正規労働者で占める。大手企業との賃金格差を縮め、経済の好循環を早期に回したい。
気がかりなのは、政府機関の目が届かない中小企業同士の取引や、中小企業と消費者との取引で価格転嫁が進むかだ。この動きを広く浸透させるための特効薬はない。価格転嫁は社会的規範であるという価値観を、粘り強く社会全体に広げたい。
(2025/1/31 05:00)